攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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マッチポンプ山形プロンプト

「はい、公平くん。ちゃんと噛んで食べなよ」

 

 梨沙さんが何度目になるやら、焼き上がった肉を俺の皿に移してくる。なんていうか、ものすごく甲斐甲斐しいなこの子。

 注文から肉を焼くまで、なんならドリンクバーのおかわりさえも含めて、とにかく俺の分を全部やろうとしてくれるのだ。さすがに注文とかドリンクバーは謹んでお断りしたけど、肉を焼くあたりのことはむしろ、彼女の方が頑として譲らなかった。

 

「梨沙さん、自分の分だけでいいんだよ? そんな、お気遣いしなくとも……それにほら、君だってちゃんと食べなきゃ」

「食べてるし。それに気遣いなわけじゃないよ、私が、公平くんを労いたくてこうしてんの」

「労う……?」

 

 不思議なことを言う。俺のことを、なんで彼女が労うんだ?

 たしかにここ数ヶ月、無闇矢鱈に忙しかったけれども。自分自身のすべてを把握した今なら分かるんだが、こんなもんほとんどマッチポンプだ。

 自分から買って出て、自分でケリを付けただけの話。この三ヶ月は言ってしまえばそういうことだった。だから、梨沙さんがその辺の事情など知る由もないとしても、労られるに値しないと思うんだけどな。

 

 だが、梨沙さんは淡く微笑んで言った。

 

「スタンピードから、ずっとさ。学校での公平くんを見てたよ。助けてもらってから、本当にずっと」

「そ、そうなんだ」

「うん。だからさ……頑張り過ぎじゃないのって思って」

 

 また、焼けた肉を俺に与えてくる。野菜もだ。バランスよく食べなさいということか、ママじゃん。

 心配するような、憂いの眼差し。梨沙さんは今、明らかに不安がっていた。俺について、心を痛めている、のかな?

 

「望月さんを助けたり、ドラゴンやっつけたりしてたじゃん。かと思えば首都に二回も行って、なんかとんでもなく悪いやつをやっつけたんでしょ? そういえばその直前に、ものすごく怖くて綺麗な女の子……かな? と、因縁があるみたいにも言ってたし」

「最後のはなに……って、ああ、あいつか」

『誰のことだい?』

 

 おめーのことだよ、邪悪なる思念。

 そう言えば首都に行くすぐ前、梨沙さんたちと一緒にいる時にこいつは姿を見せたんだ。

 あの時は焦ったけど……彼女らクラスメイトたちにも、それ相応以上のインパクトを受ける遭遇だったと、言うことなのだろうか。

 

 焼肉を頬張りながら話を聞く。見ればたしかに梨沙さん、俺の世話を焼きながらでも、自分の食べる分はしっかり確保してるな。手際良すぎるだろ怖ぁ……

 当たり前のようにマルチタスクをこなすできる子、梨沙さんはさらに続けた。

 

「正直、公平くんがどのくらいすごいのか、とかは全然分かんない。御堂さんが昼間、色々教えてくれたけど……イマイチぴんと来なかったし。なんか帰依がどうの、怖かったし」

「それはそうだね」

「でも。公平くんがすごく頑張って、すごく偉いことをしたってのは分かってるつもり」

「い、いやあ。そんな大したことはしてないかな〜……は、ははは」

 

 べた褒めなんだが、先に述べたとおりマッチポンプ気味というか、150年前に自分で仕組んだ話なので、素直に受け取りづらい気持ちの方が大きい。

 それゆえの曖昧な笑みで、誤魔化すように肉とご飯をかき込む──一口ごとに邪悪なる思念が脳内でうーまーいーぞー! と叫んでいるのがすげえやかましい──俺を、梨沙さんは何やら柔らかな目で見つめていた。

 

「だからさ。今日はそんな偉い公平くんを、頑張ったねって労いたいわけ。お疲れ様、ありがとう。公平くんのおかげで、みんな平和に暮らせてるよって、伝えたいわけ」

「梨沙さん……」

「あ、ほらお肉焼けてる。食べるでしょ、どうぞ。次、何頼む? ドリンクバー行くから、いつでも欲しいもの言ってね?」

「いやあの、注文とドリンクは自分で行くから!」

 

 感謝されるのはありがたいけど、そこまで甲斐甲斐しく世話されるのも申しわけない。やはり注文とかドリンク関係は押し留めて、俺は引き続いて飯を食っていた。

 こういう打ち上げとか宴会になると、ちょっと時間が経つとと人の流動が起こる。テンションが上がって普段、話さないような人とも話し始めたりする人が出てくるのだ。

 俺のいる席でも、松田くんとか木下さん、片岡くんがよその席に行って、代わりに元々、他の席に座っていた人たちがやってきていた。

 同じクラスだけどあんまり話す機会も少ない、関口くんとか彼のグループの人たち──いわゆる陽キャの集まりの方々だ。梨沙さんと似ているようでちょっと感じの違う、そんな派手派手しいオーラが出ていた。

 

「山形くん、お疲れーっすぇーい!」

「お、お疲れっすー」

「山形、佐山さん、おつかれ!」

「おつかれー」

 

 見るからにパーティピープルな彼らの輝きが眩しい! ギラギラしてる、なんか!

 そして関口くんは他の人もいるからか、俺相手にも爽やかキャラで接してきていた。サブイボ立ちそう、怖ぁ……

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