攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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洋モノコメディホームドラマの人たち

 そうこうしているうちに俺の家族も、リーベに案内されてやってきた。父ちゃん母ちゃん優子ちゃん、どうしたことか3人とも正装だ──中学生な優子ちゃんは学生服だが、いつもより気持ち、しっかり引き締めている。

 いや、なんでだよ。

 

「なんでそんな格好してんの」

「あんたね……こんな場所に私服でなんて行けるわけないでしょ、パンピーの私らが。ていうかあんたこそなんで私服なの恥ずかしい!」

「いや私服で良いって言ったじゃん!?」

 

 パンピーはスーツで来い、なんて馬鹿なことは誰も言ってない。ていうかそんな格差ルールがあったらまず、俺がこんな普段着でいないだろ。

 何を勘違いしたんだこのお母様は。お父様もお妹様もだけど卑屈すぎるだろ、どうなってんだ。おかげで山形家が微妙に浮いている構図じゃねーか、地獄かな?

 

「うお、優子ぉ……生ソフィアさんだ。俺ファンだったんだよぉ。感激だなあ、おい」

「スキルで不老不死疑惑のある、WSOの一番偉い人だよね? 良いなあ……それに、御堂さんに、マリアベールさんはこないだお会いしたけど、あのお婆さんも知ってる。先々代聖女の神谷さんだね。S級探査者のベナウィさんもいるし、うわ、すごいメンバー!」

「そっちはそっちでミーハーだなあ」

 

 父ちゃんと優子ちゃんはテレビでもたまに見る有名人に沸き立ってるし。

 ていうかソフィアさん、スキルによって不老不死とか言われてるのな。まあ、実年齢150超えだからそういう噂も立つわなぁ。

 

 言うまでもないが実際のところ、ソフィアはすでに死んで魂だけの人なので、不老不死もへったくれもない。

 強いて言えば依代になっているヴァールの方だろうが、こっちはこっちで人間じゃないからな。受肉はしていても精霊知能ゆえ、システム側なことには変わりないし、肉体的な死はあれど老いとは無縁だ。

 

 ああついでに言うとリーベも不老だな。精霊知能が受肉するなんてよほどの場合でしかありえないから、その分、受肉したとなったらかなりの超越的な性能の肉体が与えられる。

 つまりは永遠の自称アイドルなわけだ。例の団体のな。あるいは俺のスケープゴートにも成りうる貴重な人材ちゃんに、俺は声をかけた。

 

「リーベ、うちの家族を止めなかったのかよ」

「あー、まあ良いかなーって思いましてー。実際、山形家の方々はちょっぴりノリがコメディ過ぎますからねー。スーツでもビシーっと決めたら、場にも馴染むかなーって」

「なんてこと言うんだお前、存在そのものがギャグみたいな自称マスコットが!」

「はぁーっ!? かわいいかわいいリーベちゃんにいきなりなんですかー!?」

 

 言うにこと欠いてコメディと言いやがる。海外のホームドラマ扱いしてきた、誰よりコメディチックな精霊知能と俺は、ギャースカ言い合う。

 と、そこに本日の説明会参加者、最後の一人がやってきた。

 

「お疲れさまです、おはようございます」

「ああ、使徒望月おはようございます。今日も伝道日和ですね」

「はい、伝道師御堂。伝道するにはいい日です」

「何そのやり取り怖ぁ……」

 

 伝道日和ってなんだよ。思わずツッコみたくなる会話で早々に俺をドン引きさせてくれたのは、探査者の望月宥さん。

 ゆるふわっとした優しいお姉さんな見た目に相応しい、純白のワンピースに麦わら帽子、小さめのバッグと清楚な出で立ちでのご登場だ。

 とんでもなく美人で、香苗さんと並ぶとありがたいものを見た感じがすさまじい。会話の内容まで耳にすると、恐ろしいものを見ている感じがしてすさまじいけど。

 あっ、こっち見た。こっち来た。

 

「おはようございます公平様。今日もお会いできて光栄です」

「お、おはようございます……あの、会っただけで光栄とか仰るのはちょっと」

「世界をお救いになられた、この世の救い主に拝謁できたのです。本来であれば五体を地に投げ出し、伏して天に感謝を捧げるべきなのですが……公平様がお困りになることは、したくありませんのでいたしません」

「助かります、本当に」

 

 気遣いがありがたい。惜しむらくは、そこまで気遣うならそもそも、使徒とやらになんぞならないでほしかったところではあるが。

 香苗さんにしろ望月さんにしろ、俺なんかまともに口を利いてもらえることさえ奇跡のような高嶺の花なのにどうして、こんな風になっちゃったんだろう?

 世の中、信教の自由というものがあるから目を瞑るしかないけど……願わくばほどほどに高嶺でいてほしい気がする山形くんの複雑な心境よ。

 

 ともかく。これで大体の人は揃ったか。

 時間としては10時前、丁度いい時間だな。俺は広瀬さんを見る。察して彼は、声を上げてくれた。

 

「さて。そろそろ人も揃いましたので、始めましょうか。山形さんから皆様に向けて、話があるとのことですので」

「席に着いてもらっていいですか? 立ち話をするにはいささか、長くなる話なので」

 

 続いて俺もみんなに促す。元々座っていた人たちはともかく、立ち話をしていた一同も席に着く。長机が四角形に並べられている、そこの上座に僭越ながら俺も座った。

 さあて、いっちょ昔話といきますか。

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