攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ゲーセン屋さんを出て歩くこと、概ね20分くらい。徒歩の距離としてはそこそこかもだけど、これから始まる打ち上げ焼肉パーティーの前の腹拵えとしては適度と言える距離だろう。
17時前ともなればさすがに気温も相当低く、吐く息も白くなっているほどだ。この、底冷えする感じは雪まであり得るかもね……たしか予報では微妙な、基本降らないけど降るかもしれないくらいの塩梅だし。
それでも俺ちゃんの因果操作によって、梨沙さんはじめグループのみんなはそこまで寒そうにはしていない。さすがに違和感を覚えない程度に抑えているから、多少冬だなーくらいの感じではいるけどね。
焼肉で盛り上がるうちに、因果操作抜きにしたって暑くなるだろうさ。そんなことを考えながらも到着したよ、焼肉店だ。
「おいーっす、さすがにもうほとんどみんな勢揃いだな。ていうかさっきもショッピングモールに何人かいるの見たし」
「このへん、結構お店あるから行くとこいろいろあるからね。みんなゲーセンで鉢合わせ、なんてことがなかったほうがなんとなく不思議まであるかも」
「お、松田グループも来たかお疲れ~。これであと何人だ?」
「さやかちゃん先生含めて3人くらいかな。もうじき来るでしょ」
店の入口付近にはすでに、うちのクラスのみなさんが結構な人数集まっていて、松田くんが先頭切って挨拶すればそれに応じて俺達も合流できた。
やり取りから、担任のさやかちゃん先生含めあと数人が来てないみたいだけど、基本もうほぼフルメンバーみたいだね。
となると当然、関口くんや中野くんなどのリア充イケメン陽キャグループもいる。
クラスの女子に囲まれる彼らもまた、打ち上げ前の空気にテンション高めでいるみたいだよ。
「関口くーん、お疲れ様! 今日はいっぱい楽しもうね!」
「関口くん、クリスマスって予定空いてる? デートとかしない?」
「初詣一緒に行こうよ関口くん!」
「はは、ありがとうみんな。クリスマスも正月も基本昼間は用事あるけど、夜からなら大丈夫だし軽くみんなで食事するのは良いかもね。もちろん友人達や、場合によっては家族みんなでね」
「怖ぁ……」
なんてこったパンナコッタ、スイーツだけども肉食系。クラスの女子が何人か猛烈な勢いでアプローチというかお誘いの声をかけている。
しかしてそれらをやんわり受けつつ、自分の友人男子勢やなんなら御家族さんを巻き込む形でスキャンダルを回避する関口くんの姿に俺は感嘆の吐息を漏らした。
リスクヘッジの仕方が手慣れている。イケメンすぎるインフルエンサー探査者はさすが伊達じゃないなと、こればっかりは震えるやら感心するやら畏怖するやらだ。
なんなら話を振られた形になる中野くんはじめグループの陽キャ男子もうおおーっ! って盛り上がってるし、声をかけた女子勢なんかえっ違っそんなつもりじゃ……みたいな表情を一瞬浮かべつつもすぐさま切り替えて笑顔でうんうんうなずいている。
関口くんとサシが理想だけど無理そうならこれはこれで、みたいな判断の速さを感じさせるね。
「かーっ、関口ったら相変わらずモテやがってよー! これで探査業や配信のほうでも勝ちまくりモテまくりなんだろこのー! 札束風呂は気持ちいいかよオラァーッ!!」
「するかそんな罰当たりなこと! あのなあ中野……そりゃ俺自身、モテる側だってのは自覚あるけど。だからって向けられた好意にそんな失礼な振る舞いしないさ、ありがたい話だよ本当に」
「良い子ちゃんかよッ!! テメー俺が女だったら迷わずアタックしてたぜ!!」
「中野うっさいしキモい」
「あんたは委員長と夫婦漫才してろこの馬鹿! 唐変木の朴念仁ったら、あの子泣かせたら承知しないわよっ!!」
「そこまで言う!?」
いつもどおりなノリの中野くんが、でもいつも以上にテンション高く騒ぐけど即座に女子に切って捨てられちゃったよ。怖ぁ……
でも中野くんもいけないんだよ? だってほら、すぐそばにクラスの委員長がいて怒ったような照れたような、でもちょっと拗ねたような顔つきで中野くんを睨んでるし。
俺も、っていうかクラスの誰もが知ってるよ。中野くんは彼女と幼馴染で喧嘩しつつも、なんだかんだ仲良しさんでいつも夫婦みたいだって言われてるんだ。
いるもんなんだね、ケンカップル幼馴染って現実に。ラブコメ系フィクションのなかにしかいないと思ってたから初めて二人のやりとりを見た時は思わず呟いたよね、こんなんラブコメ主人公やんって。
普段はクラス一のお調子者ってキャラで、女子からアレコレツッコまれつつムードメーカーやってる彼だけどやはり関口くん同様、リア充陽キャグループの一員なんだ。
改めて今、委員長とイチャイチャしてる姿を見ると陰キャ的にはステージが違うぜ……ってなるよね。
しみじみ思ってると、その関口くんが不意にこちらに気づいて近づいてきたよ。体よくお誘いの声から逃げてきたな。
そのまま気さくな様子で俺に話しかけてくる。
「────おう、山形。それに松田や佐山さん達もお揃いで。相変わらずみんなで遊んでから来たのか?」
「あ、関口くん。そうなんだよ、近くのゲーセンで2時間くらいね」
「もー待ちに待ってた焼肉だよ! お腹空いたなあ、関口くんもお腹ペコペコでしょ?」
「え? あ、ああまあ、人並みには。あー、遠野さんには敵わないけど。ははは」
さすが天下のイケメンも、遠野さんの銀河級フードファイターっぷりにはタジタジみたいだ。
下手な探査者よりもよっぽど食うもんなこの人。こんな細い身体の一体どこに入るんだが、人体の神秘だよ。
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