攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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息子に受け継がれなかったコミュニケーションちから

 二次会に参加する者はそのまま連れ立って居酒屋になだれ込む予定らしかったが、そうでない者も、基本的には帰宅ルートが割と一緒ゆえ、途中までは集団で動くことになる。

 涼んでいた湖岸前広場で、ぼちぼちと一旦解散って感じの空気が漂う。自然とグループは、まだ食うぞまだ飲むぞな二次会組と、もう帰るぞもう寝るぞな帰宅組とに分かれていた。

 

 具体的には父ちゃん、マリーさん、神谷さん、サン・スーンさん。リンちゃんに長老さん、ベナウィさん。そしてソフィアさんにアンジェさんにエリーさんが飲み会に行き。

 それ以外の山形家、リーベ、香苗さん、望月さんご一家、ハオランさんにランレイさん、ベナウィさんのご家族さんが帰宅組だ。

 

「山形さん、あなたは面白い人だ! 極東の地でここまで気の合う友人に出会えるとは、まったく縁とは不思議なものだな!」

「えっそう? なんか嬉しいなぁサン・スーンさんみたいな人にそう言ってもらえちゃったりなんかしちゃったりなんかして! ぬははは!」

「グェンで良いさ日本の友よ! あなたの名前も聞きたいぞ、山形さん!」

「うへへへ! 良いよぉ〜俺はね、山形──」

 

 二次会組の筆頭はまさかまさかのこの二人。うちの大黒柱こと山形パパと、WSO事務総長グェン・サン・スーンさんだ。なんか肩組んで陽気に笑い合っている。

 いや怖ぁ……冗談じゃ済まない。父上よ今、酒の入った頭でテキトーに絡んでいるその御方は国連組織のトップ層の一人でありますよ。

 祝勝会以前に昼間、寿司食ってた時点でそこそこ酒呑んでた親父殿はもうだいぶいい気分になっているけど、相手の身分を知っている素面な俺や山形ママ、山形妹は気が気じゃない。

 母上が苦み走った顔で案じている。

 

「あのバカ、躊躇なくお偉いさんに絡んで……!」

「だ、大丈夫かな父ちゃん。兄ちゃん、あれ大丈夫?」

「ま、まあ大丈夫だろたぶん。サン・スーンさんは素面だし、それでも父ちゃんに絡まれてにこやかってのは、本気で気に入ってるか別の目的があるからだろうし」

 

 不安げな優子ちゃんに思うところを述べる。グェン・サン・スーン、WSOの指導者層である彼は老獪なる政治屋だ。であれば基本、公私問わずその言動すべてが計算づくである可能性は大いにあろう。

 その場合にパンピーな山形家と友誼を持つ目的なんて一つしかない。俺だ。

 

 システム側について知り、その最上位機構たるコマンドプロンプトが山形公平の正体だと知った。政治利用こそヴァールに釘を差されているゆえ自重するとは思うが、それでも敵対せず、なんなら縁を持っておきたいと思うのは、海千山千を経験している人なら考えて然るべき発想ではある。

 そして俺が家族に対して、それなりに愛情を持っているのは彼ほどの人物ならばとうに見抜いているはずで。父ちゃんと親しくして俺との繋がりを得ようと考えているのではないかなと、そういう推測も成り立とうってなわけだった。

 

「私は酒が飲めないが酒飲みの陽気さは好きだ! あなたは実にいい、陽気で、しかし親しみと礼節を決して失うことがなく私にも接してくる。なかなかいないぞ、そんな人は!」

「いやいやグェンさん、あんたも良い人だぜ〜! 友だちだったら普通そうするだろ? なはははは!」

「ははははっ! なんだか気分が昂ってきたよ、呑んでもいないのにな!」

 

 …………あれ、違うな? サン・スーンさん、マジで父ちゃん気に入ってるな? あれ?

 へべれけ寸前の父ちゃんにも負けないくらい陽気なサン・スーンからは、老獪さなどかなぐり捨てた素の人格を感じる。あれが演技だったら役者もいいところだ、政治屋としての顔ですらないじゃないか。

 

「ファファファ! サン・スーンめ、久々に良い面しとるじゃないかえ。政治屋しとるよりか、やっぱりそっちのが万倍いいさね」

「ふふ。なんだか懐かしいですね……もう半世紀も前、私や彼はあんな風に楽しく、笑いながらダンジョン踏破をしていました。多くの仲間たちとともに」

「それが時とともに落ち着きを得て、楽しくなくとも意味のあることに血道を上げるようになり。悪いことじゃないが、私ゃそう言うのが嫌で、こんな年まで刀振るっとったのはあるね」

「先輩もWSOの理事じゃないですか」

「特別扱いのね。半ば名誉職さね、ファファファ!」

 

 高笑いするマリーさんに、神谷さんもにこやかに笑っていた。

 マリーさんが83歳で、さっき聞いたところでは神谷さんやサン・スーンさんが71歳らしいから、ほぼ一回りは年齢が離れていることになる。それでも50年来の知り合いなのだから、お互いにすごく親しいというか、気安い間柄みたいだ。

 

 ともかく、サンスーンさんと父ちゃんに関してはどうも問題なさそう。

 二人仲良しな光景を指して、まあ大丈夫じゃない? って言ってみるんだけど、そこはやはり日頃の行いだからか母ちゃんも優子ちゃんも、まるで疑り深い様子でいた。

 

「心配だわ……下手こいて翌日には黒服が大勢やって来て家族まとめて酷い目に、なんてならないわよね?」

「あわわわ……」

「なるかそんなこと! 相手方にも失礼だろ、普通に!」

 

 この人たち普段、どんなドラマとか漫画とか読んでるんだ?

 発想がブラックすぎるだろ、怖ぁ……

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