攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「いやーサティスファクション! 実にサティスファクションだよシャイニングくん! アレクサンドラとのフェイタルバトルの時に一瞬でダンジョンの外に出たからアレなんだったんだろうって、ずーっとRTA的な意味で気にしてたんだけどいろいろスッキリしたよ、センキュー!」
10分ほど、俺が展開したワームホールをあれこれ調べてから大いに満足したのかセーデルグレンさんは笑顔でうなずきサムズアップしてきた。
やはりアレクサンドラとの最終決戦の帰り、いきなり転移させられたことに端を発していろいろ気にしていたようだね、RTA的に。
そのへんが解消されたってことでずいぶんスッキリしたようだけど、何かしら得るものがあったんだろうか?
ぶっちゃけこればっかりは、セーデルグレンさんでは逆立ちしたとて再現不可能な技法だからなあ。最低限度でも権能を持つモノでなければ……あるいは何かしらの方法で世界のバグを突いてバグスキルを獲得するとかでなければなかなか、今回のことが彼女の直接的な力になることは難しいんじゃないかな。
「お役に立てたならそれが何よりですけど……RTA的に活かせそうな何か、見出せそうですか?」
「んー、移動テクニックってポイントでは正直ちょっとかな? でも対モンスター戦における戦術戦法のヒントとしてはなかなか、インタレスティング・ディスカバリーを得られた気はするよ」
「ふむ? たとえばなんです、セーデルグレン? 後学のためにお聞かせいただけますか」
「オフコース! シャイニングくんにも聞いてほしい、このトップランナー、リアリスティー・トップスピードの見出したテレポーテーションからのインスピレーションを!!」
高らかに横文字たっぷりに叫ぶセーデルグレンさんから伝わる、何やらよく分からないけどすごい自信っていうか熱量。空間転移そのものはさすがに参考にできないと思ったみたいだけど、探査者としての戦闘スタイルとかの面で新発見があったみたいだね。
それは何よりだけどしかし、一体何を見出したんだ? 香苗さん同様、俺としても探査者として気になるところだ。
とりあえずダンジョンの出入口前まで空間転移した俺達。しかして外に出る前にセーデルグレンさんは一人、少しばかり距離を空けて何やら準備しだす。
実践するつもりか、いきなり……さっきも見たワイヤーを仕込んでいる手袋と、それに銃をそれぞれ手にしていく彼女を見る。
「セーデルグレンさん?」
「今しがたのワームホールを見ていて思ったんだよ。極短距離でなら、これは私の超スピードでも再現できるって。それ自体はこれまでの戦法でも割と普通のやり口だったんだけど、そこにワームホールという要素を加えてみたいと思う」
「ワームホールの、要素?」
「そう。たとえば──《神速》、トップスピード・アクション!」
「!!」
語りつつもスキルを発動、そして次の瞬間には俺の眼の前にいる、セーデルグレンさん。
《神速》……スキル《俊足》が《疾風》へと進化したうえで、さらにもう一段階の進化を遂げた二段階進化スキルだ。
たしかこれも最終決戦時だったけど、トップスピード愛好家のリンちゃんやシャルロットさんが所持していた"トップスピードなりきりセット"なるものの一品、セーデルグレンさんの探査者証明書の模造品を見た覚えがある。
そこにはたしかに記載があったよ……ステータスまで含めてたしか、こんなだったはずだ。
名前 リスティ・セーデルグレン レベル549 A級
称号 スピードスター
スキル
名称 剛力
名称 神速
名称 剣術
名称 弓術
名称 銃術
名称 糸術
名称 格闘術
名称 槌術
名称 直感
称号 スピードスター
効果 あらゆる動作の速度に補正
スキル
名称 神速
効果 あらゆる動作における素早さに特大の補正。さらに発動後任意で1分間、超高速移動が可能
いろいろ手広くやってるな。という印象のスキル群なわけだけど、そのなかでも特に目を引いたスキルがやはりこの《神速》だった。
さすがはトップスピードだけはあり、大した速度だと今まさに体感した事象を前に思う。当然目で追えたし何かされても余裕で反応できるものの、客観的には速度だけ見ればS級探査者クラスはあるだろう。
たしかに、これは短距離に限ってみれば空間転移とそう変わらない速度での挙動と言えよう。
そんな圧倒的ハイスピードを唐突に見せつけてきたセーデルグレンさんは、そのまま至近距離から俺の顔をじっと見つめて続けて言ってきた。
「モンスター戦の場合、基本はまずこの、これだ。超スピードで敵に接近して、多種多様な武器で圧倒、制圧、牽制から攻撃、防御、回避を行い打倒する……んだけど、空間転移を取り入れるならばここに一手間加えられそうだなって考えた」
「ふむ? 一手間とは」
「"要は結果が同じなら良いんだ"。空間転移で敵に接近するのも、超スピードで敵に接近するのも同じなら、そもそも私が敵に近づくのも敵が私に近づくのも同じこと。まあこの場合、敵が近づくのは私の設置しておいた攻撃、だけどね」
「それは────あっ」
いまいち分かりづらい説明に、香苗さんも俺も訝しみながら質問を重ねようとして……親指で元いた場所を指さすセーデルグレンさんを見、遅まきながら気付かされた。
何かある。いや、セーデルグレンさんの手、手袋から仕込まれていた糸、ワイヤーが張り巡らされている。そしてそこに、トリガーに糸を引っ掛けられたまま固定された、銃さえも何丁か。
罠だ、それも設置型の。
そこにきて気づく、彼女の意図。俺の至近距離まで瞬時に移動した、その目論見を。
あらかじめ設置しておいた罠めがけて、このままモンスターを叩き込んでしまうつもりなんだ、超スピードで。
空間転移で自身が移動するのではなく、相手を移動させる。その用途を自らの《神速》で無理やりにでも再現するっていうんだな、この人は!
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