攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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爽やかな夏の朝は狂信者の陰謀がよく似合う

 祝勝会の翌日、早朝。明らかにいつもより早く俺はバッチリ、目を覚ましていた。特になにか、予定があるわけでもないのにだ。

 びっくりするくらい体の調子がいい。気分が高揚している自覚がある。理由? 夏休みだから以外になにかあります?

 そう、つまりは俺ちゃん、テンションが上がりすぎて早起きしちゃったのである。楽しい楽しい夏休みだからね、仕方ないね。

 

『おはよう、公平。子どもみたいなノリの早起きで何より。それでもコマンドプロンプトかい?』

「コマンドプロンプトの前に山形公平だよ。おはよう、邪悪なる思念……いいや、アルマ」

 

 昨日の寝しなに改名を果たした、邪悪なる思念さんことアルマさんの呆れたニュアンスの嫌味を華麗にスルーして、俺はおはようを告げた。

 アルマって名前、気に入ってくれたのかな? 俺のことをアドミニストレータでもコマンドプロンプトでもなく、公平と呼んでくれた。何度も訂正したのに絶対に変えようとしなかった言い方を、アルマと名付けた瞬間から変えたのだ。

 めちゃくちゃ嬉しかったんだね。分かるよーうん。分かる。

 

『妙に腹立つねそれ。まあいいけどさ。嬉しかったのは事実だし』

 

 あっさり認めるアルマ。それが意外で、だけど名付け親として嬉しくてなんとなくにやつく。

 胸元にはアイ。まだ寝ていて、安らかな寝顔がやはり愛らしい。時折俺に鼻先を擦りつけたりしているのが、本能というか野生というかを感じさせてくるなあ。

 

 ともかく、早起きしたらそれはそれでいいことがありそう。昔から三文と言うからね。俺はアイを起こさないよう、ゆっくりと音も立てずに引き離してベッドから立ち上がる。

 時計を見る。5時30分。いや早すぎだろ、浮かれてんのか俺。いや浮かれてるわ、夏休みだもんな。

 軽く背筋を伸ばして、私服に着替える。今日はたしか、梨沙さんはじめクラスメートのみんなとプールだ。ふふふ、プール、いい響きじゃないか? 何はなくともテンション上がるぜ、ふぅー!

 

 SNSを確認してみると、クラス内のグループチャットには複数人が本日のプールに際し、何時にどこ集合かとか楽しみだとか色々書いている。みんな揃ってものの見事に深夜まで会話してるので、ああみんなも浮かれてるんだなってホッコリする。

 ともかく今日は9時には駅前集合だ。そこから電車を使って、湖岸沿いにあるプールの最寄り駅に行き、そこからは徒歩らしい。今日も結構、気温が上がるみたいだし、涼しく遊ぶ前に炎天下を味わうのも乙かもな。因果改変で体感温度弄るのは止めておこう。怪しまれても嫌だしな!

 

 私服に着替えて一階、リビングへ。ドアは開けっぱにしとこう、アイが起きた時、家中を彷徨けるようにね。

 ていうかスキル持ちの気配が三つ、リビングから感じる。なんなら全然元気そうに動いてる。もしかして香苗さんたち、ずっと起きてたんだろうか? 探査者ゆえ徹夜程度どうってことじゃないけど、何をそんなに語ることがあるんだか。

 リビングへ入る。やはり三人、風呂に入ったからか私服でなく客人用のパジャマに身を包み、テーブルにて熱心に話し合いを続けていた。

 

「来月の盆あたりに、探査者と非探査者との交流イベントが近くの大型ショッピングモールで行われます。私も呼ばれていますので、公平くんにも来ていただきたいですね。配信チャンネルの宣伝にもなるかもしれませんし」

「え、そんなのあるんですかー? 楽しそうですねー!」

「たしか……フェイリンさん、マリアベールさん、ベナウィさんは8月いっぱいまでホテルに滞在していると聞いていますし、あの人たちも参加するかもしれませんね」

「ふむ。あの三人が加わるならば、公平くんも来てくださるでしょう。イベントでは許可を取った上で、探査者同士のデモンストレーション的な模擬戦闘も行う予定です。フェイリンさんあたりは、喜々として誘ってくるでしょうね」

「怖ぁ……」

 

 起き抜けにゾッとする話を聞かせないでいただきたい。それリンちゃん、俺と戦う気満々って仮定してません?

 S級の方まで巻き込もうとしている、例の組織の大幹部たちに御神体とやらなはずの俺がびっくりだよ。というかそれ以前に、人の盆の予定を勝手に決めないでほしい。いや、暇だろうけれども!

 

「あ、おはようございます公平くん。お早いですね」

「おはようございます、公平様!」

「公平さん、おはようございますー」

 

 俺に気付いた三人が、にこやかにおはようを告げてくる。徹夜明けの疲れなど微塵も感じさせない、むしろ活力に満ち溢れた笑顔だ。怖い。

 ここに、場合によっては、ヴァールなりソフィアさんなりが加わるんだよな? ……想像するだけで部屋に帰って二度寝したくなってきた。どうにか衝動を堪えて、言う。

 

「おはようございます……徹夜してたんですね?」

「もちろん! 救世の会の今後の活動方針、予定、イベント企画など実に有意義なミーティングでした!」

「そ、そうですか」

 

 爽やかに成果を強調してくる、にっこり笑顔の三人娘。

 美女美少女のそういう顔は、非常に健康に良さそうなんだけど、なんでか精神的に不安な気持ちが沸き起こる、そんな朝のひとときである。

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