攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「創造神様方相手にも一歩とて退かず、いえむしろ上位的な立場から交渉されるお師匠様……さすがでございます。このレギンレイヴ、心底から敬服いたしました」
「えぇ……?」
妖怪の扱いを巡っての、俺と創造神達による織田を介しての交渉。お互いに事情は分かるけどさぁ……的ななんとも言えない妥協感を滲ませつつの落とし所を決めた姿に、なぜだか織田に仕えるイヴさんが何やら感服してきなさった。
当然ながら彼女からすると、創造神なんてのはまさしく雲の上めいた超上位存在か。格で言っても最高神より上だものな。
そんな連中を相手にしての俺の言動は、ともすればさらに上位的に見られたみたいだ。まあ一応システム領域のコマンドプロンプトですしね、俺ちゃん。
にしても意外なまでに驚かれたもんだと、こちらこそ若干戸惑っていると織田も片目を瞑りふむ、と応じて言った。
「インターフェイサーに与したことで真実を知ったレギンレイヴであればと、この場に同席することを許しましたが……効果は覿面でしたね。あなたのコマンドプロンプトとしての格の高さを、私を通じた創造神との交渉を行う姿から肌感覚として掴んだようです」
「はい……インターフェイサーでの訓練は先日にも参加させていただきましたが、その時には戦闘面のお姿を学ばせていただきました。その際にもすでに格の違いを認識していたつもりでしたが、いざ主神オーディン様のみならず創造神様方ともそうして渡りをつけられているお姿を見ると……まだまだ、理解が及んでいなかったのだと痛感した次第です」
「そ、そうなんですね……え、ええと。まあ、こんな感じでして。創造神の方々はあの、基本的にシステム領域のことは目の上のたんこぶ的にうざったらしく思いつつも決して無下にできない、いや~な感じの連中だって捉えてそうな気配です、はい」
実感としてイヴさんが知覚し得ていた範囲での至高存在。そんな創造神よりさらに上がいたのだと、今回改めて知ったんだね。
別に気にする話じゃなさそうだけど、まあイヴさんの立場だとそうもいかないもんか。
ただ、関係性については創造神側のほうがシステム領域側に対して、かなり敵意と言うか隔意を持ってそうなのは以前に織田とのやり取りからでも察せはしている。
本来ならば自分達こそが意思持つ最高存在であるべきところを、システム領域が軒並み魂を持ったことで自動的かつ必然的に格が一つ落ちてしまった彼ら。それを由来に、創造神達はシステム領域のことを後から起きてしゃしゃり出てきた鬱陶しい連中くらいに思っているのだと。
だもんで、イヴさんにもそのへんの絶妙に気まずい関係性については伝えておく。今後万一にでも彼女がどこぞかの創造神と対面した際、うっかり口を滑らせてシステム領域を讃えるようなことを言わないようにね。
聡明な彼女はもちろんそのあたりのバランスも承知してくれたようだった。コクコクと小刻みにうなずけば、その様子を見ていた織田がワインを飲みながらまあ愉快げに笑ったよ。
「ククククッ! なかには鼻持ちならないようなモノももちろんいますが、そうしたモノも総じてシステム領域とのパイプ役になった私相手にさえどこか遠巻きでしたよ。虎の威を借る主義はありませんが、正直なところ小気味は良かったですね」
「怖ぁ……」
「……いずれにせよ、創造神達とて委員会が巣立ちの試練である可能性に達したことで、現世への手出しをより厳しく禁じたうえで事態の流れを具に監視していくことでしょう。そのことはご承知おき願います、山形公平」
「分かってる。あいつらも気が気じゃないだろうし、監視してくるのは織り込み済みだ。場合によってはピンポイント的な干渉さえしてきかねないことも……まあ、それはこちらも似たようなモノを抱えてるしな。そこはお互いとやかく言わない」
「ほう?」
創造神の現世へのスタンス。手は出さないけど様子は伺うよ、だってシャレになってねーもん────という姿勢に対して、こっちもこっちでいろいろあるんだよねと微妙に目を逸らす俺。
知的好奇心の強い織田なんかは、それだけですぐに目を光らせて興味を持ってくる。マジで知識欲が強いなこの神、北欧神話の伝承とかでコレ絡みで痛い目にあった話とか絶対あるだろ。
まあ、今回は創造神側に伝えるべき話でもあるから、必然的に彼にも知ってもらうべきものではあるんだけどね。
慎重に言葉を選んで、システム領域はシステム領域でちょっと特異な事態が起きていることを告げる。
「んー……創造神達に伝えて欲しいんだけど、実はシステム領域側で抱えてる巣立ちの試験官が独自に行動してるんだよ。詳細は教えられないけど、創造神連中ならある程度の当たりはつけると思う」
「! なんと……それはまさか、委員会に与していると?」
「いや、むしろ逆で委員会が動いていることを受けて目覚めたみたいだ。そして事態の把握に向けて調査中って感じらしい。いずれにせよ、真相を掴んだ時点で現世介入はできなくなるからとりあえずそのままにさせているよ」
「ふむ。巣立ちともなればシステム領域側にも試験官がいるだろうことは推測可能な話でしたが、それが起きて動いている、と。なるほど、なるほど」
難しげな顔で思案するオーディン。こうして得た情報から、アレコレと考察するのもこの神にとっての娯楽なんだろうな。
とはいえ、これ以上のことはもう伝えない────巣立ち終盤の試験官ケイン・ソウル、またの名を精霊知能ケンソールについてはな。
創造神ともなれば彼らもまた試験官の一種につき話は別だが、最高神クラスでは仔細を知る権利は残念ながらないのだ。
それを織田自身、分かっているからこそせめて考察を捗らせているんだろうね。
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