攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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山形なんでもあり公平

 名前 山形公平 レベル617

 称号 誰でもないあなた

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 

 スキル

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 解説 形がないからこそ、永久に続いていく。永久に続いていくからこそ、形を失っていく

 効果 歪められた因果を元に戻す。加えて、範囲内における異世界の魂を浄化し、世界の輪廻に受け入れる

 

 

 はい。こちらが俺が手ずから創生したスキルになります。名称と解説も例によってポエミー。ここまできたら、統一感は持たせたいしね。

 スキルの初使用にあたって、ステータスにもバッチリ記載しておいた。この手の、システムを介さずに創り上げたスキルを隠匿するのは、ワールドプロセッサがキレそうな気がする。

 

 このスキル《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》の主な用途はざっくり、魂の浄化だ。

 邪悪なる思念を抜きにしても、因果を歪められた存在は俺にとって救済対象。ゆえに、対象を広く取る形で特効効果を発展させた。

 

「モンスターも救うべき魂ですからね。まとめて浄化できる、今みたいな広範囲攻撃はありがたいですね」

「たしかに、公平くんに不足していた部分を補うスキルですね……!」

 

 興奮した様子で香苗さんがカメラを回す。悪いけど、この辺は動画としての投稿は止めてもらうんだけどね。

 

 正体がどうであっても、すでに無害なものに変わりつつあるとしても。たとえシステム側が全面的に、彼らの救済に取り組んでいるとしても。

 この100年、モンスターたちがこの世界の命を害してきたのは変えようのない事実だ。今さらそれを救いましょうなどと嘯いても、いらぬ角ばかり立てるだけだ。

 

 ゆえに、人間社会にはモンスターの正体や救済措置については何一つ、報せる予定はない。

 憎しみや復讐を、肯定するつもりはないが否定もしない。モンスターに宿る魂を救う云々は、俺やワールドプロセッサ、精霊知能側で考えてやっていけば良いことだ。人間側に、そこまで求める気もないしな。

 

「というわけで、この辺のスキルについては配信はちょっと……」

「ええ、分かっていますよ。それにそもそも、他人のスキル内容を許可なく不特定多数に公開するのはご法度ですからね。個人情報はちゃんと守りますよ」

「ありがとうございます」

 

 そのへんの機微は香苗さんも、よく分かってくれているみたいだった。まあ、アドミニストレータの時点で俺はどちらかと言えば、システム側の立場だったからな。理解者でいてくれるこの人なら、配慮してくれるとは信じていた。

 

 モンスターはすっかり消え果てている。魂が浄化され、この世界の輪廻に受け入れられたのだ。

 うん、新造したスキルの調子も良い。これなら、邪悪なる思念が絡まなくても全然、威力を発揮できるだろう。とはいえ、あいつほど厄介なやつが早々現れるとも思わないけど。

 

『良いのかい? そんなこと言って高を括っていると、逆に僕より厄介なやつとやらが現れるかもしれないよ』

 

 いや、うん……いわゆるフラグって感じで嫌だなって俺も、思ったけれども。

 邪悪なる思念のツッコミに閉口しつつも、俺はダンジョンの最奥へと辿り着く。

 中央の柱にダンジョンコアが埋め込まれた、淡く光るラインがそこら中に走っている部屋だ。ここだけはどんなダンジョンであれ同じ構造だよなあ。

 

 問題なく柱に近寄り、コアを剥ぎ取る。よーしよし、踏破完了。

 あとは帰るだけだな。ここでもちょっと、性能テストをしよう。

 

「さて、帰りましょうか──空間よ、このダンジョンの出口へと繋がれ」

「!?」

 

 神魔終焉結界に仕込んでいる、8つの機能の内の一つを発動する。俺の目の前に、この場所と別の空間とを繋げる次元の裂け目が現れた。

 いわゆる空間転移だ。リーベが使っていたのを見て、便利で良いなあ〜って思ったので創ってみた。

 あいつはまだ、神魔終焉結界自体を知らないため、たぶん俺が自力で空間転移できるようになったことを知ったらギャースカ騒ぐんだろうな。めっちゃ目に浮かぶわ。

 

「公平くん、これは……!」

「神魔終焉結界に仕込んだ能力の一つ、空間転移です。この裂け目の向こうは、このダンジョンの出口の手前ですよ。直接店内に戻ると、変な目で見られて嫌ですしね」

「……もはや何でもありですね。本当に、これだけの能力を扱うあなたは何者なのか。明日の説明会が待ち遠しくて仕方ありません」

「ははは……」

 

 ギラついた瞳でネットリと俺を見る香苗さんが怖い。

 ただでさえこれまで、俺のことをひたすらに救世主扱いしてきたこの人が……俺の正体を知ったらどう反応するんだろうか?

 まさか化物扱いはしてこないとは思うけれど、さりとて神扱いとかってのもなあ。そもそも、システム側と別に神って概念存在はあるし。

 うーん。ちょっぴりだけ不安。

 

「突拍子もない話ですけど、どうあれ俺は俺です。スキルがやけにポエミーな新米探査者で、香苗さんに助けられてここにいる、あなたを大事に思っている山形公平なんです。それだけはどうか、疑わないでほしいですね」

「っ……」

 

 せめてあなたへの想いは本当だよと、心を込めて言ってみる。

 香苗さんは頬を染めて、息を詰まらせたようだった。視線を彷徨わせてやがて、上目遣いで小さく呟いた。

 

「疑うなんて、誰がするもんですか……私は、どんなあなたでも信じています。たとえ何があっても、公平くんは私の大切な人です」

 

 かわいい。

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