攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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というわけで番外編開始です
山形の夏休みをじっくりねっとり書いていきます


番外編
俺の夏休み


 新しい時代を生きる、一歩を踏み出した!

 と、意気込みはしたけど。俺ってこれから、夏休みを死ぬほど遊び散らかして過ごす予定なんですよね〜。

 

 香苗さんの車に乗って組合本部へと向かう、終業式終わりのお昼前。

 俺こと山形公平、あるいはコマンドプロンプトは、さっき勢いのままにカッコよく締めてみた俺自身に早速、ツッコミなんて入れちゃったりしていた。

 

「どうかしましたか、公平くん?」

「あ、いえ。夏休みだなーって」

「ふふ、そうですね。これから8月末まで、お休みですね。お疲れさまでした」

 

 微笑み労ってくれる香苗さんは、夏に合わせてリクルートスーツの上着を脱いで、シャツにスカートといった装いだ。

 上着がないだけで印象変わるっていうか、良いよなあ。

 でもたまには私服も見たい。そう言えば、決戦前の浴衣姿も大変お美しかった。

 夏休み中、御堂家に来ないかと地獄のような誘いを受けているけれど、ラフな格好の香苗さんを見られるなら、行きたい気持ちもちょっと湧いてくるかもね。

 

 組合本部の駐車場に到着。

 車から降り、施設に入る。時刻はいい感じにお昼前だけど、とりあえずダンジョン探査依頼を受けてからご飯にしようということで、俺たちは段取りしていた。

 

「こんにちはー、いい感じのダンジョン、あります?」

「はい、こんにちは。証明書の提示をお願いします」

 

 いつも受付にいるおねーさんに、いつものように探査者証明書を渡す。

 ちなみにだけど、決戦後にまた、俺の級は一つ上がっている。つまりは今、C級ってことになってるわけだな。

 

 これは別に、邪悪なる思念を倒したことが評価されたわけじゃない。

 あの決戦というか、アドミニストレータ計画はこの世界のシステム側の領域だから、オペレータには直接関わらない部分が大きい。

 

 ましてや今回の件ってば、国内の探査者の査定を行う全探組って組織自体が蚊帳の外だったんだよね。

 そもそもの成り立ちからワールドプロセッサが仕組んでいたWSOとは異なり、100%探査者由来で発足された全探組には出る幕なかったんだよ、邪悪なる思念云々については。

 

 なので、世界の裏側でオペレータとはあんまり関係のないやつを倒してきました! と言って、それが世間的な評価につながるわけでもないのだ。

 というか全探組からしても、そんなこと言われたって知らんがな、の一言だろう。ソフィア・チェーホワ謹製のWSOですら、何人かが動いていただけだしな。

 

 じゃあ、何がきっかけで昇級したのか?

 一言で言うと、アイの騒ぎでの評価がまだ残ってたんだよね、これが。

 あの騒ぎだけは元々からWSOが、もっと山形公平の級を上げろや! と言い続けていた。それに対して消極的だった全探組の折衷案として、期間を置いての段階的なランクアップと相成ったわけだ。

 

 正直俺としてはどうでも良いってのが、本音のところなんだけどね。

 俺の意識としては、山形公平はアドミニストレータであり、それ以上にコマンドプロンプトなわけだし……探査者としての活動はもちろんするけど、オペレータという感覚じゃないんだよなあ。

 

「C級ですね。相当する級のダンジョンはこちらになります」

「どうも」

 

 受付さんの持ってきてくれた、タブレット端末に表示された案件。C級探査者の実力相当とされる、C級ダンジョンがずらりと並ぶ。

 この県にもそこそこの数、オペレータはいるんだが、それでもダンジョンの発生に探査によるダンジョン消滅が追いついていない。

 輪廻に受け入れ待ちの、四つの異世界の魂たちを浄化しきるまではこの調子だろうから、やっぱり数百年はかかるんだろうなあ。大ダンジョン時代の名残は、つまりはそこまでは続くってことだ。

 

「……ふむ、じゃあこれを」

「はい……商店街近く、ファーストフード店内のダンジョンですね。手続きを行いますのでお待ち下さい」

 

 サクッとダンジョンを決めて、受付さんに手続きしてもらう。

 決めた基準なんて特にないけど、強いて挙げれば近いから、だな。今日、夕方からクラスで打ち上げがあるんだよ。商店街内の焼肉屋でやるそうだから、じゃあその近くにしとこうって、そんな程度のもんだ。

 

「手続きが完了しました。こちら資料になります。C級探査者、山形公平さん。探査者の誇りと勇気でどうか、ダンジョン踏破達成を祈ります」

「どうもですー」

 

 手続き完了と同時に資料を受け取る。階層は三階まであり部屋数は合計5。直下に伸びたタイプだな。

 さておき、これで準備は完了だ。受付を離れ、ロビーで待つ香苗さんの元へ戻る。

 

「ただいま帰りましたー。商店街近くのハンバーガー屋のダンジョンです。行きましょうか」

「ええ。その前にお昼ですけどね……ふふ。救世主伝説撮影のために新調したカメラが、今日からデビューです!」

「そーですかー」

 

 わざわざ俺のダンジョン探査を撮影するために持ち込んだのか、その、お高そうなカメラ……

 相変わらずの香苗さんに気の抜けた笑みを浮かべつつ、俺たちは組合本部を後にした。




こんな感じで毎日、サクッと読める分量で投稿しますね
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