攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「ど、どうもはじめまして……り、いえ佐山さん、松田くん、遠野さんと同じクラスの山形です。よろしく……」
迸るリア充陽キャパリピスパークに素粒子まで分解されそうな心地で、それでも俺は、どうにか自己紹介まで至ることができた。
それというのもやはり、梨沙さんが隣で気遣わしげな視線を送ってくるからだろう。この子を心配させるまいと、ここ最近ではアルマ相手に最終決戦をした時以来ってほどの覚悟を決めて臨んだよ。
『君コマンドプロンプトだろ、なに被創造物にビビり倒してるんだ……気に入らないなら因果ごとこの世からなかったことにするくらいしろよ』
するわけねーだろそんなこと! お前本気で最低だぞそれは!!
アルマの傍若無人極まる言葉に本気で叱りつける。こいつ、ワールドプロセッサだったモノとしてそれは言っちゃだめだってわかるだろ……いや、わからないから暴挙に出たのか。
命の、魂の価値を理解しないから、ここまで簡単に因果ごと消し去ってしまえ、などとおぞましいことを口にしてしまえるのだ。こいつが今後、永い時をかけて向き合っていくことなんだろう、な。
「公平くん、大丈夫?」
そんな脳内でのやり取りから逡巡は、現実世界においてはほんの数秒といったところだ。それでも数秒は自己紹介後、硬直していたわけなので、梨沙さんが血相を変えて俺を心配して寄り添ってきていた。
いつもの距離感なんだが、お互い素肌を晒している都合上、体が触れ合う感覚がダイレクトに伝わる。その感触に顔を赤らめる俺は、いやいやと笑顔で応えた。
「ごめんごめん。なんでもないよ」
「そう……? 椅子、あるから座ろ? 立ってるよりリラックスできるもんね」
「いや大丈夫。ちょっとボーッとしちゃってただけだし」
母性の塊かよってくらい俺を気遣う梨沙さんが、空いているビーチチェアに俺を促す。いや別に、傍から見てたら数秒ボーッとしていただけで、気分が悪いとか体調不良とかではないからと、そっとお断りを入れる。
そんな様子を見ていた、梨沙さんの中学時代のクラスメイトたちはどこか唖然とした様子だ。俺と彼女を見比べて、声が大きくてひそひそ話にもなってないひそひそ話を繰り広げている。
「え。ちょ……え、梨沙ガチじゃね? 嘘でしょ、高校入って3ヶ月がそこらよ? その、いい人そうではあるけど」
「目がもうマジじゃん〜! うわ、うわ、え、でもちょい地味くない? あんまイケてもないし。いい人そうではあるけど」
「あーでも、よく見りゃ体ムキムキだし。スポーツやってるとかじゃね? いい人そうなのはそれなー」
「…………梨沙ちー」
何がガチだかマジだがわからないけど、とにかく俺と梨沙さんの距離の近さにビックリしているみたいだ。呆然としている男子までいる。驚きすぎだろ!?
いやまあ、そりゃね? クラスでも隅っこの方でスマホポチポチしてるのが癒やし、みたいな俺ちゃんと、クラスのど真ん中でリア充やってるような梨沙さんがこうも近いとビックリしますよ。わかるけどね?
それにしたって驚かれすぎだ、ちょい釈然としない。
俺ですらそう思うのだから、梨沙さんは釈然としないで済まないみたいだ。唇を尖らせて、パリピくんたちに向けて言う。
「……聞こえてんですけど〜。あのね、公平くんは探査者なの!」
「えっ、探査者!?」
「マジで? えっ、すご」
「それも、あの御堂香苗さんとも親しくて、ファンクラブまでできてるような天才なの! 私だって命を救われたことがある、ヒーローなんだから! 地味でもないし、イケてなくもない!!」
そう主張する彼女に、同級生さんたちは感心しつつもバツが悪そうだ。いや聞こえてないつもりだったんかーい。
地味なのはそうだしイケてないのも事実だ。なんにも思うところないから、頼むから取ってつけたようにいい人そうを連呼するのをやめてほしい。何もないほうがまだマシだよ。
それにしても探査者って肩書、やっぱすごいな。四人の俺を見る目があからさまに変わった。挙動不審で自己紹介もろくにできてない陰キャを見る目から、陰キャだけど探査者を見る目になっている。どのみち陰キャです、はい。
何より香苗さんのネームバリューよ。御堂香苗の名が出た途端、一気に四人のテンションが上がった。
「御堂香苗!? 有名人じゃんすごーい!」
「あっ……もしかして、シャイニング山形!? 春先のスタンピードで話題になった、めっちゃ光る人!」
「え? ────うわ、マジだ! シャイニングだ!」
「う……は、はい。い、一応そのシャイニングですね、はい」
そこから連鎖的に、まるで蓮根を収穫するようにズルズルと、探査者としての俺が気づかれていく。
ドヤ顔でも浮かべて、なんなら実際に光るくらいするべきなだろうが……例のインタビュー以降、シャイニング山形は個人的にトラウマを想起させる。
スゥーーー、と息を深く吸う。もう完全にシャイニング山形で周知されてしまっている現実が割とつらみある。
答えないわけにもいかないのでそうです私がシャイニングですと認めると、彼ら彼女らはさらに盛り上がってしまった。