攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
いよいよヤベー規模でS級さんとかから目を付けられているらしい俺ちゃんについては盛大に目を逸らして。いや逸らせそうもないけど逸らすしかないとして。
その後はダンジョンもサクサク踏破していって、想定よりずっと早い一時間ちょいで最奥まで辿り着けてしまったよ。
これってのもやはり、トップランナーことセーデルグレンさんの御活躍あってのハイペースだろう。
何しろ移動中は普通だったけど戦闘となるとまあ速いのなんのって。シンプルなスピードももちろんながら手際の良さが半端じゃなくて、あっという間にモンスターを片付けていったんだからすごい話だ。
ここに至るまでの動きぶりには、香苗さんさえ感嘆の声とともにツッコミを入れたくらいだものね。
「セーデルグレン……RTAに特化しないほうがやはり丁寧な立ち回りをするものですね。スピードランを最優先にしている普段のあなたの探査動画などと比べて、明らかに発揮できている実力が雲泥の差ですよ」
「あーそうか、なるほど。RTAの場合だととにかくダンジョンの最奥行ってコア取って帰ってくるが至上目的になってるから、道中のモンスターなんかは極端な話、適当にあしらうだけあしらうのが基本なわけですね。そりゃ、今回みたいな探査のほうが綺麗に立ち回れるかぁ」
「ンン〜ディナイするにはしづらいポインティングアウッ! しかぁし、シャイニングくんにかつてのマイライバル香苗くん! 速さこそがトップランナー、速度こそがリアリスティー・トップスピード! であるならば畢竟、スピードこそがこのリスティ・セーデルグレンであることはまさしくディスティニーであることもいい加減アンダスタンだね?」
「えぇ……?」
ぶっちゃけこの人、RTAを意識しないほうが探査者としては強いんだよね。
見てて思うもの、偏りに偏った速度へのこだわりがなければたぶん、普通に準トップランカークラスはあるって。
もちろん、それでも捨てられないのがこだわりだとも理解しているし、それがある意味ではセーデルグレンさんの素敵なところだとも受け入れはするけど……
厳然たる事実として、やはりスピード至上主義のせいで本来のパフォーマンスを出し切れていないってのは感じるのだ。
そこを指摘した香苗さんと、納得する俺にセーデルグレンさんは猛然と、ではなく冷静に反論してきた。
ただし理屈は破茶滅茶だ。何よりもまず速度こそが己であると定義づけしちゃってる人の言い分だから、何をどうしても普通の探査者の感性には収まるわけもない。
まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるように、彼女は俺達に向けて続けて語るのだった。
「たしかにスピードをヴィクティムすればモンスター相手にももっとテクニカルに動けるだろうし、パワー的にはそっちのほうがストロングかもしれない。でもそこにスピードがなければトップスピードじゃないんだ! 分かるかい分かるね分かってくれてどうもありがとうセンキュー」
「分かりそうで分かりませんが。そもそも、あなたはなぜそこまでダンジョン探査の速度に命懸けなのです? ダンジョンRTAというジャンルそのものへの否定でないことはあらかじめ断っておきますが、それにしたとてニッチさは否めないでしょうに」
「それをかつてのマイライバルが言うのってなんか、なんだろう……ユーにだけは言われたくないかなって感じになる……」
「あなたにとってのそれが私にとっての救世主山形公平様であるとして、救世主神話伝説をあまねく世に広める我ら救世の光は決してニッチではありませんので。すでにチャンネル登録者数も2000万に到達間際ですし、規模も完全にグローバルなものになっていますから。国際規模ですから」
「怖ぁ……」
どっちもどっちだよ!! と、思わず叫びたくなるくらいどっちもアレな会話である。トップランナーさんのスピードへの執着も伝道師さんの救世主(仮)への妄執も、まあ傍から見れば似たようなもんではあるよね。
しかしニッチさについては……うん、残念ながら、うん。救世の光の規模がなんかもうすでにグローバルになってるのは俺も確認しちゃっているからね、うん。
セーデルグレンさんもさすがにそこは分かっちゃうのか、ぐぬぬと饅頭みてーな膨れっ面して黙り込んでしまった。
まあ、ダンジョンRTAはどちらかと言うとコアなジャンルで、一定層からは深く強く支持されているものの大衆からするとなぜ命懸けの現場でわざわざ縛りプレイで競技を? と、割と至極真っ当なツッコミを入れられがちだからね。仕方ないね。
「くっ!? ふふ、さすがはかつてのマイライバルだ。やはり私ではまだ敵わない、か。ちなみに私がスピードにこだわる理由はなんのことはない、私こそが最速であることを示すためだよ」
「別に競ったつもりもないですが。ええと、それはともかく最速であるため?」
「"私は速度だけなら誰にも負けない"とね。それを世界に知らしめようと動画取って配信したら、なんか次第に規模がでかくなってきた。最初はちょっと焦ったしどーしよコレってなったけど、どうせなら競争にしてしまったほうが楽しいし一人じゃないから良いかなって……おかげで凄腕の探査者達もスタッフに加わってくれてるし。だから私はトップランナー、トップスピードなんだよ。これまでも今も、そしてこれからも」
「は、はぁ……」
フッ、とニヒルに笑って案外普通というか、成り行き任せでここまで来ちゃってるっぽいことを語るセーデルグレンさん。
でもそれでもこうまでやれちゃってるのはやはり、本人の実力もそうだし速さへのこだわり、そしてそれらが生み出すカリスマ性の為せる業なんだろうね。
これはこれで、一つのオペレータの在り方だろうさ。
そんなふうに俺は一人納得しつつも、最奥の部屋に辿り着いてコアをゲットしたのである。
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