攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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覇王忍者にもブランディングとかあるのか(困惑)

 システム・コマンドプロンプトとしての己を表出させながらダンジョンへと入る。続けてリーベ、シャーリヒッタと続きそれからおかし三人娘もついてくるのだが、やはり三人は驚き戸惑っているようだ。

 無理もない。普段の山形公平は決してこのような口調でも表情でもないからな。

 

「や、山形さんの雰囲気が変わっちゃった!? こ、これってアメさん!?」

「わ、わわ私も初めて見るわこんな先生のお姿」

「コマンドプロンプト……話に聞いてるパイセンの正体ってやつ、ですかね? でも、だからって本当に別人みたいになるものなんですか? 無理してたりしません? この覇王忍者ガムちゃん様も駆け出し覇王忍者の頃はキャラ作りするの大変でしたけど」

「ガムの覇王忍者へのこだわりがすげェんだぜェ」

 

 口々に困惑を表すおかし三人娘の、反応さえ演算済みだ。とはいえ覇王忍者のキャラ作りなど知る由もないが。

 当然、生来のものではないだろうと踏んではいたが変わった努力の仕方をするものだ、新潟花夢。その能力の高さゆえ、奇抜な道をも開いていけるのはみごとと言えよう。

 

 一部屋目に辿り着く直前、足を止める。

 モンスターの相手をしつつ道中に話し合う形をとるわけだが、ひとまずは今の私のこの態度について補足説明がいるだろう。

 改めての自己紹介のつもりでな……彼女らへと向き直る。

 

「この状態は先ほどまでの俺の人格と完全に地続きだ。ソフィア・チェーホワと精霊知能ヴァールのような話でなく、単純に一つの人格における濃淡の度合いの違いでしかない」

「の、濃淡?」

「今の私の人格は全体のおよそ三割がシステム・コマンドプロンプト。すなわち本来の因果律管理機構に芽生えた自我であり、残る七割が普段お前達に接している人間・山形公平の人格となる。そのあたり、昨日の話し合いで説明しているはずだな? 精霊知能達」

「はい、コマンドプロンプト。あなたの正体からここに至るまでの世界の成り行き、この500年間にシステム領域で起きたこと──」

「加えてアドミニストレータ計画とオペレータ計画の企画立案と遂行、その顛末に至るまですべて伝えています」

 

 ことここに至らば、リーベとシャーリヒッタも普段の振る舞いでない精霊知能としての言動を見せる。そこまでやればさすがに徳島千代子も鹿児島天乃も新潟花夢も、これが冗句や伊達酔狂の類ではないと理解したようだ。

 どこか、圧倒されたように震える彼女ら。別段、萎縮させる気もなかったがしかし人間としての俺のままではどこか、緊張感に乏しかったのも事実だ。

 

 インターフェイサー。精霊知能による現世介入組織にまつわる話を、そういつもの和やかな空気だけで済ませるのはさすがにまずかろう。そう判断してあえてコマンドプロンプトの部分を見せたのだ。

 加えておそらくは未だ半信半疑だったろう、世界の真実についての話が本当のものであると否応なく示す効果もあった。現世の感覚では与太話にしか捉えられないだろうからな。

 

「リーベちゃんにシャーリヒッタさんまで……じゃ、じゃあこれが、あなたが本当のパイセンってこと、いや違うかな。いつものパイセンも七割が本当なんだ。残りの三割、今のあなたみたいなのがいるってことですね」

「いい理解の早さだ、新潟花夢。言ってしまえば誰でも持ち得る多面性の切り替えに過ぎんと考えるがいい。私に限らずあらゆる人格とは単一色のものでない、さまざまな色合いのグラデーションで彩られているものなのだ」

「な……なるほど? えーっとつまり、覇王忍者なガムちゃんと素の女子中学生ガムちゃんの違いみたいなことですね! 理解しました!」

「学生モードのガムちゃん、意外と大人しくて静かだものね〜」

「能ある覇王忍者は爪を隠すものなんですよ!! パイセンプロンプトいいからもうさっさと話進めましょう! この話題ヤバい、覇王忍者のブランディング的にマズイですから!」

 

 当惑しつつもなお、普段の調子で軽妙なやりとりを繰り広げるおかし三人娘にわずか微笑む。そうだ、それでこそだ。

 先ほど、徳島千代子などは自らに宿る特別性の有無を気にかけていたが。私からすれば、それよりも三人揃えば常にこの調子でいられる関係性こそが評価に値する部分だ。

 

 無論、彼女らが秘めたる可能性や才覚とて目を向けんわけにもいかんがな、と。そろそろいいか。

 ここまでやればさすがのおかし三人娘も、山形公平がどういった存在であるのかを言葉だけでなく実感として理解しただろう。当然そうなれば、昨日受けた世界の真実についての話も信憑性を伴うものとして受け止める。

 

 であればもういいだろう────はふうー。肩凝るー。

 一気に人格のグラデーションを"私"から"俺"へと戻す。無表情に近い冷淡な表情を、いつものふにゃふにゃ山形くんのものにしていくよ。

 

「────ふう。というわけでそういうことです、どーもコマンドプロンプトこと山形公平でございます、と」

「あ、戻った!」

「緊張したわ〜……あれがこの世の造物主としての先生ってこと、なのね〜……」

「さっきの三割から、すぐにいつもの七割へ。びっくりするくらいの早業っすねパイセン、初見の人なら大体ビビらせられるんじゃないっすかパイセン? 圧すごかったですし」

「うん? まあね、さすがにギャップもあるだろうし……あのモード、どうしたとて偉ぶった感じが出るからなあ。俺としちゃ、めったなことで見せたくはない姿だよ」

 

 緊張から弛緩へ。私の存在により引き締まっていた空気が一気に緩んだことで、おかし三人娘はあからさまに安堵の吐息を漏らした。

 ガムちゃんさえ、さっきはちょっと強張ってたものな。それでもなお覇王忍者のブランディングとか気にしてたのが逆にすごいよ。

 

 ともあれ、これで前提としての俺の正体は受け止めてくれただろう。

 ここからようやく、本題に入れるな。




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