攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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もしかしなくても:ファーーー!!(自意識過剰で)甘い甘い!!

 話し合いの前にまずは何より聞いておきたいという、おかし三人娘からの質問。"システム側は自分達に何かを期待しているのか"。

 すべてを知った以上、気になって当然の部分だ。上位存在が正体を隠して影に日向にサポートしてたわけだもんな、そりゃ自分達に何かあるのかと勘ぐっても当たり前だろう。

 

 もっと言うと、もしかしたら自分達が何かしら大きな騒動に巻き込まれやしないかという、危惧や不安も少なからずあるかもしれない。

 パーティとして、探査者として、人間としてそれは抱いて当然の危機意識だ。内心にてチョコさんやガムちゃんを讃えつつ、俺は歩きながら声だけで、後ろの彼女らに応えた。

 

「ふむ……ちなみに、どうしてその質問を最初に? 他にもアレコレ聞きたいことはあったでしょうに」

「もし、私達に何か特別なことがあってのこれまでのアドバイスや助力があったんだとしたら。その、それを知らないままなのは嫌なんです。私は猪突猛進なイノシシだけど、どこに向かって突き抜けるかは自分で考えて自分で決めます。だから、そうするために本当のことを知りたいなって……思い、ました」

「なるほど。ちなみにガムちゃんは?」

「特別扱いされるんだったら面と向かってされたいですし。褒めよ讃えよ我こそは覇王忍者なり! ってね」

「なるほどー」

 

 茶化してるのか本気なのか分かりづらい言葉のガムちゃんだけど、声色はそれ相応に本気で、やはり彼女もそのあたりが気になっているのが分かる。

 自分の考え、自分の決断で自分なりに進みたい……チョコさんの訴えはあまりにも当然、かつ真っ当なものだろう。

 

 であれば、俺としても答えを濁すことなく正直に真正面から答える外ない。

 ちょうど横断歩道の前、赤信号で立ち止まる。これを機として彼女らに向き直る俺は、ストレートに一言で彼女らの疑問に対しての真相を告げた。

 

「結論から言いますね。特に何も……"私達"はみなさんに、何かしらの特別性を見出したとか特殊なプランに巻き込むつもりでこれまでいろんなことをしてきたわけではありません」

「えっ」

「と言いますかですね、あの、冷静に考えてみてください。俺がみなさんと初めてお会いしたのも偶然なら、そこから今に至るまであれこれアドバイス的なことをさせてもらったのも大体、こちらからアクションを起こしたわけでなくみなさんからのご要望があってのことだったじゃないですか」

「う……そ、そー言えばそーだった。そもそも関口さんありきで私らにいろいろしてくれてただけだった、パイセン!」

 

 うん、まあそういうことです。別にこちらから積極的に何かしたわけじゃないんだよね、実のところ。

 そもそもの出会いからしてたまたま友人の関口くんが面倒見ている新人三人とバッタリって流れだし、そこから彼の願いを受けて多少手助けをしただけにすぎない。

 これで何をどうアクティブに干渉したと言えるのか。はっきり言ってこちとら成り行き任せだぞ大体のことが。

 

 つまりすべて偶然の産物。少なくとも始まりは間違いなくそんなものでしかなかった。

 当然彼女らの才能だとか特別性だとかなんて見抜けたはずもなく、というかそれ以前の話だったんだけれど……昨日の話を受けてすっかり忘れちゃってるみたいだな、ご本人達。

 コホン、と咳払いを一つして、続ける。

 

「みなさんの秘めた才覚や可能性は、今ならしっかりと認めますけど。さすがに出会い頭に即座に見抜けるようなものではなかったですよ。だって正直最初のおかし三人娘……アレだったじゃないですか」

「アレ!? いや言いたいことは分かりますし今ハッキリと納得できちゃいましたけども、アレ!?」

「突撃しかしないチョコちゃんに、指示がなければ何もできない私……それからちょっぴりお口の悪いガムちゃん……」

「絶妙に言い返しづらい事実を突きつけてきましたね……たしかにアレがアレだった以上、そりゃ特別だとかなんてそれ以前の話ですか」

「まあ、ええとそういうことです。みなさんにいろいろ教えたりしたのは、結局その場の流れとみなさん自身が求め訴えたからですよ」

 

 信号が変わったので歩き出す。本人達に面と向かって言うのもなんだけど、最初期のおかし三人娘の惨状を見て何かしらの計画だか策謀だかに据えようだとか、そのために力を授けてあげようだとかなんて考えるはずもない。

 当時から、人間としては決して嫌いじゃない人達だったけどそれとこれとは話が別だ。システム・コマンドプロンプトとしての視座から見るに、おかし三人娘のオペレータとしての姿勢に当初、見るべきところなどありはしなかった。

 精々新潟花夢からそれなりに伸びる気配がしたくらいか。

 

 だから、チョコさんやガムちゃんが思ってるような不安や期待はぶっちゃけ的外れではあるのだ。良いのか悪いのか知らんけどね。

 ただ……特別性の有無については、もう少し言っておきたいことはある。そろそろダンジョンのある公園が見えてきたなかで、歩を進めつつ俺はさらに言葉を重ねた。

 

「ああいう出会いと成り行きからでも、みなさんはたしかに俺を頼りにして知識とか技術を求めた。だから俺はそれに応えた。スキルについての知識もそうですし、始原概念の紹介だってそうです。そしてそれは、あなた方が働きかけたゆえの、あなた方だけの努力の成果です」

「私達だけの……努力の、成果」

「強くなりたい、一人前になりたい。その思いで偶然にでも成り行きにでもみなさんは俺に──私に辿り着いた。それは特別性を担保するものではないが、しかし奇跡的なこととは言える」

「っ……!? パ、パイセン!?」

 

 ダンジョンの入り口の前で立ち止まり、彼女らへと向き直る。人間・山形公平としてではないモノ……因果律管理機構システム・コマンドプロンプトとしての私を表出させて。

 息を呑む三人。無理もなかろうがな、ここからはインターフェイサー総責任者としての立場だ。

 

「奇跡を起こしたならば、起こしたなりに応えよう。それがこの私、システム・コマンドプロンプトの理でもあるがゆえにな」

 

 今しばらくはこの私に付き合ってもらおう。

 それが世界の真実を知ったこの者達に対する、私なりの敬意であるのだから。




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