攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「あんなふうに、俺をそのまま主役に立てたような演劇を作ってもらっちゃって……大体藤堂大監督が一人で突っ走った感はあるけど、俺としては付き合ってくれたみんなに感謝しかないんだ、本当に」
「まあ、突っ走ってたよね大監督……」
「なんなら今も突き抜けてったきり、戻ってこねえんだよな藤堂大監督……」
文化祭での演劇"勇者関口物語"のことで、クラスのみんなに並々ならぬ感謝を抱いているらしい関口くん。
それゆえに今回の焼肉において、みんなの金銭的負担が軽くなるように少なくない資金提供を行ってくれたと言うんだけれど……前提としてあるのはまず、藤堂大監督の暴走だというのはみんな見解を一致させているみたいだった。
何はともあれあの演劇において、それまでは単なる一クラスの女子だった藤堂さんがよもやの大監督へクラスチェンジしたのだ。
監督就任のみならず脚本、演出、果ては魔王ゼータ・サーマ役まで一人でこなす辣腕ぶり。その身に纏うあまりの熱意熱量に、最初は困惑していたクラスメイト達みんなが自然と引っ張られていったあたりカリスマすら帯びていたように思うよ。
そんな弾けちまった大監督は、文化祭以後もすっかり弾け飛んだままはるか天空から戻ってきていない。
独特な空気感と熱量からくる謎の勢いでもって、クラスのなかでも特殊な立ち位置に君臨しているのだ。いわゆるオンリーワンだね。
今もほら、さやかちゃん先生相手になんか熱弁してるし。
「──だから分かりますよねさやかちゃん先生! イケメンってのは苦しんでなんぼ傷ついてなんぼっ! 葛藤と苦悩に彩られた陰影こそが彼らを耽美に輝かせるんですたい!!」
「藤堂さんは文化祭から本当ーっに! すっごく元気で明るい子になりましたね〜! 先生うれしーです、ぐびぐびぷはーっ! ビールおかわりー!! あとお肉もー!」
「でも最近はちょっと癖にも拡張性が出てきましてっ! 童顔ショタみのある少年が時折見せる大人めいた余裕の相貌にもアッアッ脳がクチュられる的なッ!! なんならちょっと上から迫ってきてほしい! でも私にだけ甘えてもほしいかな的なイマジネーションが湧いて止まらんですたい! あーこれ創作意欲がバリバリ湧いてくるぅーッ!! はあはあお肉食べて落ち着かなきゃ」
「大監督もしかして呑んでる? 酔っ払いより酔っ払ってない? ……まあいっか肉追加でジャンジャンバリバリー!」
「いよっ、伊藤くん太っ腹ぁ〜! 先生もそろそろ焼酎いっちゃいますね〜!」
「怖ぁ……」
ダメだよあの席、カオスが過ぎるよ。何かこう、すさまじい情念の籠もったこだわりを高らかに叫ぶ大監督に、まったく意にも介せず肉食って酒を飲みまくってるさやかちゃん先生のマイペースさがなぜだか噛み合っている。
そこにノリは軽いがツッコミはちゃんと入れる伊藤くんが、陽気にお肉を頼むもんだからもうわけがわからないハイテンションさだ。
あの光景はシンプルに怖い。関口くんも苦笑いしてるし。
でも、そんな弾けまくりの大監督こそが文化祭での1年13組における功労者なのは間違いないんだ。
その後のぶっ飛び具合まで含めて、概ね好意的に見られているのは間違いなかった。
「大監督は、まあ……あんな感じで自分の創りたいものを創っただけなんだけどさ。あの演劇のなかで俺は、俺なりに答えを見つけられたから」
「答え?」
「ああ、答え。探査者としての──人間としての。ここにいるこの、普段はフニャッとしてるけどいざという時には誰より優しくて強い救世主様のように、当たり前のように手を差し伸べられる探査者になりたいってさ。あの時、ようやく靄がかっていた道が拓けて見えたんだ」
「関口くん……」
気さくに語るも、その内容に込められた想いは強い。紆余曲折を経て、時には歪みさえしながらもそれでも悩み続けた彼の、内面の輝きが発露したかのような優しい微笑み。
あの時、演劇でのクライマックスの時に語った言葉こそが彼の見出した真の理想なんだろう。
どんなに苦しくても、辛くても、今目の前で苦しむ人がいるならば。
力及ばずとも、勝ち目なくともモンスターへと立ち向かう──それこそが関口くんが新たに掲げた、探査者としての理想なんだ。
どうも俺を見て、そんなふうに思ってもらっちゃったっぽいのがなんとも照れるやら光栄やら誇らしいやらなんだけれども。
そんな素敵で、尊敬すべき理想を掲げる彼の心根こそが俺は立派だと思うよ。本当、春先から考えると本当にね。
「……だから。そんなふうに道を見定める機会をくれたこともあって、みんなに恩返ししたかったんだ。だから気にしなくて良いんだ、本当に。それにこう言うのもなんだけど、プライベートでパーティーを開いているのに比べると支出は微々たるものだしな」
「良いこと言った最後の最後にセレブ発言! かーっ、やっぱ関口はモノがちげえや! ごっつぁんです!!」
「でもカッコいいわやっぱ。前からイケメンだったけど、今は中身までって感じ。松田も見習いなよ、アンタも顔は良いんだからあとは中身よ中身」
「うるせーオメーもだよ! 見てくれは良いんだから中身だ中身ぃ!」
松田くんと木下くんの、いつもながらのイチャつき漫才をみんなで笑って見守る。もちろん関口くんもだ。なんの衒いもなく、さわやかに笑い合う俺達。
改めて、素敵な友人達ができたなって思う。関口くんもその一人に挙げられることを、心の底からありがたいことだと思いながら……俺は微笑み、肉を頬張った。
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