攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
俺の空間転移から、移動技術としてではなく戦闘テクニックに活かせる部分があるとしたセーデルグレンさん。
そんな彼女の取った方法がこれだった──予め糸と銃で仕掛けた罠を設置した上で超速移動し敵に接近。しかる後に、その敵を罠のなかへと叩き込むのだ。
今、俺をモンスターに見立てて接近した彼女がそっと俺を引き込み、罠のほうへと背中を押す素振りだけしてみせたのが何よりの証だ。
というか、さり気なく使ったな合気の技法。しかもかなりの熟練度だぞこれ。
「──こういうことだね。高速で部屋に入ると同時に罠を仕掛けておいて、モンスターに接近してそこに叩き込めば。結果としてはほら、空間転移で敵に近づいて攻撃するのと変わらないだろ?」
「ふむ。なんとなく意図は理解はしますが、それは罠を設置せずとも接近して直接攻撃する時点で成立するのでは?」
「そうでもあるけど、今回は空間転移って要素を取り入れたスタイルだからね。シャイニングくんは単なる移動手段としてのみワームホールを扱っていたけど、私が仮にその技術を使えるなら……それだけでなく、こういう使い方もしただろうってこと。まっすぐ行って攻撃するだけだと、思わぬ反撃なんかも怖いし。このやり方なら、不意のカウンターなんかもある程度見越せる」
「なるほど。ある種のヒットアンドアウェイですか」
香苗さんとの質疑応答を経て、語るセーデルグレンさんの真意が見えてきた。とどのつまりはこういうことだ……もしも彼女がワームホールを使えたらこうする、という再現。
指摘のとおり、俺は基本的にワームホールを移動にしか使わない。使わなくとも普通に他の攻撃でこと足りれば、そもそも戦闘中にワームホールを頻繁に使うのって面倒くさいし。
こと攻撃手段という点で、空間転移をそこに転用する意味が俺としては薄いんだよね。
ただ、セーデルグレンさんとしてはそうじゃなくて。だからこそ擬似的な、ある種強引な動きでもそれを模した戦法を試してみたわけだ。ワームホールで接近しつつ、かつ相手を攻撃しながらさらに転移させることで身の安全をも守れるような、変則的なヒットアンドアウェイ。
そんな戦術を思いついて、空間転移の代わりに自らのスキル《神速》で代用してみせたんだね。
実戦で使えるかはさておき、発想そのものは天才的なものだ。さすがは香苗さんをライバル扱いしていただけのことはある、みごとなひらめきと実行力だよ。
「あと、複数体が相手の時にもこのやり方は旨味があるね。雑魚を片っ端から罠に叩き込んで片付けて、本命にはそれこそ自身で仕掛ける。敵の群れを分断することにもつながるし、自分で言うのもなんだけど結構いい線いってる気がしてきたよ」
「あえて言うなら、罠自身の威力がどうかって話ではありますよね……糸と銃を使ったトラップ、モンスター相手にどこまで効くやら」
「さすがにC級くらいまでなら確殺に持ち込めるとは思う。至ってシンプルな、糸でトリガーごと固定した銃をタイミングに合わせてぶっ放すってだけのものでもそれだから、もっと手の込んだやり方次第ではA級相手にも通じるかもしれない」
「いずれにしてもトラップの要は《糸術》ですね。であればセーデルグレン、得物のワイヤーはより軽くより強い、扱いやすいものを選ぶことをお勧めしますよ。今のままでは、設置スピードも強度も不安が残るかと」
「んん〜蓋しライトオーギュメント! まさにそこもこれからのアサインメントだねえ」
いろいろメリットと、それに関連するリスクや懸念がそれぞれ俺と香苗さんから挙げられていく。そうするだけの価値がある戦法だと、認めているからこその指摘だ。
ゆえにセーデルグレンさんも嫌な顔一つせず受け答えし、悩む素振りだって見せていく。それは完全にプロフェッショナルとしての、探査者としての一つの完成形たる者の姿と言えるだろう。
いずれにせよ、俺の目から見てもこのやり方はありといえばありだ。俺自身にはあまり取り入れられなさそうだけど、引き出しの一つとして参考にする余地は大いにある。
これもまた、学びだな……俺から学びを得たセーデルグレンさんから、俺もまた学ぶことがあった。お互いウィンウィンな、素晴らしい切磋琢磨とも言えるだろうさ。
「ワイヤーも一応、モンスターの素材を用いた特製品なんだけどね……もっとグレードを上げられたらなあ。B級のスチルスパイダーのも十分良いものながら、やっぱりA級のダイヤモンドスパイダーとか、ロンズデーライトスパイダーなんかの糸があったらなあ」
「んん。ロンズデーライトはともかくダイヤモンドスパイダーの糸ならたしか、少量ですけどあったような」
「本当かい!? シャイニングくん、光糸と合わせてぜひとも取引してくれないか! 報酬はもちろん弾むから!! ね!?」
「あ、あー良いですよぜんぜん。もののついでですし」
手袋に仕込んだワイヤーの強度などについて、ブツブツつぶやくセーデルグレンさんについ、そういやなんかダイヤモンドスパイダーとかやっつけたなあーみたいに零したら反応された。光糸と同じで、よほど欲しがってたものなんだろう。
ぜんぜん構わない。やっぱり倉庫整理のついでだし、箪笥の肥やしになるよりかは前途洋々たる探査者に有効活用してもらったほうがきっと素材も喜ぶからね。
日を改めて素材を取引することをお互い、固く誓い合って。
そうしてウィンウィンな関係を築けたまま、俺達は今度こそダンジョンを後にしたのだった。
【ファンボックスやってますー】
https://tentacle-claw.fanbox.cc/
限定スピンオフ「日々是好日、大ダンジョン時代」と無料で設定とか裏話とか見れますー
ソフィア、ヴァールとエリスのほのぼのライフですー(*´ω`*)
「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第三部・第三次モンスターハザード前編─黄金の胎動─
完結しました!後編は2026年12月頃から!
よろしくお願いしますー
「大ダンジョン時代ヒストリア」完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!
コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
pash-up!様
( https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32 )
はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
よろしくお願いしますー!