攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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自称陰キャが過ごすクリスマスか?これが……

 お客さんもたくさんで大変賑わってきた我が家のリビング。俺は挨拶もそこそこに一旦自室に戻り、今日は早めに風呂に入るべってことで着替えを持って浴室へ向かった。

 なんならアイも一緒だ。さっきリビングにいないなーと思ってたら俺の部屋のベッドで昼寝していたよ。入るなりすぐに目を覚まして抱きついてくるんだから、まったく愛らしいよなあ。

 

「今日はご馳走だぞ〜アイ。いやいつもご馳走だけど」

「きゅう! きゅきゅきゅ〜」

 

 俺の頭に乗って御満悦な様子のミニチュア・ドラゴンに話しかけつつ洗面所へ。んでもってパジャマ置いてー、服脱いでスッポンポンになってー、風呂場に入る。

 何はともあれ身体を洗うところからだ。今日も寒さがそれなりだったもんで、シャワーのお湯が体に染みるよ。

 

 シャンプーで頭を洗って、ボディソープで身体もバッチリだ。なんならアイの身体も同じように石鹸でわしゃわしゃ泡まみれにするぞ。

 可愛くても耐久性、頑強性はものすごい生態のこの子からすると、俺の手なんてのはさぞかし心地良いマッサージハンドだろう。ゴットハンド山形の指圧を受けよ!

 

「お客さんお加減いかがっすかー」

「きゅう……きゅう〜きゅ〜きゅうう〜……」

 

 つぶらな瞳を閉じて、夢見心地って感じで鳴き声をあげるアイ。母ちゃんや優子ちゃんがこの姿を見たらまーたカメラでパシャパシャ撮り出しそうなくらい愛くるしい。

 良い感じにマッサージと洗体を終え、シャワーでこの子の泡を流し去る。ついでに俺のもだ、頭から一気に行くぜ。

 

 そうしてシャワシャワ〜っと温かいお湯で身体を洗い終えたらいよいよ湯船に浸かる。今日の入浴剤は近くのスーパーで買った、各地有名温泉郷をモチーフにしたらしい粉だ。

 正味、効能とかが実際にあるのかは知らんけどなんかいい匂いするし色味も良いからいいよね。おれはそのまま肩まで浸かり、アイはいつもどおり風呂桶に張ったお湯に身体を沈めた。

 

「はふー」

「きゅうー」

 

 気の抜けた声をあげる一人と一匹。一日の用事を済ませてから楽しむお風呂は最高ですなあ。

 とはいえ、今日はむしろここからが本番なのだ。たくさんのご馳走がテーブル狭しと並べられ、それをみんなで楽しく話しながら美味しくいただくクリスマス・イヴ。

 

 明日もクリスマスだもんで、学友達と遊んだりしてやはり大忙しではあるんだけど……

 まずは目の前の楽しみ、人生で初めてと言っても過言ではない家族以外の方も交えて過ごすクリスマス・イヴを精一杯味わうとしたいよ。

 

「ん……香苗さんと宥さん、来られたな」

 

 と、そんな折に家のインターホンが鳴ったのを聞く。もっと言うと少し前から、この家に向かって歩いてくるオペレータの気配を二つ感知したりしていた。

 まず十中八九、香苗さんと宥さんだ。あとはあのお二人が来てくださったらメンバーは揃うからね。

 

 しかし香苗さん達も歩きか。まあだろうな、お酒は呑むだろうし。泊まりがけとまではいかないにせよ、結構夜更けまでいてくださるかもだし。

 一応、リビングを片付けたら人数分の布団は敷けなくもないからね。予備の布団もあるし、本当に泊まりがけって選択肢もあり得るのか。

 

「ま、そこはどのみち宴の流れ次第か。俺もこんな賑やかなクリスマスなんて初めてだし、どう転ぶかまるで見えん」

「きゅう?」

「明日も友達と楽しむわけで、去年のクリスマスを思うと異次元に来ちゃったみたいな感覚だよなあ〜」

「きゅう〜」

 

 湯船でホッコリしているアイに、笑いかけながら独り言ちる。こういう催事、イベントごとがある度思うんだけど、去年までといろいろ変わりすぎる。

 去年のクリスマスったら、まあ普通に受験勉強して、軽く散歩に出てカップルさんの多さに怖ぁ……ってなって、逃げるように帰ったら家族みんなでピザとチキンとサラダとケーキ食べてぐっすり寝て終わりだったものな。

 

 実に取り立てた何かのない、だからこその幸せもたしかにあったクリスマスだったよ。

 それが今年は朝から北欧神話の最高神とオードブル食べて、昼には腹ごなしっつって美女二人とダンジョン探査行って。そんでもって帰ってきて夜は美男美女美少女に囲まれる山形一家でクリスマスパーティーと来たもんだ。

 

 いやどないなっとんねんこれ。そう言いたくなるのも無理からぬ話じゃないかなこれ。

 ビフォーアフターにしたって破茶滅茶すぎる、俺のこれまでの人生のどこに北欧神話が絡む要素があったのやら。いや春先からの成り行きを見たらまあそんなもんかとなるのはなるけど、去年と今年のクリスマスの状況に限ってだけ抜き出すとコントみたいなことになってんじゃねーか。

 

「人生万事塞翁が馬だなあ……よし。十分温もったしお風呂あがろっか」

「きゅ!」

 

 つくづく人生、何が起こるかわからんもんだ。

 年も暮れ、ぼちぼち一年の振り返りがてらそんなことを思いながらも──そろそろ良い感じに温まれたし、俺はアイを伴い風呂場から出ることにした。

 

 そう言えばアイを見て思い出したけど、ダンジョンコアのダンコちゃん、物販売れてるのかなあ。

 そのうち広瀬さんと顔合わせた時、応援してるって伝えとかないとなあ。向こうはアイのことどう思ってるか知らんけど、できたら対立的でなく友好的な人間関係、いやさマスコット関係を築いていってほしいもんなあ。




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