攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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地味に広がるトップスピードファンクラブの輪

「メリー・クリスマス公平! アンタすごいわねーこんな日にもダンジョン探査とか! またソロで、ああでも香苗がいるんだっけ毎回毎回撮影役で。アンタもだけどアイツも大概よねえ」

「いやーははは……まあ軽い運動がてらですよ。朝、織田の家で結構ご馳走食べちゃったんで腹ごなしに。あと今回はセーデルグレンさんも一緒でしたよ、ほらダンジョンRTAの」 

 

 いつも陽気なアンジェさんだけど、今日はハレの日でしかも一次会後っぽいこともあってか普段にも増してテンションがお高い。

 ランレイさんと葵さんと肩なんか組んじゃって、明らかアルコールを摂取しているご様子だ。

 

 もはや俺の探査がソロであることは前提みたいに言われちゃったけど、それでもカメラを回す伝道師さんはもはや当然いるみたいに言われてしまうと二の句が継げない。

 だって実際そうだものな、俺がデビューしてからほぼすべての探査にあの人は同行してカメラ回して奇怪な伝道行為のネタに仕立てているわけだし。

 

 でも今回は一味違ったんだよートップランナーさんもご一緒だったんだぞーと、稀に見るノットぼっち山形くんだったことをちょっと誇らしくも説明する。

 セーデルグレンさんについてはこちらの面々も当然ご存知だ、RTA関係で世間的にも目立ってるインフルエンサーだし、何よりこないだの最終決戦でもお世話になったしね。

 

「セ、セーデルグレンさん……! り、リンちゃんとシャルちゃんがも、もももモーレツに推し活してるあの、例の超早い人……! え、なんで公平さんとご、ご一緒に?」

「香苗さんが連れてきまして。何やらRTAに活かせるかどうかってことで、俺の空間転移を具に確認したかったらしいです」

「はっはっはー! 聞きしに勝るスピードへの探求心ですねえ。第八次モンハザの時もとんでもない重武装なのにすごい速度で先導してくれましたけど、スピード重視の葵さんとしてもあの人は参考にすべき探査者ですよ」

「葵も早いのは早いんだけどね……あのなんだっけ? トップスピード? とやらとは速度のベクトルが違うでしょ。あっちはとにかくぜんぶ置き去りにしてでも最奥行ってコア取って帰るためのスピードで、アンタのはどんな時でもその場での最善を尽くすためのスピード。比べるもんじゃないでしょうに」

「いやーはっはっはー! ご評価いただきありがたい!」

 

 ランレイさんも葵さんも、セーデルグレンさんの名を聞けば反応せずにはいられないようだ。いやその横でさらに猛烈な勢いで目を光らせて、耳を傾けているリンちゃんがいるんだけどもね。

 同じくA級でかつ、トップランカー付近の実力層にいる彼女達からするとトップランナーを名乗り、かつネタっぽいムーヴとは裏腹に洗練され積み重ねた努力と工夫に裏打ちされた実力を誇るセーデルグレンさんのことはライバル的な意味で気になるのかもしれない。

 

 特に探査者としての個性が同じ、スピードという方向性に伸びている葵さん的には否応なく意識しないではいられまい。

 アンジェさんの言うように、比べるもんでもないんだけどね。まさしくスピードを求めるベクトルが違うわけだし。どっちが上とか下とかでなく、同じ要素でも使い道が違うのだから比較することにあまり意味はない気もする。

 

 というか、このトリオも大概呑んでるみたいだ。いつもよりやはりテンションがお高い。この集団、呑んでないのって未成年のリンちゃんくらいじゃないのか?

 あわれ酒飲みに囲まれた無垢なるカンフー少女を見る。セーデルグレンさん、リアリスティー・トップスピードの猛烈なファンである彼女はやはり、キラキラした瞳で俺をまっすぐに見つめていた。

 うおっ、シャイニング!

 

「公平さん!! トップスピードさん、どんな感じだった!? 速かった!?」

「へ!? あ、ああうんそこはさすがに……今回はダンジョンRTAじゃなかったけど、モンスターとの戦いにも参加してもらったからよく見てたよ。戦闘時にもさすがのスピードとテクニックだったね」

「やっぱり! トップスピードさん、ダンジョンを駆け抜ける速度がもちろん一番わかりやすくて早くてかっこいい! けどバトルの際、まるで淀みなくどんな相手にも最速最短で最善手を打とうとする判断力と胆力、そして実力の高さがすごい!!」

「そ、そう……ちなみに俺のワームホールからなんか新戦術を編み出したっぽいから、そのうちあの人の動画チャンネルとかでお披露目されるかもね。俺が言うのもなんだけど、結構すごい発想だと思ったよアレは」

「っ!? ……シャルちゃんに伝えなきゃ。トップスピードさん、新境地に達したみたいって! メッセージ、メッセージ!」

「えぇ……?」

 

 すごい勢いでスマホを弄りだしたリンちゃん。シャルロットさんのことをシャルちゃん呼びするくらい仲良くなってるのか、トップスピード同好の士として……

 同い年だもんなーたしか。そう思うと微笑ましい友情の姿ではあるんだけれど。この子の場合、今の発言からでも分かるとおりセーデルグレンさんを見る目が基本、戦闘者としての視点だから一味違うね。

 

 まあなんにせよ微笑ましくはある。

 俺含め周囲の年長さん達一同、友人にいそいそとメッセージを送る愛らしいカンフー少女を温かな眼差しで見守っていた。




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