攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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これぞS級狂信者

 ダンジョンに入ってすぐ、香苗さんがスキルを発動した。

 

「《光魔導》──プリズムコール・ソーラーレイ」

 

 呟くと同時に彼女の掌に、小さな虹が架かる。そしてそこから、真っ暗だったダンジョン内を、遥か彼方まで照らす光が放たれた。

 眩しすぎず、目にも負担が少ない柔らかな光量。だというのに遠くまで見渡せるほどに強い光。

 アンジェさんとランレイさん、そしてヴァールまでもが驚きも顕に反応した。

 

「攻撃がメインの魔導系で、ここまで繊細な光源を生み出せるの!?」

「す、すごい……! 知り合いに魔導系スキルを持ってる人は何人かいるけど、こ、こんなことできる人、一人もいないです!」

「さすがS級に成り上がるだけはある……本来想定されている用途すら超えて、新たなるスキルの使い道を開拓するか」

 

 ものすごい称賛ぶりだが実際、俺もめちゃくちゃビックリしている。えっ、《光魔導》ってこんなことできたっけ?

 この手の自然現象を発生させるスキルは、大きく分けて魔導系と魔法系とに分かれている。魔導系は攻撃、というか戦闘用に特化していて、より汎用性の高いのは魔法系だったりするんだけど……魔導系で魔法系スキルの再現をした、のか?

 香苗さんは会心の笑みを浮かべて、俺たちに説明してくれた。

 

「《光魔導》をより便利に、サポートに適した形に応用できないか。そう、以前から考えていろいろ試していましたが……最近になってようやく安定してきました。やってみるものですね」

 

 気軽にそう言うが、《光魔導》をここまで微細に調整するなんて、一体どれだけの努力を重ねてきたんだ?

 神がかった制御能力。天才と、そう呼ぶことすらおこがましく思えるほどの才覚と修練、そして精神力の塊だ。

 

 S級探査者、御堂香苗。知ってはいたけれど改めて、彼女が探査者の中でも最上級の位に達したのだと、俺は強く確信していた。

 

「私の話はこのへんにして、探査を開始しましょう。ダンジョン自体は至って普通の構造ですね。調査どおりのスタンダードスタイルといったところですか」

 

 香苗さんの号令。さっそくS級らしい風格を漂わせてのその言葉に、俺たちは釣られて虹の光に照らされるダンジョンを見た。

 パッと見、これまで経験してきたダンジョンと変わらず土塊の床と壁が続く道だ。おそらくだが、進んでいくと部屋に出てそこにはモンスターがいるんだろう。

 

 周囲を見回してふむ、とヴァールが言う。

 

「調査どおりのスタンダードな構造のようだな。空間型や迷宮型でないなら、探査の工程自体はB級までと変わるまい」

「空間? 迷宮?」

「A級以上のダンジョンによく見られる構造だ。というか、それらの構造だと推測された時点でそのダンジョンの難易度はA級以上で確定される」

 

 よくわからない俺に、彼女は説明してくれた。

 B級までのダンジョンは通路と部屋が並ぶ、スタンダードと呼ばれる内部構造をしている。今までずーっと俺が探査してきて、一般的にダンジョンをイメージする時に思い浮かべるのは大概、このスタンダード構造だったりする。

 

 それに対してA級以上のダンジョンは、スタンダードに加えて様々な種類の構造をしたものが現れる。道とか部屋でない、広大な一つの空間であるタイプや迷路のようなタイプなどだ。

 スタンダードスタイルに比べて探査難度が高いため、事前調査にて特殊な構造だと判明した時点で、生息モンスターの強さに拠らずそのダンジョンはA級以上として扱われるらしかった。

 

「部屋数や階層の数、モンスターの強さだけが難度の判断基準ではない、というわけだな。慣れない未知のダンジョンは、それだけで危険度が跳ね上がるのだ」

「こないだ、プールに発生した結果周辺情報を読み込んで水中ダンジョンになってたやつもA級だったな……」

「そ、その節は大変お世話になりました……」

「? 公平くん、何かあったのですか?」

 

 クラスメイトとプールに行った時にたまたま出くわした、プールダンジョンとシェン姉妹。成り行きから、彼女らの探査に協力──と言って、外側から結界を張るだけの簡単な仕事ではあったが──したのだが、香苗さんはその時その場にいなかったからな。

 

 これこれこういうウンタラカンタラさよならさんかくまたきてしかく、と掻い摘んでその時のことを説明する。なんか、彼女が沈痛の面持ちで悔しがり始めた。

 さっきまでの威厳どこ行ったの、S級探査者様……? 

 

「見たかった……! 公平くんの結界、私もこの目で見たかった!! くうっ!」

「えぇ……? いや、だってその時、香苗さんはリーベと一緒に宥さんの探査をアドバイスに」

「たしかにそちらも大事ですけど公平くんの活躍だって極めて重要でしょう! というか、使徒宥だってそれを知ればおもむろに私にカメラを渡してきたはずです! 間違いなく!!」

「怖ぁ……」

 

 いやまあ、狂信者の会の三人だからたぶん、知ればそんなことになっていたんだろうけれども。あの探査のメインはあくまでシェン姉妹で俺、ほぼ何もしてないんですけど。

 なんならプールサイドに座り込んで、姉妹が帰ってくるまで梨沙さんはじめクラスメイトと会話してたくらいだ。そんなもんですよと言うと、香苗さんは頬を膨らませながらも渋々、納得したみたいだった。

 

「むぅ……! 次からはどうか! そういうご活躍することがあればまず、私に一言下さいね! カメラを持って馳せ参じます!!」

「あー、まあはい。覚えていたら……」

「ランレイさん! 当時の公平くんの様子は後でお聞きします。根掘り葉掘り聞きますのでそのつもりでよろしくおねがいします!!」

「ぴぇぇぇぇぇ……!?」

 

 ああ、可哀想にランレイさんが鳴いている。狂信者の暴走に巻き込まれたも同然だからなあ。

 ああ、隣でアンジェさんも冷や汗をかいているよ。怖ぁ……

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