攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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絶対素材ゲットするマン

 探査者という職業の幅広さを改めて感じる、モンスター食専門探査者などというジャンル。普通に気になるのであとでネットで調べるとして、今はダンジョン探査だな。

 のっそのっそと歩くサソリオオトカゲを見る。侵入者である俺たちには、とっくに気づいているようでたまにチラチラ見てくるが、積極的に襲ってくる様子ではない。

 

「最近、どこのダンジョンでもモンスターが大人しいのよね。前まではこっちに気づくや否や、とりあえず殺してくるような始末だったのに」

「あ、やっぱりそうなんだね。私もなんか、近頃大人しくなってるなあって思ってて」

 

 アンジェさんとランレイさんが首を傾げながらも言う。たしかにこの状況は、とっくにモンスターがこっちに向けて攻撃をしかけてきてもおかしくないものだ。

 認識しているにもかかわらず、まったく動じず無関心なモンスターなんてのは、これまでの常識では考えられないものだろう。

 

 だが、お二人を除くこの場の面々は知っている。これは、これこそが大ダンジョン時代が終わりを告げたことを意味している、決定的な要素なのだ。

 邪悪なる思念による支配から解放されたモンスターたちが、人間を殺すための尖兵でなく、輪廻にまつろわぬだけの単なる動物へと戻ったのだと、この光景が示していた。

 

「同様の報告はすでに山ほど上がってきている。モンスターが以前より温厚に、人間に対して敵対的でなくなったとな……WSOとしては知らぬ存ぜぬを貫いているが、一応調査チームくらいは組んでいるな」

「事情を知る身からすれば、彼らが絶対に真実に到達できないであろうことを、知ってしまっているのは何やら複雑ですね」

「仕方あるまい。システム側の話など間違っても不用意に漏らせるものではないからな」

 

 WSO統括理事として、そのへんの世の流れというか、騒ぎになり始めていることを感知しているヴァールの言葉に、香苗さんが微妙な顔をしている。

 彼女というか、先日の祝勝会前に行った説明会に参加していた面々にとっては、なるほど複雑な心境だろうな。世界最高峰の頭脳が集まって研究やら解明やらに取り組むだろうに、それが導き出すものは基本的には的外れであると、すでに知っているのだから。

 

 システム側についての知識どころか、そもそも世界がシステマチックに構築されていることさえ、普通の人たちにはわかるはずもないことだ。

 それゆえ、その調査チームの研究やら調査やらはどうあがこうとも真実に到達することはない。前提となる知識が致命的に欠けている以上、まず間違いなく正答を導き出せないだろうというのは、予想できることだった。

 

「そうであっても調査の結果は無駄にはなるまい。モンスターの生態研究……人間は時として、システム側であるワタシたちの予想を超えてくるからな」

「ですねー。副産物みたいな形で、また面白い発見をしてくれるかもしれませんー」

「え? なんですかヴァールさん、なんの話?」

 

 ヴァールとリーベがそう締めくくる。人間が何を発見してくるか、どんな結論を導き出すかを結構、楽しみにしてる感じだな、これは。

 一方で、アンジェさんとランレイさんは頭に疑問符を浮かべている。システム側の説明を多少受けているだろうけど、そのへんは知らなかったのか、あるいは聞かされてもちんぷんかんぷんだったのか。

 異世界云々の話なんて、すんなり理解できるほうが稀だよなあ……

 

「こちらの話だ、アンジェリーナ。それよりそら、次の獲物だ、どうする?」

「うーん……私が相手したくもあるんですけどね。皮を欲しがってますし、ランレイが仕留めるべきかなって。ほら、私がやっつけて何もドロップしなかったら、あとで文句言われても困りますし」

「い、いい言わないよ!? アンジェちゃん、ひどい〜!?」

 

 冗談めかして言うアンジェさんに、ランレイさんが仰天して抗議した。涙目で、ポカポカと胸元を叩いている。

 仲いいな、この二人。前から知り合いだったって話だけど、友人ではあるみたいだ。性格はまるで違うけど気の合う相棒って感じかな? バディ物のドラマみたいだ。

 

 さておき。そういうことならここは、俺の出番かな。ランレイさんが皮を欲しがっているようだし、俺は手を挙げて立候補した。

 

「本来の趣旨とは外れますけど、ここは俺がやりますよ。そしたら皮も手に入ります」

「あんたが? ふーん……すごい自信だけど、なんかあるの?」

「ええ。一応、称号効果で俺、倒したモンスターの素材を確定で入手できるんです」

「へえー…………はあっ!?」

「確定っ!?」

 

 俺の言葉に、今度はアンジェさんも仰天した。ランレイさんは言うに及ばず、なんならヴァールすらもは? みたいな顔をしている。

 間違いなく普通の、常識的な反応だ。苦笑いしていると、香苗さんがドヤ顔をして彼女らの前に躍り出た。

 

「そうですとも! 仰られたとおり公平くんには多種多様かつ法外な効果を持つ称号がこれまでいくつも授けられてきました! 今の確定ドロップは称号《次なる時代をもたらす人》の効果でモンスターを倒した時、確定で素材をドロップするものですね! これは3ヶ月前の4月8日に授けられたものでこの日はちょうど公平くんが東クォーツ高校に入学した初日であり初々しくも学生服に身を包んだ公平くんのお姿は大変魅力的で素晴らしく私もつい何枚も写真を撮ってしまったほどでして──」

「ああうん、わかった! わかったわよ香苗!! とりあえず公平なら確実に皮手に入るのね、はいはいわかったわかった!!」

「あわわわわわ御堂香苗が、我がライバルが15歳少年の初々しい姿に興奮して盗撮を繰り返してるぅ…………」

「失敬な! ちゃんと許可は得ています!!」

 

 解説……こそ、たしかにしているが。

 完全にそれを口実に伝動行為に及ぼうとした我らが香苗さんを、アンジェさんは力強くもスルーする。なんともはや、これまでの被伝動者にはないタイプの反応で新鮮に思えてくるのは、俺のほうがかなり毒されている気がするなあ。

 

 そしてランレイさんが、すさまじく人聞きの悪いことを呟いていた。うん、許可は出した覚えがあるから盗撮とはちょっと、違うね。

 いつ何枚も撮られたのかは知らないけどね!

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