攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
システム領域が、インターフェイサーを通しておかし三人娘に協力を頼みたい部分。身も蓋もないことを言えば資金提供なんだが、これは同時におかし三人娘への投資という側面も持つ。
先ほど、俺はたしかに彼女らに当初から特別性など見出していなかったと言ったものの……当然ながら今は別の話だからだ。
彼女らには十分、目を見張るべき部分がある。
完全に成り行き任せ、偶然からの経緯での発見。それだけに俺としては余計に縁を感じるというか、シンプルに応援したい部分もある。
そこもあり、あえて取引関係を結ぶことでこちらにメリットを生じさせつつも彼女らへの支援も行える形にしてシャーリヒッタの提案を呑んだところはあった。
「他にもこちら側で人手不足の場合、ダンジョンにまつわる調査活動なんかにも危険性がない状況に限ってはご協力をお願いする可能性はあり得ますが……それらも鑑みて、こちらから提示するみなさんへの報酬は弾むことをお約束しますよ」
「! そう、そこですよ造物主パイセン! 報酬、私らへのメリット、得るもの! なんかすごいスキルの取得条件とかなんでしょ、厨二病パイセン!!」
「造物主も厨二病もやめてね意外と素は大人しいらしい覇王忍者さん!?」
なんら物怖じせず、即座に俺の正体とか振る舞いとか弄ってくるやん。
まあそっちのが気安くていいけど覇王忍者さん、厨二病にかけてはあなたのほうが深刻だと思うんですよ?
資金提供と、時と場合によってはインターフェイサーの調査員としてダンジョンに潜っていただく──当然、危険など皆無であることを前提としてだ──おかし三人娘なんだけど、そこに対して今度はこちらから提示する報酬について切り出した途端に反応するガムちゃん。
よほど気になっていたんだろう。見れば彼女ほど前のめりでなくともチョコさんやアメさんも目を爛々と輝かせてこちらを見つめてきている。
探査者、それもデビューしたてでどこまでも上を目指していく気概に溢れた者達からすれば、スキルやステータスそのものの製造元であるシステム側からの報酬となると相当期待を寄せるのは当然か。
こちらとしても、協力してくれるという者達に対して対価を惜しむつもりはない。ましておかし三人娘を応援したい個人的感情だってあるのだし、そのへん手を抜く気はないよ。
「コホン。今言ったとおり、そのあたりだね……我々システム側からみなさんに提示できる報酬は、探査者というかステータスにまつわる詳細な情報の数々です」
「具体的に言うなら現世に出回ってないようなスキルの獲得条件とかー。あるいはダンジョンの仕様についてですとかー」
「称号の獲得条件や、ちょっとこれは必要か分からねェけどシステム周りの裏話なんかも提供できるぜェ。あ、さすがにそれを他者に流布するのは禁止にさせてもらうぜェ。下手すると痛くもねェ腹を探られかねねェからなァ」
「と、とんでもない情報ばっかりじゃないですか! ……ひ、広めようにも広められるわけないですよ、こんなすごいこと」
チョコさんがドン引き気味につぶやくとおり、まさに大盤振る舞いのラインナップだろう。
要はステータスやダンジョン周りの隠し情報を、問題にならない範囲でだけど教えちゃいますよという話なのだ。そしてこれは間違いなく、探査者としての三人に非常に大きな利益をもたらす。
たとえばレアスキルの獲得条件とかね、モノによってはそれ単体で超強力なものもあったりするし。
取得自体はそれこそおかし三人娘それぞれの努力と魂の容量次第だけど、手に入れられたらそれ一つでやっていけるようなものだって少なくない。
つまり三人は今、探査者として本来あり得ないほどの好機を得ているのだ。偶然でも成り行きにでも俺と交流し、システム側の目に止まったという奇跡が手繰り寄せたチャンスと言える。
それを正しく認識しているのは、三人娘のなかではやはりガムちゃんのみらしい。ゴクリと生唾を呑んで、今度こそ戦慄に顔を引きつらせつつも彼女は俺に問いかけてきた。
「は、破格すぎますね、さすがに。今さら疑ったり裏を考えたりはしませんけど、そこまでの価値が果たしてあるんですかね、私らに」
「覇王忍者がずいぶん弱気だね? あるよ、間違いなく。才覚や才能、秘めた可能性もだけど何よりこれまでのつきあいのなかで見てきた、君達の性格や在り方を俺は信じている。君達おかし三人娘ならば、これから得るかもしれない力や知識に呑まれることなく正しく使いこなせるってね」
「パイセン……」
「──これも因果だ。偶然関口久志を介して君達が俺と知り合った、それを起点にして今この過程がある。遠い、どこまでも遠い結果に至るためにな。忘れるな、たとえ結果が決まりきっていたとしても過程は変えられる。それこそが因果の本質だ」
不安も顕なガムちゃんへと微笑みかける。因果律管理機構としての、これは言祝ぎだ。
何度でも言うが、すべての起点は偶然から始まった。あの日、あの時あの場所で関口くんが引き連れてきたおかし三人娘と出会わなければ、その後の俺達とのアレコレはまったくなかった。当然、今のこの状況も。
それをここまで至らしめたのは、他ならぬおかし三人娘達がたしかに自身の行動のすべてによって手繰り寄せた縁によるものな外ならない。
そして、今いるこの地点さえもまだまだ因果の果てには程遠い、道半ばなのだ……だからこそ、私は彼女らに言葉を送るのだ。
「己の手で縁を紡ぎ至ってみせたのがこの地点ならば、胸を張って前を見ろ。新潟花夢、鹿児島天乃、徳島千代子」
「っ!」
「望む結果に至るために、思うがままに在るが良い。それをもって何を成すかは君達次第だが、そのためのきっかけならば我々が用意しよう。これもまた、因果の導きである」
「…………ありがとう、ございます」
なーんてね。最後に俺ちゃんらしくニッコリ笑っておどけてみせる。
コマンドプロンプトとして、山形公平として。両方からのたしかなエールを受けて、おかし三人娘は静かに、けれど決意を込めた眼差しでしっかりとうなずいてくれた。
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