攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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シーズンオフでも伝道は欠かさない伝道師の鑑

『本当に、この世界の科学技術には脱帽だ……あらかじめ用意しておいた焼きおにぎりを、自動で温めるだけでこんなにおいしく仕上げるとはね。香ばしい醤油の味と風味、香りが一口噛めば濃厚に広がっていく感覚は、昨日の焼肉の暴力的なまでの味わいともまた異なる方向性だ。醤油は多少塩辛い感じだけれど、白米の甘みとよくマッチングしている。天才的な組み合わせだね、というか醤油にも味噌にも合うとか白米の素晴らしさが留まることを知らないんだが?』

 

 

 怖ぁ……脳内で食欲馬鹿がなんか語ってる。

 ちょっと心惹かれるものを感じて自販機で買った、焼きおにぎりをさっそく実食ということで一口齧り付いた瞬間のご感想がこちらだ。

 

 まあ、納得はする。たしかにおいしいし醤油と白米の組み合わせは最高だし、しかもそれらに火を通していることによる香ばしい風味が熱いほどの温度とともにガツンと口内に衝撃を加える様は本当に天才的だもの。

 なんならこれ見て、リーベとシャーリヒッタまで追加で買ってきたほどだよ。みんなよく食べるなあ、俺の言えたことじゃないけど。

 

「あははー、あんまりおいしそうなのでついつい買っちゃいましたー。お揃い、お揃い!」

「地味に焼きおにぎりなんて初めて食うんだぜ! でもあそこの自販機はどれもサイコーにうまいから、きっとこれもおいしいんだぜ」

「ん……シャーリヒッタはよく使うのか? あの自販機。俺は割と今回が初めてだけど」

「ミュトスがドハマりしてるんですよ公平サン。あいつああいうレトロな感じの食が酒に合う! とかってたまーに、わざわざここで買い込んで家で酒付きで飲み食いしてるらしいです」

「えぇ……?」

 

 何してんすかミュトスさん。シャーリヒッタから知らされたまさかの生活ぶりに思わず慄く。

 たしかにまあ、あの手の自販機ったらレトロの印象はあるけども。だからってそれに凝ってわざわざここで買い込んで、家に持って帰って酒のアテにするもんなんだろうか?

 酒飲みの考えはなかなか分からない。

 

 おいしいのはたしかなんだけどね、と焼きおにぎりをほおばりながら、時折ブラックコーヒーなんかを飲む。

 やっぱりお茶のが合うような気はするな……でもこれはこれで悪くないからいいや。というかそれで言うとアップルジュースのリーベやカフェオレのシャーリヒッタのほうがよほど合わない気もするしね。

 

「はふう。あーおいしかったぁ。探査前のエネルギー充填完了ってところだな、ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでしたー。って言っても、今日はそんなにモンスター相手にしゃかりき動くことってたぶんないんですけどねー」

「ごちそうさまでした! んーまあ、そんでもダンジョンうろついてりゃそのうちまた腹も減るだろうぜ」

 

 三人揃って食べ終えて、手を合わせてごちそうさまでしたをする。残った紙パックは燃えるゴミにシュートだ、まとめてゴミ箱に持っていくよ。

 そうして腹も満たし喉も潤して、引き続きおかし三人娘を待つ。ガムちゃんからのメッセージだと概ね一時間くらいしたら来るだろうし、あとちょっとの間だね。

 

 談話室の他の探査者達も、入れ代わり立ち代わりしつつしばしの憩いをこの部屋で過ごしている。雑談する者達に探査関係の話をする人達、さらには軽くカードゲームなんかしてる方々もいる。

 平和な光景だ。探査者達はその職業の性質上、どうしても内輪で集まりがちなところはあるんだけれど……こうした談話室は、それぞれのコミュニティにとってありがたい集会所でもあるんだろうね。

 

「そう言えばですけどー。こないだばったり、ここのフロントで偶然ミッチーと出くわしたんですー」

「香苗さんとか?」

「はいー。それで軽く雑談してたんですけどー、彼女寒いの苦手なんですねー。基本的に冬はオフシーズンとかって言ってましたよー」

「あー。前に聞いたな、それ。あの人って実は冬が苦手なんだよな」

 

 ふと香苗さんの話が出てきて、俺は以前夏頃に彼女から直接聞いた話を思い出す。

 というのもあの人、意外なんだかそうでもないのか冬の寒さが苦手らしいんだよね。だもんで、ちょうど今くらいから春頃まではそもそも外出を控えがちなんだそうだ。

 

 いわゆるシーズンオフっていうべきかな。この手の、季節によって活動量の大小を分ける探査者は別に珍しいことでもないのでそこまで気にする話ではないんだけれどね。

 ちなみに香苗さんの場合、毎年この季節からはひたすら家で温かくして、漫画やゲームなどに耽っているそうだよ。

 

「まあ、例の伝道活動は特に控えたりはしないんだろうな……」

「むしろこんな時期だからこそ力を入れるーとかなんとか言ってましたよー? 探査者としてはオフでも伝道師としては年中無休オールウェイズオンですってー。さすが、さすが!」

「香苗の公平サンへの信仰心は、冬の寒さにも決して負けないんだぜ! むしろ冬でも夏にしちまう勢いなんだぜ!!」

「季節感は大事にしてほしいかなあ……」

 

 今年からはたぶん、例のチャンネルの運営とかネットde伝道とかで冬は冬で別の意味で繁忙期なんだろうなーと、遠い目をしているとリーベからもうなずかれてしまった。

 苦手な季節なんだったら無理しなくて良いんだよと言いたい所存である。いや言ったら言ったで句読点さんが自由の女神でも拝みに行くんだろうなって分かっているけどもさ!




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