攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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伝道師と使徒の友情

 望月さんのお家は商店街の近くらしく、俺の家からもそこまで極端に離れているわけじゃないそうだ。

 なのでしばらくは宥さんたちとも一緒だったわけだけど、駅近くの交差点に差し掛かったあたりでお別れとなる。

 

「私はまだ、皆さんとご一緒しますね。パパとママは、もう帰りますけど」

「そうなんですか? もしかしてこのへんで一人二次会とか?」

「まさか! 伝道師御堂とリーベさんと一緒に、公平様のお家で救世の光のこれからについて夜通しお話するんです」

「そっちのがまさかって感じなんですけど」

 

 人の家でなにをしようとしてるんだ、この人たち。

 リーベまで一緒になっちゃってさあ……いやまあ、あいつあのカルトのマスコットになるとか言ってたもんな、以前。

 ていうか、お母様と優子ちゃんは良いのか? 我が家が怪しげな秘密結社のアジトになろうとしてるんですけど。

 

「ぜーんぜん、良いんじゃない? 別に〜」

「軽ぅ……」

 

 とてつもなく気軽に許可が降りてた。ていうか母ちゃん、結構飲んでるなあ。顔がだいぶ赤い。弱いのに飲みたがるんだよ、この人。

 隣でそんな母ちゃんの手を引いて、介抱みたいなことをしている優子ちゃんも快い感じで香苗さんに、家のアジト化について認めている。

 

「香苗さんに宥さんが家に来てくれるのに、断る理由とかなくない? 兄ちゃんひどくない?」

「いや、まあ……そりゃそうなんだけど」

「ていうかそうなると兄ちゃん、女の人ばかりの中に男一人じゃん。ないとは思うけど変なこと考えちゃだめだよ?」

「考えるわけないだろ!」

 

 たぶん! いや、言われてみるとそうだよ、野郎ときたら俺だけじゃん。

 それ以前によくよく考えてみると、家にすげー美女が二人もやって来るんだよな。なんならリーベもすげー美少女だから、意識するとなんかちょっと、ソワソワしてきそう。

 たしか二人とも、俺の家に来るのは初めてだよな。下手すると俺の部屋とか入ってきちゃうのかな? うわ、緊張してきた!

 

「公平さん、自分の部屋に踏み込まれないかドキドキしてるって顔してますねー」

「きゅー」

「ミッチーにモッチーにかわいいかわいいリーベちゃん! 目も眩むような美女美少女に自室で囲まれるのを想像しちゃって、なにやら期待しちゃったりしてるんですかね〜?」

「きゅ〜?」

「期待なんかしてないよ? 本当だよ?」

 

 アイを抱きながらめっちゃニヤニヤしてからかってくるリーベ。否定はするものの、自分でも分かるくらい目は泳いでるし声は震えているのでなんにも説得力はない。

 くっ……仕方ないじゃないですか! 彼女いない歴15年、それどころか女友だちだって数えるくらいしかいなかった山形公平くん15歳が、夏休み開始早々にこんなシチュエーションに出くわしたら色々あれやこれやドキドキソワソワウフフンアハハンってなるじゃないですか!!

 

「よって俺は悪くない。終了」

「再開ー。まったくもう、年頃の男の子ですねー、公平さんもー」

「きゅーっ」

 

 やれやれ、みたいな感じで肩すくめるリーベ。真似してるのかアイも、首をすくめてもうひと鳴き。君たち仲いいね、泣くぞ。

 

 交差点に進入して、俺たちは一旦立ち止まる。宥さんのご両親とはここでお別れだ。ここからはそう遠くないらしいし、変な事故や事件もないとは思うがなにしろ繁華街、人通りは多く、時刻も21時近いから酔っぱらいもちらほら見かける。

 気を付けて帰ってくださいねと言うと、お二方はもちろんと笑って頷いてくださった。そして静かに微笑み、子どもな俺にも相変わらずの丁寧さで接してくる。

 

「公平くん、すまないが娘がご厄介になるよ。不束者ではあるけれど、私たちの自慢の娘だ。どうか末永くよろしく頼むね」

「は、はあ。いえあの、精々がうちのリビングで話し込むだけだと思うので、そんな大仰にされなくても……」

 

 不束者ですが〜とか、末永く〜とか、やたら聞いてて不安になるワードをお使いになられる宥さんパパに俺は頬を引きつらせて言う。ハチャメチャ大袈裟なんだけどこの人、嘘でしょ?

 なんならママさんもパパさんの隣で、なんかお淑やかに微笑んでるけど訂正する気配もない。ていうか、なんか加えて言ってきたし。

 

「あの子ももう一人前の大人で、また探査者として立派に生きている子です。ですのでどんな道を行こうと、私たちはその先に幸せがあるものと信じ続けます。公平さん、その幸せにはきっと、あなたやあなたに纏わる人々も一緒なのでしょう」

「そ、そうなんですか?」

「そうなんです。ですのでどうか、宥のことをお願いしますね?」

「…………は、はい」

 

 怖ぁ……何がどうなってこうなった。なんかすっかり娘さんのこと、俺に任せる感じの流れになってるし。

 なんなら近くの宥さんも頬を染め、俺を見てくるし。さらに隣の香苗さんが、なにやら後方理解者面して頷いてるし。あんたどういうポジションの人なんだ。

 

「使徒として、救世主様に身も心も委ねるのは当然のこと……使徒望月、いえ使徒宥もついにその領域にまで達しましたね」

「伝道師御堂……」

「香苗と呼んでください。私とあなたは同志であり、友人であり、あるいは先輩後輩であり、はたまた師弟ですらあり……公平くんとともに生きともに歩む、信者同士でもあるのです」

「…………はい! 伝道師、香苗!」

 

 なんか熱い友情……友情? 結んでるぅ〜。

 理解し難く名状もし難い何かを見てしまって複雑な気分のまま、宥さんのご両親と別れた俺たちはそのまま、山形家に向かった。

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