攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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宗教行事:ダンジョン探査

 関口くんとお菓子トリオ──チョコ、アメ、ガムだからね──の三人は、彼らもダンジョン探査をした帰りということで受付に行った。

 新規探査者試験の最終日ということで、俺にとっても懐かしいような記憶に新しいような、初心者用ダンジョンに挑んできたんだね。つまりは彼女らは正真正銘、探査者としての第一歩を踏み出したわけだ。

 

「はじめての後輩、うまく探査者として成長してくれるといいですね、公平くん」

「そうですね……」

 

 香苗さんに応えつつも、トリオの背姿を見る。普通に一般人の背中と変わらないんだが、俺も3ヶ月前はあんなんだったんだろうな。

 いや、今も大差ないかもしらんけど。けれど3ヶ月前と比較して、俺も少しは探査者然としてきたとは思う。

 

 いろいろあった。ありすぎた。いやマジで、思い返すだに怖ぁ……ってなるくらい、イベント盛り沢山すぎる3ヶ月だった。

 スキルを得て探査者になったってだけでも腹いっぱいなのに、システムさんだアドミニストレータだ精霊知能だ邪悪なる思念だ、挙句の果てに俺自身がコマンドプロンプトでしたーときた。

 

 それを思えば彼女たちはそこまで、突飛かつジェットコースターかバンジージャンプかみたいな探査者人生は歩まないとは思うけど。

 それでも一抹の願いを込めて、俺はこう返していた。

 

「まあ、堅実な探査者になってもらえると嬉しいですよね」

「公平さん、堅実とはなんの関わりもないぶっ飛び探査者ですもんねー。自分のようにはなるな、って反面教師的なアレですかー」

「お笑いマスコットォ!!」

「んぎゃー!?」

 

 事実だがお前に言われると無性に許せん! 軽口叩きのリーベにヘッドロックして俺は叫んだ。

 ぶっ飛んだ探査者に仕立て上げたのはどこのどいつだ! アドミニストレータ計画を立ち上げたお前と、実行に移したワールドプロセッサだろうが!!

 まあまあ、とアンジェさんが取り成す。

 

「じゃれ合いはほどほどにして、そろそろ行こうよダンジョン! なんか大規模なんでしょ、ヴァールさん」

「ん、ああ。この面子だ、せっかくなのでA級ダンジョンを受けてみた」

 

 ヴァールが資料を見せてくる。A級ダンジョンって……俺なんかB級ダンジョンすらまともに探査したことがないのに、ずいぶんと攻めてくるなあ。

 そもそも俺はC級だしリーベなんてF級じゃん、いいのかなあ……いいんだろうなあ。どうせここでもヴァールの鶴の一声が発動したんだろう。

 

「階層は10、通路と部屋が続くスタンダードな構造と思われ、推定部屋数は50程度。A級としては最小規模だが、アンジェリーナとランレイの腕試しでもあるからな。この程度が妥当だろう」

「深すぎず多すぎず、絶妙なラインのダンジョンを見つけましたね、ヴァールさん」

「上等! へへ、腕が鳴るわねー!」

「……50……50!? え、ごじゅうっ!?」

 

 ヴァール、香苗さん、アンジェさんとあまりにスムーズにやり取りするから、思わずスルーしかけた。

 ちょっと待ってくれお姉様方、地下10階に部屋数50って何それ。えっ、規模違う……急に今まで潜ってきたダンジョンの倍以上の規模のものをお出しされてしまって混乱している。

 かつては俺の脳内でともに探査を繰り返していた相棒、リーベも同じ思いのようだ。目を白黒させて、叫んでいる。

 

「なんですかその数、嘘でしょー!?」

「嘘なものか……と、ああそうか。山形公平と後釜は、A級ダンジョンに潜った経験がないのか、もしかすると」

「ええ、ありませんね。公平くんはこの3ヶ月強で実にB級ダンジョン3回C級ダンジョン40回D級ダンジョン51回E級ダンジョン86回F級ダンジョンを24回踏破しています合計204回つまりは平均して一月70回近くほぼ毎日2回以上はダンジョン探査を行っていることになりますがとはいえ公平くんも学生生活から私生活までありますから休日も多少は入れているため実際のところは2日3日に一日3回から多くて5回ダンジョン探査をしてきましたねちなみにこれは一般的な探査者の一ヶ月平均ダンジョン探査数20回と比較しても相当に多く公平くんがいかに探査者業に精力的に取り組んでいるのか救世主として人々に救いをもたらすことに尽力されているのかを示す一例として有用なのではないでしょうか」

「!? そっ……そ、そう、か」

「怖ぁ……」

「怖ぁ……」

 

 何がスイッチだったのか、突然信仰をキメだした香苗さんにヴァールはビックリ俺はドン引き、なんなら隣のリーベもドン引きだ。思わず二人揃って、怖ぁと鳴いてしまった。

 というか、なんで俺のこれまでの探査回数を空で言えんの? なんで主張できちゃうほどの持論持ってんの? そもそもなんで、そんな主張できちゃうの? 疑問は尽きない。

 

 そしてそんな俺より驚いているのは、あまりに唐突に狂気の世界が現出したことに、もはや言葉もないアンジェさんとランレイさんだ。美しいお顔を盛大に困惑と恐怖に染め上げ、彼女らはついこの間までA級探査者の頂点だった女性を見ていた。

 

「…………こ、こないだもそうだったけど、嘘でしょ。"虹の架け橋"が、こんな」

「く、狂ってるぅ……我がライバルが、年下の男の子にドハマリして狂っちゃったぁ……」

「狂ったとはなんですか失敬な! ちょうどいい、ダンジョンの道中、あなたがたを揃って伝道して差し上げましょう!!」

「やめてください香苗さん、ダンジョン探査をなんらかの宗教行事にしないで!?」

 

 アンジェさんとランレイさんにもしものことがあったら、マリーさんとリンちゃんに合わす顔がない!

 なぜかモンスターより香苗さんのほうにそんな悲壮なことを思わされてしまった、俺ちゃんだった。




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