攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
意外な組み合わせ、でもないのかな昔からの知り合いみたいだし。でも意外な場所で見かけた組み合わせなのはたしかだろう。
今やS級、かつてはA級トップランカーだった香苗さんと今でも現役のA級トップランナーなセーデルグレンさん。いやトップランナーなんてのはRTA界隈だけの造語だけれども。
ともかくそんな因縁なんだかどうかも分からん二人が、全探組の談話室にて丁々発止のやり取りを交わしているのだ。いや会話になってるか若干怪しい、互いの主張をぶつけ合っていただけの気もするけど。
そんな彼女らが俺を見るなり、手招きしてこっち来なよと言ってきたのだ。元よりそのつもりだけど、なんだか足取りが重いや。
「公平くん、お疲れさまです。すみません来ていただいて早々にわけの分からないスピード狂いの珍妙な自説に触れさせてしまいまして。ああそうだ、メリークリスマスですね、ふふ」
「め、メリークリスマスです、はい」
「シャイニングくんグッモーニン! 略してシャイニングッモーニン!! 相変わらずかつてのマイライバルはクレイジーな信仰に身を窶しているね、でもトップスピードはそんなことではアプセッしないよ、だってなぜならトップランナーだからね! あ、そうだったメリークリスマス!!」
「アッハイ。め、メリークリスマス」
怖ぁ……それぞれ壮絶に別ベクトルに突っ走ってる。
どちらも取ってつけたようにメリークリスマス言ってますけど、世間様的にはまず開口一番それが来るべき日ですよ、今日ってば。
なんだろう、もうこの時点で今日の探査が珍妙なものになる予感がヒシヒシとする。
ていうか探査できるのかこれ? でもRTA走者がいるからには探査するんだろうなこれ。望むところだけどペースは完全に乱れそうだよ。
俺の思いを知ってか知らずか、セーデルグレンさんは瞳煌めかせたスピード狂の眼差しで俺に矢継ぎ早にまくし立ててくる。
「今日はサプライズ押しかけちゃってベリーソーリー! ぜひ一度でいいから君の腕前と言うかRTAテクニックを具に観察しておきたくてね!」
「え。い、いえ。あの、RTAなんてした覚えはこれっぽっちも」
「はぁ……すみません公平くん、彼女はアレクサンドラとの決戦後、あなたが帰還させてくれたことを受けてこれはRTAに活かせると思ったようでして」
「帰還って、ああー……! いや、まあ、あれは、んんん……!」
いきなり理屈不明に人をRTA走者扱いしてくるセーデルグレンさんに、当然ながらなんのこっちゃ抹茶に紅茶な俺ちゃんはハテナマークがギッシリだ。
そこを見かねた香苗さんが、努めて小声で耳元で打ち明けてくれた……アレクサンドラとの最終決戦終了後、俺が見せた技。あれを受けてのことらしい。
そうだね、ワームホールによる空間転移だね。あの時、俺はさっさと帰るべと洞窟内にいたすべての人間を権能を用いて現世に帰還させたのだ。
その時にセーデルグレンさんを刺激してしまったんだろうね。なんせ普段遣いだからこそ分かるけど、空間転移はRTAを破壊し尽くすヤベー権能だし。
トップランナーとして気にしないわけにもいかないのは当然の話といえば当然の話である。
言われてしまうと俺としても、んんんと唸るしかない経緯。
迂闊だったか、いやでもあの時は仕方なかった。あんな概念領域の洞窟なんて、生きてる人間を長々と居させちゃよくないし。あとさっさとアレクサンドラや瀬川以下サークルの連中をお巡りさんに引き渡したかったし。
しかしそれが巡り巡って数カ月後、こんな話につながるとは。これもまた因果の妙ってやつかぁ。
「実のところ、公平くんの持つ空間転移や空中飛行、あるいはビーム能力あたりはすでに大概公然の秘密めいて扱われていたりします。ウーロゴス戦で御身の偉大にして尊崇すべきお力をテレビの前で発露なされたのですから当然のことではありますが……さらにあの事件で中核近くにいた探査者達などは、下手をせずともその眩い救世の奇跡の発動を直に見ているわけです。セーデルグレンもその一人ですね」
「こっそり信仰心まぶした言葉遣いにするの止めてもらっていいです?」
「ですがそれで、彼女がここまで直球に力の秘密を探りに来るとは……せめて最低限、トップスピードchのスタッフを介して穏便な形で話を持ってくるかと思っていたのですが。これは予想外でした、申しわけありません」
「香苗さんが謝ることじゃないですって。いやまあ、正味仔細は教えられませんし教えようもないですけどね実際問題」
元々、テレビの前で何度か派手に目立ってしまった自業自得山形くんだ。どれだけ隠したところで何やら変な手品をいくつか持っている、くらいに噂されてるのは知ってるし仕方ないと許容もしているよ。
ただ、セーデルグレンさん並にドストレートに見学しに来た人なんてこれまでいなかったから面食らっちゃうのはあるかな。
まあ、言ってしまえばこの人も第八次モンスターハザードにおける仲間といえば仲間だ。特にラストダンジョン突入に際しては、フルアーマートップスピードとか言って武装して暴れ回る彼女とその仲間達に助けられたところも大きい。
そのへんもあって、こう来られちゃうと断りづらいところはあった。さて、どうするか……
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