攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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黄金色の三ヶ月

 三界機構はすべて退け、いよいよ残るは邪悪なる思念のみとなった。俺とリーベ、マリーさんは一旦、短いながらも休憩を挟み、仕切り直しを図る。

 1000倍パワーも収め、激痛も引いていく。これ、最低あと一回は味合わなきゃいけないんだよな……憂鬱になるわ。

 

「さておき、ベナウィさんとリンちゃんがどうなってるか、だよな……」

「それに一応ですが、ミッチーとヴァールもですねー」

 

 小休止がてら気にかけるのは、自壊していく災海、断獄を相手に時間稼ぎをしている二人のこと。

 まさかやられてはいないと思いたいが、とはいえ相手は化物中の化物だ。何があっても不思議じゃない。

 

 称号効果の一つ、決戦スキル保持者間での念話能力を発動させる。これ、便利なのは良いけどいわゆるグループチャットみたいなもんだから、特定の相手を選んでのやり取りができないんだよな……

 ともあれ。脳内にて語りかける。ベナウィさん、リンちゃん、香苗さん大丈夫ですか?

 

『──おや? ああ、ミスター・公平のテレパシーですか。お疲れさまです。こちらは問題ありませんよ。概ね1時間が経過しますからね、そろそろ。災海は滅びました』

『公平くん! ああ、ご無事なようで良かった! こちらは無事です、なにもないくらいですよ』

 

 ベナウィさんが真っ先に応える。ああ、かれこれ一時間がもう、経っていたのか。次いで香苗さんも、ずいぶん時間を持て余してるみたいだ。

 災海は無事、終わりを迎えたらしい。なにはともあれ、ベナウィさんが無事そうで良かった。

 となればリンちゃんだな──脳内に、淡々とした声が響く。

 

『ん、念話、便利……こちらも今、応戦中。断獄、だいぶ弱ってきてる。あと30分、余裕』

『そっか、良かった……』

 

 特にどこかを怪我した感じのない、いつものリンちゃんだ。断獄が自壊を始めてから30分。ちょうど半分だけど、次第に敵が弱っていくことを踏まえれば、なるほど彼女が余裕と嘯くのも分かるかな。

 ベナウィさん、リンちゃん。それに香苗さんも特に問題なく、自分の仕事を果たしてくれているみたいだった。

 

 俺の方も、進捗を報告する。

 

『俺たちは今、三界機構の最後の一体、魔天を倒したところ。マリーさん、ワールドプロセッサごとやっつけちゃったよ』

『!?』

『なんと……』

『ファファファ、精も根も尽き果てたけどねぇ。マリアベール・フランソワはもう探査者引退さね。いい終わり方、させてもらったよ』

 

 倒しきれるはずのないモノを、どうしたことかマリーさんは倒しきった。その報告に、自壊まで耐えきったベナウィさんと未だ、耐えている途中のリンちゃんが明らかに動揺した声をあげる。

 分かる。俺もだし、リーベも滅茶苦茶ビビった。たぶん知ればヴァールも、なんならソフィアさんもビビるだろう。怖ぁ……

 

『ま、それは置いといて。私ゃ一旦、御堂ちゃんのところに戻るとするよ。もうすっかり燃え尽きちまって戦えやしないし、公平ちゃんの邪魔もしたくないからね』

『それに、天地開闢結界を無効化し続ける彼女の護衛は、多ければ多いほど良いでしょう。一番距離の近い私も戻るつもりでいますが……ミス・フェイリン。加勢は要りますか?』

『不要。ただ、断獄がだいぶ暴れてるから、マリーおばあちゃんはことが終わるまで足止めされるかも』

『ファファファ、構いやしないさね。もうこの局面、私にゃやれることがなくなった。あとはひたすら、公平ちゃんとリーベ嬢ちゃんが生きて帰るのを祈るのみさ』

 

 そう言って、目の前のマリーさんは俺たちに軽く、手を挙げて歩きだした。無論、もと来た道だ。このままリンちゃんと合流して、やがてはスタート地点、香苗さんのところに向かうのだろう。

 この場に残るのは俺とリーベだけになる。最後の戦いが、すぐそこまで迫っている。

 深く息を吸って吐いて。俺は軽くストレッチをした。マリーさんとは逆の、これから向かう場所を見据える。

 念話にて、告げる。

 

『……じゃあ、これから本体と戦ってきます。ここまでありがとうございました。みなさんと一緒に戦えたことは、俺の人生で一番の自慢です』

『ファファファ、何を大袈裟な。これから先の人生、あんたはもっといろんな人間と知り合うのさ。人生の一番、なんてのはもうちょいとっときなよ』

『うん。公平さん、戻ってきたらまた、遊びに行こう』

『飲み屋に繰り出しましょう』

『未成年ですけど!?』

 

 マリーさん、リンちゃん、ベナウィさん。

 そして、香苗さん。

 

『無事に帰ってきてください。約束ですからね』

『……分かりました。俺は必ず、みんなのところに帰ります』

 

 かけがえのない仲間たちのエール。この三ヶ月は、何より価値のある日々だった。掛け値なくそう思う。

 リーベが、俺に促す。

 

「行きましょうか。敵はこの先にいます」

「ああ、分かってる──世界を、救いに行こう」

 

 休憩は終わり、ここからはノンストップだ。

 アドミニストレータとして俺は、邪悪なる思念が待つこの道を駆けていった。

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