攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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客観的に見たら神童、主観的に見たら山形

 結局遠野さんのステーキ弁当含め、俺のポケットマネーで購入したわけだが。

 道すがらにある湖岸沿いの公園のベンチに座り、休憩がてら俺たちは運動前の腹ごしらえを決め込んでいた。

 

「一人、ガチなのがいるけどな」

「いやー、ははは。美味しいよこれ?」

「美味しいのはわかりきってるよ、ステーキだぞ」

 

 ステーキ弁当をモリモリ食べる、意外と健啖家な遠野さんに、呆れた感じで松田くんが反応した。

 まあ、カロリー表記とか見るに肉体労働をされている方や、ガチ目な運動部に入ってる学生さんなんかをメインターゲットにしてそうな弁当だ。それをかなりの勢いで食べ進めているんだから、朝から胃もたれしそうな光景ではあるかもね。

 ふと気になって聞いてみる。

 

「遠野さん、運動部だったりするっけ? 聞いたことないけど」

「ん? んーん、私パソコン部。運動なんて全然してないよ、普段」

 

 マジかよ、それでその量をその勢いで食っちゃうのか。正直、絶対に口には出せないけど太らない? って心配が先にくる。まあ遠野さんはむしろ痩せすぎてるくらいな気がするので、もうちょい肉を付けてもいいとは思うけど。

 むしろ、と遠野さんが言ってきた。

 

「山形くんこそ、なんか部活動とかしないの?」

「え。俺?」

「うん。同じ探査者でも、関口くんは軽音楽部入って、バンド組んでたりしてるし。山形くんはどうなのかなーって」

 

 なにそれ。初耳なんだけど。え、関口くん軽音楽部とか入ってんの? バンドって陽キャじゃん、リア充の極みじゃん。ていうかギターとかベースとか弾くのかな。何でもできるな、彼。

 まさかの情報に変に感心しながら、俺は部活動について答える。ぶっちゃけ、全然考えもしてなかったんだよなあ。

 

「探査活動があるからね。関口くんは義務付けられてる最低限の頻度で探査してるから、その分そういう活動をしてるんだと思うんだけど……俺はまあ、それなりにダンジョン探査をしたいかなって思うから」

「そうなんだ……」

「うん……でも、そうだな。たしかに、部活かぁ」

 

 正直、探査者になった時点でそのへんのことはすっかり忘れていた。

 探査者ゆえスポーツ系に関しては公式大会に参加できない──レベルやスキルの存在ゆえ、冗談抜きで勝負にならず公平性もへったくれもないからだ──し、先生方も探査者活動に非常に好意的というか、無理せず頑張れよ! 的な態度でいてくれるので、そっちに注力できているからね。

 

 それこそ関口くんみたく軽音楽部とか、憧れはある。まあ俺ちゃん音痴だから入るわけないんですけど。

 ともあれ、そういえばそんなのもあったな、ってのが本音のところだ。思えば毎日、野球部の人たちやサッカー部の人たちがグラウンドで練習しまくってるのに、興味がないとこんなに視界に入らないんもんなんだなあ。

 

「ていうか、遠野さん以外のみんなも部活を?」

「してたらこんなにみんなと遊んでたりしないだろ」

「帰宅部って部活があるなら、そこに所属してるかもね」 

 

 なるほど。たしかに、部活動してると放課後に友だちと遊びに行けないってのはあるよね。部活にしろ友人たちとの交流にしろ、学園生活の彩りには違いないってわけか。

 ふーむ……

 

「今はさしあたってこんな感じで、みんなと遊びつつダンジョン潜って、って生活でいきたいかな。探査者活動をおざなりにするのは、個人的にはあんまりしたくないし」

「そうだよな。特に山形は探査者でもかなりすげー、エリートってか天才なんだろ? さっきの御堂さんや望月さんもあんなんだし、あの関口くんも認めてるし」

「エリートて。天才て」

 

 およそ俺の人生において、俺に対して与えられることのなかった評価が急に出てきた。暗いとか好きなことには早口になりそうとか、そういうのは結構言われてきたんだけどね思い出してきて辛くなってくる。

 ああでも、たしかに探査者としてはそう見られて不思議じゃないわな。客観的に見たら俺ちゃん、慣例を無視して3ヶ月してF級からえーっと、たしかC級だったな。にまでのし上がってるわけで。

 めちゃくちゃ異例な待遇だし、麒麟児みたいに言われても仕方ないのか。香苗さんや宥さんのアレはノーコメントで。

 

「関口はともかく、御堂さんと望月さんに、さっきのリーベさん……かわいいかわいいリーベちゃん」

「かわいいかわいいはいいよ、面倒でしょ。普通にリーベでいいって」

「そうかな? まあ、そのリーベちゃんも公平くんのファンクラブの人だし。配信チャンネルも、もう100万人超えたって話だし」

「100万……そ、そうなんだ」

 

 怖ぁ……100万人て。冷やかしやとりあえずの登録、なにより香苗さんのファンによるものもそれ相応の割合いるだろうけど、それを差っ引いてもとんでもない数字だ。

 ちょっと本当に、洒落にならない規模になってきたなあ。

 

「山形、遠くに行っちまったな……さすが救世主」

 

 しみじみ言うなよ松田くん! 俺とは直接は関係ない話だし!

 無関係! 無関係ゾーンです!!

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