攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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とっても愉快なシェンさん家

 マリーさんの薦めで近いうちに、アンジェさんとダンジョン探査に乗り出すことになったわけだが。アンジェさん本人はあきらかに疑念を抱いたまま、香苗さんに連れられて向こうに行ってしまった。

 

「探査中に公平くんへの粗相がないよう、みっちりと救世主様の偉大さをそのすっからかんなオツムに叩き込んであげましょう!」

「ちょ、やめ、誰か……! 誰かぁーっ!?」

「ひどい光景だ……」

 

 恐るべき伝道行為のため、助けを求めつつも引きずられていくアンジェさん。周囲の人々もなんだなんだと視線を向けては、香苗さんが絡んでると知るとそっと視線を外している。巻き込まれたくないんだね分かるよ、怖ぁ……

 一応お母さんのエリーさんも付いて行ったし、そう変なことにはならないとは思いたいなあ。マリーさんが愉快げに笑って嘯いた。

 

「伝道についてはともかくね、公平ちゃんっていう特殊な存在を間近で知ることは、あの子にとって絶対に、大きな糧になるさね。精々アドバイスしてやっておくれよ? ファファファ!」

「A級の方に俺が今更、何を言えることやらって感じなんですけどね……」

「なあに、山ほど言いたくなるさね。アンジェも結局、頭打ちしとるからさ」

「伸び悩んでるって、ことですか」

 

 俺の問いかけに、彼女は苦笑いして頷いた。

 本当に多いんだな、A級で限界を迎えがちな人。だからアンジェさんにしろ、話に聞くシェン・ランレイさんも、A級トップランカーとして君臨する香苗さんに憧れたりライバル視したりしているわけか。

 

 さすがに俺に、その手の頭打ちだの限界だのを苦とする機会はないだろうけど。そういうことなら、素人目線で恐縮ながら思ったことは述べさせてもらおうかな?

 一応、アドミニストレータおよびオペレータのスキルの出所は俺ことコマンドプロンプトだし、何も言えないってことはないだろ、たぶん。

 

「あ、いたいた! 公平さん!」

「うん? リンちゃん?」

 

 と、今度はリンちゃんがとことこ寄ってきた。やはりご家族様かな、三人後ろに連れてきている。

 男性のご老人がお一人。小柄だがめっちゃマッチョで、白髭と白眉毛が清潔かつ異様に伸びているので、まるで漫画の仙人キャラみたいな達人感がすごい方だ。

 そしてもうお二人は若い男女で、どちらも結構背が高い。180cmくらいあるんじゃないかな? そして顔立ちもどこの俳優さん? ってくらい整っていて、レッドカーペットにリムジンから乗り合わせてそう。住む世界が違う。

 

 リンちゃんも相当な美少女だから、四人で並んでると本当に別世界の光景のように見えてくるほどだ。ここにも異世界はあったのか。

 そんな俺の内心をよそに、リンちゃんは無邪気にそうした三人の異世界的な方々に俺を紹介していく。

 

「姉ちゃん、兄ちゃん、長老! こちら、山形公平さん! 救世主!」

「ほう、この方がかね」

「公平さん! こちら、うちの兄ちゃんと姉ちゃんと一族の長!」

「あ、どうもはじめまして。山形です」

 

 初対面なので陰キャの山形くんとしては、どうしてもこう、おずおずって感じの会釈と名乗りしかできない。

 これが陽キャだったらなあ。探査者ツアーの時に知り合ったウェーイパリピ系探査者、タカちゃんさんこと高木さんなら、一言目からズンズン相手の懐にも潜っていけそうな気がする。

 そんな風に微妙な自己紹介しちゃったなあ、と思う俺だったが、長老さんはともかくご兄姉さん方の様子がどこかぎこちないことに気付く。

 え、なんぞ?

 

「……はじめまして。あの……フェイリンの、兄、シェン・ハオランです……」

「あ、あ、え、えと。その! あ、あああ姉のら、ランレイです!! ご、ごごご趣味はなんですか!?」

「えぇ……?」

 

 方やお兄さん、シェン・ハオランさんの方はめっちゃ小声だし、なんか語尾が震えてるし。

 方やお姉さん、シェン・ランレイさんの方はめっちゃ早口だし、なんか趣味聞いてくるし。

 共通しているのは揃って汗をかきながらあちこちに目を彷徨わせて、決してこちらを見ようとしないことだろうか。というかこの言動、割と俺にも覚えがあるものでつらみを感じてきた。

 まさか、ご同類か……!?

 

「え、えと……あー、と、その、えーあー」

「公平ちゃんまでつられてどうすんだい。フェイリン嬢ちゃん、この子ら、これが素かえ?」

「ん、はい……兄ちゃん、腕は立つけど里から出ようとしないし、姉ちゃん、都会に出たは良いけど友だちがいないし」

「ひ、引きこもりちがうし……! 偉大な一族、自発的に守護してるだけだしっ……!」

「ぼ、ぼ、ぼぼぼっ、ぼっちちがうし!? 星界拳士は孤高なだけだし!?」

 

 赤面してそれぞれ否定するのだが、明後日の方を斜め下向いて主張するものだから説得力という点では乏しい。というか俺までぎこちないのが移っちゃってたよ。危ない危ない。

 とりなすように、仙人っぽい見た目の長老さんが前に出た。

 

「うちの若いのがすまんのう。いやはや腕こそ里随一なんじゃが、内向的に過ぎるのが良くもあり、悪くもありでのう」

「あ、いえ。その、僕もそういうとこありますから。気が合うかもです」

「そうか、ええ子じゃのう。内なる力は途方も無いゆえ見通せぬが、少なくとも人格面ではうむ、さすがはフェイリンが見込んだ子よ」

「ど、どうもです」

「わしはシェン一族の当代の長、シェン・フェイオウ。フェイリン含め三人の父じゃ。よろしく頼みますぞ、山形くん」

 

 そう言って長老さん……フェイオウさんは手を差し出してくる。笑顔で握手に応えながらも、内心にて俺は叫んだ。

 ご家族かよ!!

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