攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
俺の知り合い同士が新たな友情を結んだことはさておき、香苗さんや宥さん、リーベは予定どおり組合本部へ向かった。香苗さんとリーベのアドバイスを得ながら、宥さんが探査を行うのだ。
一方で俺の方も予定に沿って、梨沙さんはじめクラスメートのみんなと電車に乗り、湖岸沿いのプールに遊びに行こうとしていた。
「にしても山形すげーよなあ。あんな美人さんに囲まれて」
ローカル線の駅構内。自販機で買ったジュースを飲みつつ、松田くんがそんなことを言った。
茹だるような暑さとは今のこの状況のことで、照り付ける日光で線路の先には蜃気楼なんかできちゃってるほどだ。みんな手を団扇のように扇ぎ、少しでも涼を得ようと苦心している。
今は因果改変していないため、しっかり暑さを感じている俺も似たような感じで服の襟元を掴み、パタパタ揺らして風を起こしている。
電車を待つ間、そんな感じで暑さを凌ぎながら俺は松田くんに答えた。
「あー……自分でも思うよ。並んで歩いてても、不釣り合い感すごいもん」
「でも三人ともお前の狂信者なんだろ? 羨ましいような、おっかないような……微妙な気持ちだわ」
「リーベは若干、違うけどね。実際時々だけど、怖ぁ……ってなる」
時々っていうか頻繁にだけど、まあ時々ってくらいに抑えておく。香苗さんも宥さんも美女なのは間違いないんだけど、何分狂信者ムーヴがあまりにあんまりすぎる。
だけどまあ、松田くんからすれば羨ましいことこの上ないんだろう。俺だって松田くんの立場だったとして、たぶんめちゃくちゃ羨ましいなあ〜って思ってたに違いないし。
苦笑いしつつやんわりと続ける。
「でも、あの三人には春頃からずっと、ダンジョン探査とかで助けてもらってるから。女性だとか美人だとかに関係なく、俺にとって大切な探査者仲間さんだよ」
「そっか……探査者なんだもんな、山形」
「ダンジョンのことになると顔つき変わるもんね、山形くん」
「えっ」
感心したような声音で木下さんが言うんだが、俺としては寝耳に水な話だ。えっ、俺ってダンジョンのことになると顔つき変わるの? 怖くないそれ?
困惑する俺に、隣に寄り添う感じで立つ梨沙さんが説明してくれた。
「前、商店街で変な女の子……男の子? に出くわしたでしょ。その時、公平くんの表情とか雰囲気とか、いつもと全然違ったからさ」
「……ああ、あの時ね」
たしか、はじめて首都に行く直前だったかな? 今みたいに友だちと放課後、遊んでいた時に邪悪なる思念……アルマが突然、姿を見せたのだ。
あの時は当時、受肉前で脳内に住み着いていたリーベともども盛大に驚いたもんだ。それと同時にみんなの前で、戦闘モードに入っちゃってた覚えもあるけど、まさかそれで?
「その時にみんなわかったんだよ。公平くんがダンジョンに潜る時ってあんな顔で、あんな感じで誰かのために戦ってるんだなって」
「いや、それは……」
「公平くんからしたらそうでもないのかもしれなくても、私らからしたらそう見えたんだよ」
「そうそう。山形、すげー怖かったもん」
「ピリついてたっていうか、刺すような空気がこっちにまで漂ってきてさ。その場に居合わせた人みんな、ビックリしてたし」
「そ、そっかあ……」
松田くん、木下さんまでそんなことを言ってくる。ああ、片岡くん、遠野さんも頷いているよ。
そうか、やっぱりみんなを怖がらせちゃってたかぁ……分かりきっていたことだけど申しわけなく思う。日常の、楽しく遊ぼうとしていた場面でいきなり修羅場が発生したんだ、ビックリしないわけがないんだ。
気まずくて頭をかく。梨沙さんはそんな俺に目聡く気付いて、袖をギュッと握ってきた。
「あの、変に自分を責めないでね……? あの子が公平くんにとって敵、っていうのかな。止めなきゃいけない子で、私たちみんなを護るためにああいうふうになったんだって、分かるから」
「……ありがとう」
「それにね? カッコよかったよ」
そう言って、俺に微笑む。えっ、格好よかった?
ちょっぴり跳ねる鼓動。暑さゆえかそれ以外ゆえか頬を赤く染め、彼女は少し早口で続ける。
「なんか男の人なんだなって。狼人間の時も感じたけど逞しくて強くて優しいっていうか、探査者として慣れてきたからかな? あの変な子に見せた顔のほうがもっと、深みがあったっていうか」
「そ、そう? そんなだったの、俺?」
「うん! だからさ、そんな気にしないでね?」
自分でも照れくさいことを言った自覚があるんだろう、梨沙さんはそこまで捲し立て、そっと俺から離れてそっぽを向いて線路の先を見た。
な、なんだか甘酸っぱい気がするぞ。松田くんたちもなんか、ニヤニヤして生暖かい目で俺を見てくるし。なんなら遠野さんが、にっこり笑って言ってくる。
「ほんと、いい子よね梨沙って! 山形くん、こんないい子を泣かせるなよ〜?」
「も、もちろん」
「羨ましい野郎だな、このヤロー!」
片岡くんが肘鉄砲を何発か打ち、俺をからかってくる。
怖ぁ……梨沙さんを哀しませるつもりは絶対にないけど、気をつけないとね。