攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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気前のいいイケメンインフルエンサー探査者!

 タンに始まりロース、カルビと次々焼いては食べていく。焼きやすく薄い肉から火が通るのに時間はかかるけど、その分肉厚で噛み応えのある肉まで軒並み胃に詰め込んでいくよ。

 もちろん野菜も忘れずにだ。梨沙さんと二人であれこれそれどれと焼いては皿によそい、白米とともに食べていくのはまさに至福の時間と言えるだろう。

 

「サンチュに包んで食べるのも美味しいよね」

「良いねえ。サンチュ追加で頼んじゃおう」

 

 個人的にも焼いた肉には白米のみならず、瑞々しいサンチュみたいなのも好物な俺ちゃんだ。梨沙さんの提案に一も二もなく追加でサンチュを頼み、すぐに持ち込まれるそれに肉を巻いて包んで食べる。

 水分を多く含みつつ、けれどシャッキリした歯応えのサンチュと肉の厚み、肉汁、旨味が重なり、程よい塩梅で口のなか全体に美味しさを全力で伝えてくるよ。

 

 美味しいなあ。ただそればかりが感想として思い浮かぶ素晴らしい焼肉だ。

 松田くんや木下さん、遠野さんや片岡くんも楽しげに注文しては焼いて、焼いては食べてを繰り返している。もちろん、それは他のテーブルのクラスメイト達も同様だね。

 特にリア充陽キャグループ代表、関口くんなんてのはある意味すごいよ。ふと気になって見てみる。

 

「関口くん、はいあーん!」

「ははは……俺のことはいいから君も食べなよ。せっかくのご馳走なんだから、食べなきゃ損だよ?」

「謙虚な関口くんも素敵! ていうか今回もここのお支払い、結構負担してくれてるんでしょ? マジで関口くん様々なんだけどぉ!」

「いよっ、お大尽! さっすが探査者だけどよ、でもさすがに夏に続いて冬まで自腹はちょっと半端なくねえ? 良いん? 久志くんよう」

「良いんだ、気にするな。文化祭の時、みんなには本当に世話になったしな。せめてもの御礼だよ」

 

 怖ぁ……女性陣から猛烈なアタックを受けつつもさわやかに流している。

 それで許されるところまで含めてさすがのイケメンちからだけれど、中野くんとのやり取りもかなりの男前ぶりだ。

 

 そう、今回も前回の打ち上げに引き続いて関口くんがそこそこ予算を出している。別にいいのにってみんなが言ったんだけど、当の本人が文化祭の演劇でのことを相当恩義に感じているらしく、ぜひ奢らせてくれと言って聞かなかったのだ。

 にしたって俺の分まで払う必要ないというか、さすがにそこは要らないよと言ったんだけどね。他ならぬ俺にこそ普段からたくさん世話と迷惑をかけてしまっているからと、半ば押し切られてしまったのだ。

 

 これにより関口くんはみごと気前のいいイケメンの称号を得た形になる。クラスメイトも思ってたより支出が少なく済んでこの年末は大助かりだろうから、お互いWin-Winってなもんだろう。

 翻って俺ちゃんが探査者として儲けてるくせにケチだなこいつ! 的な目で見られやしないかとちょっぴりソワソワしたものの……今のところはそうした声は聞こえてこない。

 

 それはそれで不思議なんだけどね。

 内心首を傾げる俺に、梨沙さんが尋ねてきた。

 

「公平くん? 関口くんのほう見てどうかした?」

「ん……いやあ、あっちはともかく俺もちょっぴりくらい、お金出したほうが良かったのかなーなんて。いや、別に義務感とかではないんだけども」

「え。いや、別に良いでしょ。あっちも自分から半分強引に言い出してるんだし。探査者の人からお金せびるなんて無しっしょ」

「変なこと気にするよなー山形。なんでクラスメイトがみんなの分まで奢るんだっつーの。関口のはあれ、ほとんど趣味みたいなもんだろ」

「そ、そうかな? そうかも?」

 

 別に無理に財布の紐を緩めるつもりはないものの、とつぶやく俺に梨沙さんばかりか松田くんまで不思議な顔をして言ってくれた。

 なんならしれっと関口くんが散財趣味の人みたいになっちゃってるくらいだ。いや頻繁にパーティー開いてるそうだし、金銭感覚は間違いなくセレブのそれだろうけれどもね。

 

 まあ、みんなが気にしなさそうなら俺も気にしないでいいかな。引き続きハラミとかタレにつけて頬張りながらそんなことを思う。

 ──と、視線に気付いてか話題の関口くんが席を立ってやって来た。手にはジュースの入ったグラスを持って、俺の隣に座ってくる。

 聞かれてたかー!

 

「別に俺だって浪費を趣味にした覚えはないよ、みんな。お疲れさん、山形、佐山さんに松田。木下さんも」

「あ、あはは。じょ、ジョークジョーク。お疲れさまです関口くん」

「おう。まあ、夏もだけどいろいろと、クラスのみんなには世話になったりしたからな……特に演劇は本当に、俺をメインにしてもらったわけで申しわけないやら光栄やらだよ」

「まあ、今をときめくイケメンインフルエンサー探査者がクラスにいたら当然、そいつが中心になる企画になるしなあ」

「直球だな、松田。正直嬉しいけど、反面気まずさもあったんだぞこっちは」

 

 軽く労いの言葉とともに、松田くんには苦笑いで返す関口くん。

 やっぱり秋の文化祭の時、演劇で主役を張って大活躍した際のことを気にしてるみたいだ。関口くんありきの舞台だったし、みんなを差し置いて前に出過ぎたって感覚があるのかもしれない。

 

 でも、松田くんの言うようにイケメンインフルエンサー探査者な彼がクラスにいる以上、どうやったって中心にしない話はないだろうしなあ。

 何より満場一致で"勇者関口物語"が支持された時点で、関口くんはそんな気にせず胸を張って堂々としてくれれば良いんだよ。




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