攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
モンスター素材が俺の倉庫に余りまくってる問題について、セーデルグレンさんもひと通りの事情は理解してくださった。
そのうえで理解を示し気配りさえしてくれたうえで、やはり光糸が貰える絶対的好機を逃す手はないと一も二もなく頼み込んできたよ。
ただでさえ手に入りにくいモンスターのドロップ品。しかも該当モンスターがC級ってことでもはやA級であるセーデルグレンさんには絶妙に手に入れづらい代物だからね。
加えてそもそも、光源として汎用性が高く人気な素材なことから需要が相当高い部類なんだ。そんなのを労せずしてゲットできるとなれば必死になるのは当然のことだろう。
軽く興奮した様子で彼女は、こちらの手を握り感謝してきてみせた。
「譲ってくれると言うならばこちらも謹んでプリーズ・アンド・センキューシャイニングくんと言わせてもらうよ! 光糸による光源が手に入れば常備している電灯の重量が軽くなるし照明効果もさらに高まる。そうなれば必然的にダンジョンRTAにもさらなる躍進が見られるんだよ、これぞまさしくトップスピード・一石二鳥!」
「そ、そうですかそれは良かったです……えーと、それじゃあこの探査が終わったらお渡ししますね」
「いや、それは待って・ア・リトル。さすがに何の対価もなしに施されてオンリーではトップランナーのネームドクライだからね。取引については後日、こちらのマネージャーも同伴のうえで正式に行わせてもらいたいんだ。もちろん、報酬も弾む」
「えぇ……? いえその、そういうのは別にいいですよ。こちらとしては在庫処分に近い感覚なんですし、ぶっちゃけた話」
なんだかややこしい話の流れになってきたぞ……
別に余人を噛ませる必要もなければ、なんならこの探査が終わったらサクッとワームホール開いてなかから光糸を取り出してはいどーぞ! と渡してしまえば終わりだっていうのに。
セーデルグレンさん的には無償でもらうのはやはり気が引けるようで、後日報酬を渡すからその絡みで正式な取引として話をしたいとのことだった。
マネージャー付き探査者なんての、上級にもなるといるもんなんだなあ。ましてやインフルエンサーでもあるこの人ほどならば分かる話だ。
なんならベナウィさんとか、アメリカに御自身の探査事務所を開いてスタッフを雇ってるって話を以前にも耳にしたことがある。やはり探査者も上澄みになって人気になったりすれば、ある種一国一城の主めいて居を構えるものなのかもなあ。
「そういうわけにもいかないさ。かつてのマイライバル香苗もそう思うだろう、取引たるはフェアじゃなければならないと」
「まあ、そうですね……公平くんからすれば面倒なだけかと思いますが、しかしセーデルグレンの顔もある程度立ててあげたほうがより無難とは言えます」
「そんなもん、ですか?」
「そんなもの、です。それに変に話が広まってしまい、ないとは思いますが公平くんに無償で素材をせびるような第三者が現れないとも限りませんからね」
「あー……セーデルグレンさんにタダで渡したんだからこっちにだってタダでくれよ! みたいな感じですか」
セーデルグレンさんから話を向けられ、説明してくれる香苗さんが俺の言葉にコクリとうなずいた。
たしかに、下手にロハで希少素材を譲りましたーなんてのが世間様にバレたら、俺がなんでも無償で配る慈善家山形くんだと思っちゃう人もなかにはいるかもしれないね。
さすがにそこまでする気はないというか、今回の場合も結局は倉庫整理というこちらの都合ありきでの提案だからね。下手に揚げ足取りだかされて詰められるのも面白くはない。
そこを危惧するからこそ、香苗さんもセーデルグレンさんもここはあえて正しく取引の形で行ったほうが良いと言ってくれてるんだな。
「救世の光を擁し、かつ人脈もすさまじいあなた相手に詐欺紛いを仕掛ける輩など……いえ、世のなかには想像を絶する考え方をする者もいると、それこそ第八次モンスターハザードにて思い知りました。用心するに越したことはありません」
「ま、まあ……なんかいろいろいましたもんね、多種多様にヤバい人達が」
「無論、ごくごく一部ですけどね。ともあれそういった理由から、やはり光糸の譲渡もセーデルグレンサイドとの正式な取引として、報酬を得たうえでのこととするべきですよ」
「そういうことなら分かりました、そういう形で後日に話を進めましょう。ありがとうございます、勉強になりましたよ香苗さん、セーデルグレンさん────と。次の部屋のモンスター、見えてきましたね」
なんとも得難い学びを得させてもらった。俺も一々悪目立ちする質だもんで、迂闊なことをするとどこからかそれが漏洩した際に変な人達に付け入る隙を与えることにならないとも限らない。
まあ、いざとなれば取れる手段はなんでも取って対抗するけど……そもそもそういうことがないよう、迂闊な真似をする前に止めてもらえるってのが一番ありがたいのは言うまでもないからね。
このへんの、現世社会の機微はやはりまだまだ学ぶことが多い。
それを改めて感じさせてくれた香苗さんやセーデルグレンさんに感謝しつつも、俺は次なる部屋のモンスターとの戦いに向けて意識を戦闘モードに切り替えていった。
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