攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

287 / 2046
新たな使徒が誕生しました!

「それでこちらが、次女と三女です。ふふふ、可愛いでしょう? 3歳と2歳で年子なんですよ」

 

 スマホの画面に映る、愛らしい子供が二人。幼児服を来て、抱きしめあって笑っているのがたまらない写真だ。

 ベナウィさんのご家族の中でも最年少らしい二人、次女ちゃんと三女ちゃんを収めた画像を、今俺は見せてもらっている。

 

「おおー、可愛い盛りって感じですね。今、日本に?」

「ええ、なんなら祝勝会にも来ますよ。関係者の家族は大体来るはずですし」

「そうなんですね。まあ、うちも家族が来ますもんね」

 

 そう、今日の祝勝会は関係者のご家族方も来る。たとえばベナウィさんは一家総出だし、香苗さんのところは残念ながら都合が付かなかったみたいだけど、望月さんのご両親も来られるらしい。

 マリーさんなんて非探査者の娘さんと、A級探査者のお孫さんを連れてきたって話だ。そもそも俺んとこも、一般ピーポーで恐縮だが山形家だよ全員集合って感じである。

 

「そっかあ……楽しみですよ、お会いできるの」

「妻はじめ家族もみな、ミスター・公平の話を聞いてひと目見たいと楽しみにしていました。うちの長女などミス・御堂の動画配信を見て、救世主のファンになっているほどです」

「そっ…………そ、そうですか」

 

 怖ぁ……絶対口に出せないけど、一瞬で会いたい気持ちが半減してしまった。

 救世主のファンってあなた、香苗さんの例のチャンネルのリスナーってあなた。完全にそれアレじゃないですか、啓蒙されちゃってるじゃないですか。

 ちら、と張本人であるところの伝道師さんを見る。

 

「そうですよそもそも考えればあなたこそ我々救世の光の幹部にふさわしいじゃないですかだってそうでしょうあなたは精霊知能でありその上役たる存在がシステムさんことワールドプロセッサならばそのワールドプロセッサと並び立つというコマンドプロンプトこと我らが救世主山形公平様にとってはあなたにしろリーベちゃんにしろ精霊知能とはいわば部下あるいは弟子というべき存在ではありませんかであれば御方の使徒たる我ら幹部格にこれ以上ないほどの適役ではありませんかそう思うでしょう使徒望月」

「はいそのとおりです伝道師御堂高次存在とも言える救世主公平様と同次元の存在かつしかも御方の背負われた使命や苦難をある程度でも共有できるヴァールさんほど使徒にふさわしい方もいませんリーベさんもそうです伝道師を筆頭にした我々使徒の中にあっても一際別格の存在として組織内外でも大きな存在感を示していただき世界に対してより一層公平様の偉大さ尊さ素晴らしさを啓蒙していただくのです」

「ま、ま、待ってくれ。早口すぎてよく分からない、端的に言ってくれ、どういうことだ?」

「あなたは今日から我々組織の幹部として活動するのです」

「意味が分からない……!!」

 

 なんてこった、地獄が繰り広げられている。

 伝道師と使徒による圧倒的勢いの啓蒙行為に、あのヴァールがしどろもどろで冷や汗をかいてドン引きしていた。

 怖ぁ……なんだあの光景は。ベナウィさんが、彼女らを見て呟いた。

 

「ミス・御堂にしろミス・望月にしろ素晴らしい熱意ですね。さすがは、あなたを崇める宗教の長といったところでしょうか。子どもたちがみたら喜ぶかもしれません」

「なんでです!? あの光景見てそんなこと思います!?」

「伝道師による生伝道ですから。ファンにとっては堪らないのでしょう。私からしても彼女らが何を言っているのかは分かりませんが、楽しそうなのは伝わってきますからね」

「そりゃまあ、楽しそうなのは間違いないでしょうけども」

 

 生伝道ってなんだよ。ていうか香苗さんのファンは、そんなものを見て喜んだりするんだろうか? よくわからない。

 推しが趣味に夢中になっているのを、眺めるのが楽しいって話はたまに聞くけど。とはいえ今回の場合、その趣味ってのが新興宗教の救世主を布教する自称伝道行為だ。推しが楽しそうって喜びより、推しが危ない道をひた進んでいるって不安の方が先立ちそうなもんだが。

 

 そもそも子ども相手だと純粋に、教育にしこたま悪い気がしてならない。

 危惧しつつも地獄に目を向ける。ヴァールが何やら、目をぐるぐる回して呟き始めていた。

 

「や、山形公平……コマンドプロンプトを、救世主として讃える……筋としては通っている、気がする。彼が救世主なのは間違いないし、ワタシというか精霊知能にとっては仰ぐべき、最上位プログラムである点もたしかに、そのとおりだ……」

「WSOがそもそもシステムさんの仕込みで組織された点も踏まえれば、つまりはWSOそのものさえコマンドプロンプトこと我らが救世主様を讃える組織であるべきということ。同格たるシステムさんもまあ、讃えるのはこの際、良しとしましょう。結果として公平くんを崇めればそれで良いのです」

「そしてやがては探査者界隈を越え、遍く世に公平様の教えを広げ、真に恒久たる平和を生み出し相互理解と秩序と公正、平和を築くのです。すべてはそう、私たちの救い主の名の下に」

「そ、それは……平和は、良いな……」

「す、ストーップ! 啓蒙ストップ、ストーップ!!」

 

 それ以上いけない、WSOのトップが怪しげな宗教にドハマリしてしまう!

 さすがに見ていられず、俺は慌ててヴァールを助けに行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。