【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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システムの側にいる者。

 なんやかんや、スリーピング山形はキャンセルしてリーベの話を聞くことになってしまった。

 いやあ……さすがにシステムさん周りの謎に、いくらかでも迫れるこの機会を逃して昼寝ぶっかますのは、ちょっとまずいかなって。それに寝ようとしてもリーベの声で脳内がうるさかったしね。

 

『おお、いえシステムさんのことについては教えてあげられませんってばー! かわいいかわいいリーベちゃんの個人情報をくまなく教えてあげますからー、それで許して?』

「おお……いなる存在様、か? そう言えば狼人間を倒した直後にも言ってたな。システムさん、マジで神様とかそういうアレなのか?」

『許してくださいってばー!許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許してー!』

 

 頭の中に悲鳴が響く。うるさい。勘弁してほしいのはこっちの方だ、これはたまらん!

 甲高い少女の声で、絶え間なく騒いで抗議される。キンキンと脳内で反響するもんだから、気分は最悪だ。

 わかった! わかったから! もうシステムさん周りのことは詮索しないから、勘弁してくれ!

 

『……申し訳ないとは思ってますよ? でも、これは事情が事情ですから。あなたが本当に、アドミニストレータ用のスキルを所持するにふさわしい方なのか、たしかめるまではお教えできません』

 

 しょんぼりテンションの声。どうやらリーベなり罪悪感というか、それこそ申し訳なさは抱いているようだが、さて。

 ……アドミニストレータ用のスキル? なんじゃそりゃ。

 今、他ならぬリーベの口から出た不穏な単語に引っかかりを覚えていると、彼女は意外にも、そこに対しては応じてきた。

 

『アドミニストレータ。ダンジョンを管理、維持するのが役割だった存在のことですね』

「…………は?」

『あなたが先の戦いで獲得したスキル《誰もが安らげる世界のために》は、本来ならばあなた方オペレータには与えられることがない、管理側のスキルなのです』

「いやいやいやいや、ちょちょちょっと待って」

 

 とてつもない勢いで、とてつもない裏話を聞かされている気がする。

 ダンジョンの管理者? アドミニストレータと、オペレータ? オペレータって探査者のことか? システムさん側では俺たちを、そういう風に呼称しているのか?

 

『ちなみにアドミニストレータ用のスキルはオペレータ用のスキルと異なり、専用のコマンドプロンプトから呼び出して都度、そのスキルの発動承認を得なければいけません。今はまだ、公平さんがコマンドプロンプトへの接続権を持たないため、リーベちゃんが代理で処理を行うわけなんですねー!』

「…………」

『いやー、できる精霊知能はやっぱりこうでなくっちゃですねー! 意外といないんですよ? コマンドプロンプトで呼び出せるアドミニストレータ用スキルを把握して、承認まで申請できる精霊知能なんて! リーベちゃんたらすごい! 天才!』

「………………こ、これ、は」

 

 これは……俺だけで留めといちゃ駄目な情報だ!

 下手しなくても世界が、大ダンジョン時代が激動する。あ、いや今は無理か、リーベが俺以外に存在を認識できる状態じゃない。

 だけどもし、リーベがこの世界のすべての人たちに認識できるようになり、今しがた洪水のように垂れ流してきた話を、したとしたら。

 間違いない、世界中大騒ぎだ。少なくとも探査者界隈は天地ひっくり返るってなもんだろう。

 

 たしか、リーベが姿を表せるようになるのは、俺のレベル300くらいがラインとか何とか言ってたな。10関口くんほどの強さに到達しないと、この、世界の秘密につながる重要存在は、人々の前に姿を表さないのか。

 リーベを、この大ダンジョン時代に出現させる。

 そしてダンジョンの裏に潜む、超常なる者たちを知らしめることは、探査者としてしなくちゃいけないこと、なんじゃないか?

 

『いやあ……別に知ったところで、オペレータ側でどうにかできる話じゃないですし。余計な混乱をもたらしかねないくらいなんですから、黙っといて良くないかなーってリーベちゃん、思うんですけど』

「……だったら何で、俺にはこうやって声をかけてきたんだよ。管理者側、アドミニストレータ用のスキルなんて手渡してきてまで」

『それを知るには、まだまだ公平さんはレベルが低いですねー』

 

 まったくリーベたちの意図がわからないことに、疑問を呈する俺に。

 いたずらげに、けれどどこか楽しげに、慈しむように。大切なものを扱うような声音で、リーベは語りかけてくる。

 

『極一部とはいえ、権限どころか認識すらない状態でコマンドプロンプトに干渉してみせた。あなたの素質、才能はリーベちゃんごときには計り知れないものがあります』

「俺が、干渉……?」

『ですがどうか、焦らずに。ゆっくりと、日常生活を楽しんで生きてください。そしてその上で、ダンジョンを攻略していくんです。大丈夫、時間ならものすごーく余裕です』

 

 そうすることが、あなたにとって、私たちにとって、世界にとって。

 何よりも良いことなのですから。

 

 そう、伝えてくる精霊知能に。混乱しつつも俺は、ただ頷く他なかった。


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