攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
話すべきこともお互い話したし、雑談に食事もそれなりに楽しんだので今日はお開きとさせてもらおうかと席を立ったのが10時過ぎのことだ。
ここから全探組行って、依頼受けて現地に行ってダンジョン探査をするとなるとまあまあ規模は小さいものに限られてくるかな。まあ今日は例によって香苗さんが後ろでカメラ回してるだけだもんで、ソッコー片付けようと思えば余裕のよっちゃんさっちゃんすみれちゃんってなもんだろうさ。
「じゃあ創造神の件については本当に頼んだよ、織田。俺も妖怪の件については折り合いをつけたがってるってのも含めてよろしく言っといてくれ」
「承りました。改めて今日も素晴らしい話ができたこと、嬉しく思っていますよ山形公平。それではメリークリスマス、あるいはよいお年を」
「ああ、もう今年は会うかどうかも分からんかあ。メリークリスマス、もしくはよいお年を!」
割と朝から満腹なおなかを擦りつつ、穏やかに織田と挨拶して彼の部屋を出る。
ここからマンションを出るまではイヴさんに先導されてだ、最後まで下に置かない扱いされちゃってるなあ。
ちなみに織田とはもう今年中にもう一回会うかどうかもわからんけど、イヴさんとはインターフェイサー絡みでもしかしたら会う機会はあるかもしれない。
おかし三人娘の顔合わせ、できたら年内にやりたいもんな。その旨雑談がてら話し、つもりをしてもらっておく。
「今年中にこないだ言ってた、インターフェイサーの協力者になってくれることが内定したおかし三人娘とみんなの顔合わせをお願いしたいんですよね。ついてはイヴさんにもその時、ミュトスの家に来ていただけるとありがたいです」
「はい、お師匠様。お師匠様が手ずから様々な助言をなさったというその人間達は、言うなれば私にとって姉妹弟子にも値しましょう。であれば概念存在と現世存在という違いはあれど、同じ方を師と仰ぐ同志として肩を並べてみせましょう」
「は、はあ。あの、そんなしゃっちょこばらずに」
「大神オーディンの名代としてインターフェイサーに参加せし私は戦乙女ヴァルキリー。であればなんら一片の手抜かりとてなくことを成してみせますとも」
「そ、そう……」
怖ぁ……やる気満々だよこの人。単なる顔合わせに名代もミョウガもあったもんじゃないだろうに、気負いまくってるんだよなあ。
まあその気負いこそが先だっての神奈川さんとの模擬戦で見せた、実力差さえ埋めかねないほどの気迫にもつながっていると考えると一概に否定していいものではもちろんないんだけどね? もうちょい気を抜きなよと言いたくもなる普段からユルユルな俺ちゃんだ。
ともあれ、マンションの外に出る。最後まで見送ってくれたイヴさんにも手を振り別れを告げてから、俺は一路最寄り駅まで向かって歩き始めた。
ここからは時間との勝負……なんてちょっと大袈裟だけど、スマートに動きたいところはあるからね。サクッと全探組に行くよ。
冬空は曇りがちだが雨雲というわけでなく、薄暗い雲ばかりが立ちこめる微妙な空模様だ。気温の感じ、雪が降るでもなさそうだけどね。
でも今日ばかりは雪が降ってほしい気もするよ、ホワイト・クリスマスになるし。吐く息の白くなっていくのを目で追いながら、俺は駅にて切符を買って全探組付近の駅まで移動する。
町全体がさすがにクリスマスムードだもんで、電車内にもカップルさんやら親子連れさんやらがまあ仲睦まじげに佇むことだよ。
しかもそんな人達は自分達の世界にいてくれれば良いのに、なんでだか俺を見るなりアッ、例の人! みたいな顔してくるのだ。
なんだよう。
「あ……おい、救世主さんだぜ」
「ホントだ! 初めて見た、うわー地味だけど救世主なんだよね、あの子」
「救世主様だ! ほら、救世主様だぞ! ドラゴンから俺達の町を護ってくれた、救世主様だ!!」
「きゅーせーしゅさま、ばんじゃい!」
「ばんじゃ〜い!」
「えぇ……?」
途端に車内に信仰の香りが漂ってきた。カップルさんは地味だけど救世主、なんて微妙な評価を下してくるし、家族連れさんに至っては可愛らしいちびっ子達がよりによって信者ごっこしてくるし。
発言からしてアイの騒ぎの際にドラゴンの被害をモロに食らった地域にお住まいなんだろう。つまり香苗さんやミュトスの住むマンションあたりだね。
あの地域の人達は、ダイレクトに俺がどうにか事態を収めたこともあり……伝道師さんがお住まいの一帯ということも重なり、もはや例のカルトの勢いが非常に強い土地らしいよ。白目剥きそう。
そんなだからこちらのご家庭のように、ご両親さんから御子息様方に至るまでバンザイしても理解できなくはない土壌が出来上がっちゃってるわけだね。
「…………すーっ」
「きゅーせーしゅさま、ドラゴンやっつけてくれてありがとー!」
「あぃがとぉ!」
「ん? ────ふ、ふふ。ありがとうね、君達」
こうなると一丁、瞑想しようかと目を閉じかけた俺ちゃんだけども。
無垢なる子供達の、ドラゴンから助けてくれたことへの感謝の言葉を受けては応えないのも良くないだろう。
どんなにか怖かったろうな、親御さん達も含め、当たり前の生活を脅かされて。
誰一人にとっても、何一つ欠けて良いものなんてないのに……それを理不尽に奪われかけていたんだ。
そんな騒ぎを、どうにか俺が解決に寄与できたことは今でも誇らしいことだ。この子達の笑顔と言葉が、それを改めて思い出させてくれた心地になる。
こちらこそありがとうと、俺も軽く手を振って笑いかける。君達の未来を護れたことこそ、一番の報酬なんだよ。
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