攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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仲良く喧嘩しな!

 魔術的な儀式を以て、神をこの世に顕現せしめる。

 古来より人間たちの間で流行りがちなオカルティズムであり、実際、この国でも陰陽道とか修験とかって形で似たような技術があったりなかったりするみたいだが。

 まさか元々は異世界の概念であるスキルを複数組み合わせて、そうした儀式を擬似再現しようなんて者たちがいるというのは、俺としてはよくやるなあそんなこと、ってのが実際のところだ。

 

「概念存在の分体を一時的に召喚して、己の力とするスキルはありますけど……おそらく本体を完全に降臨させようとしてるんですよね? その一派の連中とやらは」

「ええ。何が目的かは分かりませんが、我々の掴んだ計画にはたしかに、我々が崇める神を降臨させ、この世に救済をもたらす、などといった記述があったとのことです」

「救済ねぇ……喚び出すモノの性質にも寄りますけど、下手打つと大惨事間違いなしなんですけどね」

 

 なんともはや、宗教チックな理由でとんでもないこと画策するもんだ。そもそも救済ってのが何をどうすることなのかも分からないから、余計に怪しく思えてくる。

 ましてや分体とか力の一部でなく、本体まるごと引きずり出そうなんて遠回しですらなく自殺行為だ。言っちゃなんだがあいつら概念存在も知性体な以上、自分たちの思想に従って動くんだからそんな都合のいい連中でもないし。

 どのみちろくでもないことになるのは目に見えている。

 

 神谷さんもあまりよく思っていないようで、難しげに顔を歪めて俯く。

 先々代とはいえ聖女ゆえ、教団の人たちの悪巧みには心が痛むんだろう。ポツリと、呟いた。

 

「神を呼び出すなどと、限定的なスキルですらも冒涜的なものを、まさか本体だなんて」

「……まあ、本体は無茶ですね。《召喚》とか《降魔》、《降神》《降霊》みたいなスキルによる仮初の現界が精々ってところでしょうが」

「私としては、それらスキルにもあまりいい感情は抱けません。神や悪魔を使役するなど、人間には過ぎた力と言えましょう」

「は、ははは……」

 

 怖ぁ……結構ガチめに嫌ってるじゃんこの人、召喚系スキル。スキル自体は単なる概念存在との交信権利でしかなく、実際に力を貸す貸さないの決定権はあくまで神魔側にあるんだけど。たぶんそういう理屈面の話じゃなく、感情面のあれやこれやなんだろうな。

 

 ちなみにだけど、概念存在のほとんどはこの世界の仕組み、すなわちシステム側の存在には気付いていないし知識もない。変にプライド高いのが多いから、下手に色々知るとできもしないのに下剋上とか企みかねないからな。

 概念存在でも際立って上位の、最高神とか魔神とかっていう、それこそ神にとっても神! みたいなごく一握りの存在ぐらいかな、知ってるのは。というかワールドプロセッサと接触するための正規ルートを中継する役で一体、最高神がいたりするしね。

 そのへんは案外ズブズブだったりするのだ。

 

「その一派……ダンジョン聖教においても過激とされる派閥の首魁は、お恥ずかしながら私の後継」

「と、言うと聖女ですか? 当代の?」

「いえ、先代ですね。私から聖女を引き継ぎ、また当代へと聖女を引き渡した者。先代聖女です」

 

 うわぁ、まさかの聖女経験者による企みかよ。内ゲバもいいところじゃーん。

 なんか嫌なことでもあったのか、はたまた本当に神の救済とやらに縋っているのか。あるいは何かしら、別の目的がある野心ゆえなのか。どれにしたってあんまり良い予感のしない話ではある。

 呆れも顕に、俺は呟いた。

 

「そんな方がまた、どうして神降ろしなんてことを?」

「理由は分かりません。あの子は、才覚も美貌もあり、なおかつ人格面でもこれ以上ない優しい子だったのに。アンドヴァリ……なぜ、なぜ過激派などの神輿に成り果てたのか……」

「当代の聖女さんは、そのことはご存知なんですかね」

「もちろん知っています。未だ詳細の見えない神降ろし計画についての情報収集と、過激派の表立った行動を抑えるのに今のところ、奔走していますが。どうにも司教クラスの中にも賛同者がいるようで、中々尻尾を掴めていないのが現状です」

 

 悔しげにそう言う神谷さん。その、先代聖女アンドヴァリとやらの画策は全貌を明らかにしていないようだ。

 うーむ、と考える。正直、俺がなにか手出しする話じゃないんだよな。この世のことはこの世が収めるべきであって、システム側が手出しするレベルの話では今のところ、ないんだよね。

 

 そもそも、概念存在は知的生命体とは切っても切れない関係にある。互いに特効を持つってのが一番近い表現かな、概念存在は知的生命体にとって畏敬の対象だし、知的生命体は概念存在にとって生命線でもあるし。

 ここにシステム側の存在が下手な手出しをするのは、因果を基底とするこの世の理に明確に歪を生じさせてしまうだろうし、そうなるとやってることが邪悪なる思念と大差なくなる。

 

 人格を持ったシステム側が今ここにいるってのが、世界にとって特大のイレギュラーだというのは忘れちゃいけない事実なのだ。

 そこを踏まえると俺としてはやはり、できればこういうのは人間たちの手で解決してほしいんだけどなあ〜。と、そう思ったりする。

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