攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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敵味方識別式マップ兵器

 神魔終焉結界の説明なんかはそこそこに、試運転がてらダンジョン内のモンスターを駆逐していく。

 嬉しい副産物というか、ある程度想定はしていたけど……飛行能力すげえ楽だわ。日常生活の動線にこの服を着込むことってのがまずないからアレだけど、普段使いしたいレベルで楽ちんだ。

 

「飛行系のスキル保持者は今までに何人か見てきましたが、公平くんがそうなるとは……」

「レアではありますが、あることはありますもんね、空を飛ぶ系のスキル」

 

 ふよふよ〜と浮かびながら前へ進みつつ、香苗さんと話す。飛行能力を付与するスキルは、《飛行》とか《浮遊》みたいにないこともないが、基本的にはレアなスキルだ。

 邪悪なる思念との戦いに際して、そういうスキルもくれて良かったんじゃないの? と、ワールドプロセッサには今さらだが思わなくもない。まあ、最終決戦の場所をどうあれ、原初のダンジョンにすると定めていたならば、空を飛べても飛べなくてもあまり変わりがないと判断したんだろう。

 

『実際、空を飛べたところで僕や三界機構相手には意味ないしね。僕を滅ぼすことしか頭にないワールドプロセッサからすれば、そんなスキルにリソースを割く意味はなかったんでしょ』

 

 と、邪悪なる思念の声。こいつから見ても分かるくらい、ワールドプロセッサたちは敵を倒すことしか頭になかったことが見て取れる。

 実際、ある種の集団パニックみたいなものだったからなあ……ワールドプロセッサ以下、あらゆる精霊知能が怒りと恐怖によって支配されていた。自分たちの世界を守ること、それだけにすべての視野を持っていかれていたのだ。

 

 誰一人、冷静なものの見方ができていなかった。それゆえにコマンドプロンプトは500年前、自我の発生と共に身を潜めたのだ。ワールドプロセッサ含めたあらゆる存在から、気配を隠した。

 努めて冷静に、ことの成り行きを見定めて、異なる方向からのアプローチを試みたのだ。全員が同じ方向を向くのは良いが、視点は様々な立場から存在するべきだ、と考えて。

 

「さて、次の部屋は……と?」

 

 かつてを振り返っている間に次の部屋に到達する。ここを突破すれば最奥だな。

 モンスターの気配はそこら中からするが、それらしき姿は見当たらない。はて?

 

 注意深く部屋へ進入する。相変わらず様々なファストフードが散らばる床、壁。一見、モンスターはいないように見えるが……

 なるほど。うまいことカムフラージュしているな、これまた。

 

「そこだ」

「ピギギャー!?」

 

 軽く手を振る。衝撃波が発生して、遠方の一見バーガーらしい見た目をした何かに直撃した。

 途端に、床のバーガーが一斉にカタカタ震え出す。袋を食い千切るように破り、出てきたそれは。

 同じく、見破った香苗さんが呟く。

 

「……シェイプシフターですね。このダンジョンの内部構造から、バーガーに化けるのが効果的と考えたのでしょう」

「そ、そこそこエグいやり口ですね……」

 

 シェイプシフター。

 こいつは特殊なモンスターで、周囲の情報を読み取って構造が変化している、いわゆるユニークダンジョンにのみ発生する。

 そしてその変化した構造を把握して、それに合わせた変化を行うのだ。それゆえ級を問わず出現するため、ダンジョンの級に合わせてモンスターの級も変わるという、珍しい性質をしていた。

 今回の場合、ハンバーガーに化けているわけだな。

 

 日常的に目にするバーガーやらポテトフライに紛れて、モンスターが潜んでいるのだ。構造からして馬鹿みたいなダンジョンなんだが、シェイプシフターの性質が組み合わさってほとんどトラップ同然だ。

 わらわらと牙の生えたハンバーガーがやって来る。数だけは多いがこいつら自体は、そこまで強くないのが救いといえば救いだな。

 

「まとめて私がやりましょうか? 公平くんならばなんの問題もないでしょうけど、さすがにこの数は手間でしょう」

 

 カメラ片手に香苗さん。多数相手ならなるほど、彼女の《光魔導》は非常に有効だ。というより、俺に広範囲攻撃手段がないからな。

 だが……俺は否やを返した。

 

「いえ。新しいスキルを獲得しましたので、ちょっとそれを使おうかなと」

「新しいスキル……ですか!?」

「ええ。邪悪なる思念もいなくなったので、もうないだろうと思ってたんですけどね」

 

 高く宙に浮く。今の香苗さんへの説明は、半分真実で半分嘘だ。

 スキルを獲得したのは間違いでないが、ワールドプロセッサが与えてきたものではない。俺が手ずから、作り上げたものなのだ。

 

 邪悪なる思念が消滅したことを受け、俺のいくつかのスキルはその効果が事実上、なんの意味もなさなくなった。《風浄祓魔/邪業断滅》やその派生スキル《ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で》なんかがそうだな。

 で、そうなると俺の探査者としてのスキル構成なんてスッカスカも良いところなので、どうしたもんかと考えた結果、もう作っちゃえとなったのである。

 

 それで今回、都合が良いシチュエーションなのでこれまた初お披露目って感じだ。

 さて、やってみようか。俺は、スキルを発動した。

 

「《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》」

 

 蒼白い光とともに、バーガーに扮したシェイプシフターたちの足下、ダンジョンの床に大きな魔方陣が形成される。

 次の瞬間、彼らは炎に巻かれた。

 

「グゲギャアアア!?」

「こ、これは!?」

 

 驚く香苗さんの目の前で、シェイプシフターが次々と塵となって消えていく。魂を浄化され、この世界の輪廻に受け入れられたのだ。

 《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》。《救いを求める魂よ、光とともに風は来た》から着想を得る形で創り上げた、広範囲浄化スキルである。

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