攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
当たり前だけどF級ダンジョンに出てくる程度のモンスターだ、シャーリヒッタやリーベにかかれば瞬殺もいいところだったりして。
特に問題なく初手のエレメンタルスライサーとハートヒットをもって軒並み、部屋内のモンスターを叩きのめした彼女らを讃えつつも俺達は探査を進めていっていた。
「え、次はパイセンが行くんですか?」
「まあせっかくだし。あと、なんだかんだ素性を明かしたわけなので一回くらいはいいとこ見せておこうかなと」
「一回も何も、これまでにも何度か山形さんの戦うところは見てるんですけど……正直ずーっと桁違いだなって感じしか覚えてないんですけど……」
じゃあ次の部屋の次のモンスターは、流れから言ってインターフェイサー総責任者の俺ちゃんだろうということで軽くストレッチする。
精霊知能達にばかり戦わせるのもアレだし、おかし三人娘にお任せするばかりなのも悪いし。コマンドプロンプトとしての正体を知られた今、一度くらいはソレらしいところをお見せしたい想いもあるからね。
なんだけどチョコさんがまさかのドン引きのリアクションを返してきている。これまでにご一緒した探査のなかでも戦う場面を見せてはいたので、それを思い返してさらに何を見せるつもりだコイツって思われているんだろう。
気持ちは分かるけど……シャーリヒッタやリーベについても含め、他のインターフェイサーのメンバーについても含め、早いとこシステム領域が現世とまた異なるスケールで動くモノだってのはご理解いただきたい。
だもんで俺は、苦笑いしつつもおかし三人娘へと語った。
「いやほら、その時は一応気を遣ってと言いますか、人間の技術や与えられたスキルを主に使っていたでしょう? 今からはデモンストレーション的にコマンドプロンプトとしての力を、それなりに発揮しての戦いを見てもらおうかなと」
「こ、コマンドプロンプトとしての……戦い方?」
「シャーリヒッタやリーベ、他の精霊知能とも今後付き合いを持つことになるみなさんは、早めにこういうのも見といてもらうほうが良いはずなんで。手前味噌ですけど、一応インターフェイサーでも一番やることの規模や強さはあるはずの俺ですから」
「いやいやパイセン……これまでもまあまあやりたい放題やってた気がするんですけど、あれでまだ人間の範疇のつもりだったんですか?」
「つもりだったんですけど……」
相変わらずバッサリなガムちゃんに顔を引きつらせる。いえあの、一応三人というか、事情を知らない現世存在の前では努めて常識の範囲内での戦いをしていたと思うんですが、そのう。
なんなら事情通の前でも、探査ってなるとそれなりに相手に合わせた動きや出力で立ち回ってるんですことよ。こう見えましてもそこは普段から意識的に自重しております。
そんなんでも、おかし三人娘の視点からすると十分めちゃくちゃだったみたいだ。彼女らがまだまだF級だってことも踏まえるに仕方ない部分はあるかな。
加えてそこに、シャーリヒッタとリーベが満面の笑みでいらんフォローまで入れてきたりもしているよ。
「ちなみにこうして謙遜なさってるけどよォ、おかし三人娘ェ。父様は普通にシステム領域でも最強無敵、従って必然的にこの世界において正真正銘最強無敵の父様なんだぜェ」
「最初の段階で天井を見といたほうが、インターフェイサーに慣れてもらうにはちょうどいいかもですねー。これから見る戦いで公平さんがやるかもしれないいろんなことよりー、すごいことができる人はこの世にいませんのでご承知おきをー」
「世界最強……!! せ、先生の全力、これはもはや使徒としてメモメモメモらなきゃ! メモメモメモり、メモメモメモり!」
「ハードルを上げてくれるなよお前ら……そして怖ぁ……」
盛大にヨイショしてくる二人に、おもむろに使徒モードに突入してメモ帳を取り出すアメさん。
思うにこの人、香苗さんと宥さんにも並ぶレベルで狂信者キメてるっぽいのが恐ろしい。ていうか毎度思うけどよくそんなメモることとかあるよね。俺の一挙手一投足すべて記録しかねない勢いなの逆にすごいよ。
さておき、次の部屋が見えてきたので先行して歩く。なかには三体、ゴブリンがいる。
まあはっきり言ってどれだけ加減したとて瞬殺なんだが、今回は先ほども言ったがシステム・コマンドプロンプトとしてのデモンストレーションでもある。であれば多少、やることを派手にすることを意識してみてもいいかもしれないな。
「ぐぎゃっ!? ぐぎゃーっぐぎゃーっ!!」
「げぎぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
「ぐぎゃぎゃぎゃーっ!!」
「さて……大盤振る舞いといこうか。《動くな》」
俺の存在に気づいたゴブリンが、敵意も顕に騒ぎ立てるのを即座に封じ込める。魂の圧による絶対命令、特に俺の威圧を受けてまともに動けるものはそうはいまい。
ピタリと動きが止まる姿はさながら銅像だ。ここからどうしたものかと思案しつつも無造作に彼らに近づき、軽く指をゴキゴキ鳴らす。
せっかくだからな、普段やらない試さないようなことでもしてみようか。
人間としてでなくシステムとして。現世存在どころか精霊知能にさえできないことを、断片的にでもお見せするか……!
「《システム・コマンドプロンプトの権能を持って因果を手繰る。この部屋において世界よ、止まれ》」
「────」
「────」
「────」
滅多にないことだが、因果操作における奥義というべき技を放つ。世界停止、極めて限定的な範囲内での行使だ。
このダンジョンのこの部屋ないでのみ、俺が作った極小の仮想領域を割り込み挟ませる。
部屋の外にいるおかし三人娘や精霊知能達にはまったく影響のないなかで、しかし俺はたしかに一つの世界を止めてみせたのだ。
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