攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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リーベちゃんファンクラブ、会員募集中!

 いろいろまずそうな呼び名を言いかけたリーベだが、そのすっとんきょうな言動のおかげで場の空気もなんだか柔らかいものになってきた。

 そうこうしているうちに松田くんと木下さんの他、片岡くんや遠野さんもやってきたわけだが。揃って梨沙さんと香苗さんたちを交互に見て、それから俺に生暖かい視線をよこすのはなんだろう、変な目で見るのやめてもらっていいですか?

 

「我々救世の会は公平様の御威光を示すべく活動していますが、佐山さん的にもっとこうしてほしい、という点はあったりしますか?」

「え……いえ、別に。私もそこまでその、会の活動を見ているわけじゃないですし」

 

 メモ帳片手にアンケート調査みたいな質問を投げかける宥さんに、梨沙さんが困惑しきりに返答した。うん、それ以外にどう答えるんだって感じだよね。

 そもそもあのチャンネル、俺の活躍とやら──概ねダンジョン探査風景だ──を動画配信したり、コメントしたり、吟遊したりしてるのがほとんどだ。それ以上でもそれ以下でもない感じなので、これ以外にどうしてほしい? とか投げかけてもなあ、という気もする。

 ああでも、と梨沙さんが言った。

 

「その、せっかく公平くんについての動画チャンネルなら……公平くん本人にも出てほしいかな、とかは思います。それなら私、毎回だって見るかも」

「…………梨沙さん!?」

「え、いいじゃん。公平くんが直接話したり質問に答えたりしてるの、なんか人気配信者っぽくて面白そうだし」

 

 とんでもないことを言いだした梨沙さん。俺にあのチャンネルの配信に出演しろと? あまつさえ人気配信者みたいに、話をしたり質問に答えたりバラエティ番組の企画みたいなことをして、視聴者のみんなの笑顔とスパチャを集めろと?

 できるわけないじゃん……こちとらシャイニング山形インタビューの一件以来、ワイドショーを見てると変な汗が出てくる時すらあるのに。

 

 もう、テンパってクソみたいなジョークを飛ばしてインタビュワーすら凍り付かせるのは嫌だ。あのあとクラスメートからめちゃくちゃからかわれたのもあり、俺のハートはズタボロだ。

 あの時、俺を庇って怒ってくれたはずの梨沙さんがなんで、どうしてそんなこと言うの? 哀しい目で彼女を見ると、なんでか優しい目でこちらを見てきた。

 

「それにさ。公平くんがたくさんの人に認められて、好かれるのは嬉しいから。公平くんはもっと、自分のことを世の中にアピールしてもいいと思うよ?」

「そ、そうかなあ」

「せっかく救世の会? みたいなファンクラブだってあるんだし。ガンガン行っちゃえばいいんだよ」

「ファンクラブ……?」

 

 え。梨沙さんの目にはファンクラブに映ってるのか、この狂信者集団のことが。

 まさかの表現に俺はもちろん、香苗さんや宥さんもキョトンとしている。唯一リーベくらいか、目を輝かせてはしゃぎ始めたのは。

 

「ファンクラブ!! そーですよファンクラブほしいですねリーベちゃんもー! 救世の会公式アイドル、かわいいかわいいリーベちゃんファンクラブ略してえーっと、CCLFC!」

「C……キュートのCか? いる? それ」

「いーりーまーすー! もう、わかってませんね公平さんはー!」

 

 普通にリーベファンクラブ、略してLFCでいいじゃんって思ったんだが、ダメ出しを食らってしまった。CCまで付けると長いしくどいと思うんだけどなあ。

 ともあれなんらかの着想を得たリーベが、梨沙さんに嬉々として絡んでいく。

 

「サッチー、もとい梨沙ちゃーん! とってもとーってもナイスなアイディアありがとー! リーベちゃん、これでトップアイドルも見えてきたって感じー!?」

「え、あ、そ、そうです、か? リーベさん、アイドルになりたいんですね」

「そうでーす! 救世の会のアイドルを皮切りに、いずれは世界も手中に納めるのです! かわいいかわいいリーベちゃんのご活躍、どうぞ梨沙ちゃんもご覧くださいー!」

 

 高らかに野望を語るリーベだけど、その皮切りにしようとしている所属団体がすでにスキャンダルの塊みたいなもんだと思うんだが、そこんところはどうなんだろう?

 アイドル活動は頑張ればいいし応援もするんだけど、ついそんなことばかりが気になる俺。しかし梨沙さんはさすが心優しく、素直な気持ちでそんなリーベを応援しているみたいだった。

 

「私も応援してます、頑張ってください。公平くんが自分の相棒だって言うほどの人なら、トップアイドルにだって必ずなれますよ」

「梨沙ちゃん……! なんていい子、友だちになりましょう!! さん付けなんて水臭い呼び方でなくていいです、かわいいかわいいリーベちゃんって呼んでくださいっ!!」

「え、え……あ、はい。かわいいかわいいリーベちゃん?」

「敬語禁止ー!」

「う、うん!」

 

 感激したリーベが、恐ろしい勢いで梨沙さんとの距離を詰めていく。同性なのもあろうがさすがはリーベ、俺にはこんなテンションでのコミュニケーションは真似できそうにない。

 あっという間に友だちになっちゃったリーベと梨沙さんを見て、これがリア充陽キャかぁ……と俺はどこか、憧憬の眼差しを禁じ得なかった。

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