攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
それなりにあちこちで会話が続きながらも、会食は続く。知り合い同士、家族同士の話がメインだが、チラホラとおそらくは初対面だろうに話が弾んでいる人たちもいるみたいだ。
マリーさんのお孫さんであるアンジェリーナ・フランソワさんと、我らが山形家の面々のことだね、具体的に言うと。
「アンジェさん、お侍さんなんですね! カッコいい!」
「お祖母さんのマリアベールさんもたしか、居合の達人って聞いたなあ。もしかして祖母譲り?」
「へへへ、まあね! お婆ちゃんが昔、使ってたのを貰ったの!」
「ヘえ~! それはなんだか、ロマンのある話ねえ」
なんかめっちゃ楽しそうに話ししてるよ、俺を抜きにして。
優子ちゃんも父ちゃんも母ちゃんも、いつの間にやらすっかり打ち解けてるし。アンジェさんもなついてる感じがすごい。俺にはふーん普通じゃんって感じの対応だったのに。
なんならリーベも親しげだよ。アンジェさんの、マリーさんから受け継いだという刀について反応している。
「マリーおばあちゃんの刀、ですかー? ええとその、仕込み杖?」
「違う違う、杖でもなんでもなく普通に刀よ。S級モンスターの素材から拵えられた、30年前まで婆ちゃんのメイン武器だった一振り。私がA級に昇級した時に、正式に受け継いだんだ!」
「はへー。あのおばあちゃん、仕込み杖使い始めたの結構最近だったんですねー」
「え。私が生まれる前からなんだけど、最近……?」
感心しつつも年齢がバレそうな発言をしたリーベに、アンジェさんが首を傾げている。まあ、別にバレたって構いやしないんだろうけど、混乱の元になりそうではあるかなー。
それはともかくマリーさん、お孫さんに愛用していた武器を譲ったんだな。仕込み杖は老境に差しかかってから使い始めた、みたいなことを以前に聞いた覚えがあったが、そこに至るまでにちゃんと、普通の刀を使っていたみたいだ。
「もっとも、婆ちゃんの戦闘スタイルな居合術は教わってないんだけどね。私はもっぱら、スタンダードな切った張った。それこそ時代劇でやるようなチャンバラ剣法を使ってるよ」
「すごーい! え、うちの兄ちゃんより強そう」
「山形? ……って、区別できないから公平って呼ぶけど。あいつ、そんなに強いの? 婆ちゃんもなんか、今までにないくらいべた褒めしてたけど。あんな普通の見た目じゃ、判別しようがないよ」
優子ちゃんもだけど、アンジェさんの言葉も地味に刺さる。
たしかに普通極まる見た目だけどさあ……たしかにマリーさんほどの方が、あんなゴリ押しするほどの何かがあるようには見えない見た目だけどさあ。なにもそんなさあ、判別しようがないとか言わなくてもいいじゃんさあ〜。
聞こえてくるアンジェさんの忌憚ないご意見ご感想に思わず唇をとがらせる。いいもんね、普通の見た目な俺だけどステーキなんて食べちゃうし!
最高級の牛なんだろう。食欲をそそる肉の薫りにまずは鼻がくすぐられる。まずは一切れ口に含むと、詰まりつつも柔らかな肉厚が、レアな焼き加減ゆえの肉汁たっぷりで素晴らしいハーモニーを舌の上で踊る、踊る。
『ああ〜これだよこれ! 肉! 肉肉! やっぱり何をおいても肉が一番だねえ! 君んとこの世界は焼き加減一つとっても気にする異常なこだわり具合だし、楽しみ甲斐があるってなもんだよ!』
邪悪なる思念さんも脳内で唄うように叫ぶ。こいつ、マジで完全なんかよりグルメ番組のリポーター目指したほうが向いてたと思う。
……と、そこそこにご飯を楽しみがてら、隣に座る神谷さんに話しかけてみる。
「それで、神谷さん。俺に何か、聞きたいお話があるとさっき、仰られてましたけど……」
「え、あ。良いのですか、今からでも?」
「もちろん。俺で良ければ答えられることには答えますよ」
何やら込み入った事情がありそうな感じだしね。コマンドプロンプトとしての俺を頼ってきた以上、何かしらこの世界のシステム側について知りたいんだろうな。
俺を見て、少しばかり逡巡したような神谷さんではあったものの。やがてひとつ頷くと、やはり上品な仕草で俺に、真剣な様子で尋ねてきた。
「……この世界には、神や精霊、あるいは悪魔悪霊といった類のものは、存在しているものなのでしょうか?」
「え。神に、悪魔? まあ、いるっちゃいますけど」
これまたこう、デリケートなことを聞いてきたな、神谷美穂。いやその、話題自体はありふれてそうなスピリチュアル話なんだが、相手がガチで宗教やってる人ってのはちょっとこう。それに、システム側としても答えにくいのよな、このへん。
心なし言葉を選びつつ、続けて答える。この世界に神や悪魔みたいな超常のモノはたしかに、いる。ただ、世間一般に認識されている立場や役割とは少し、異なるかとは思うけれど。
「神とか精霊とか、悪魔とか幽霊みたいなのはいますよ、神谷さん。システム側ではなく、あくまで生命体の一つとしてですけど……たしかにこの世に存在します」
「……!」
息を呑む。神谷さんは俺の、システム側からの解答に緊迫した雰囲気を纏った。