攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ミリオンスネーク、カモ~ン!

 地下3階へと降り、相変わらずの通路を進む。

 今は探査を開始してからおよそ1時間半ほどが経過していた。当初の予定に対して少しばかり遅れ気味だが、一番最初の部屋があの大軍勢だったため、こればかりは仕方ないとも言える。

 

「今度大軍勢が出てきたら、御堂が相手するのが一番早いかもね。悠長すぎるのもどうかと思うし」

「ふむ……たしかに、時間をかけすぎて深夜や明け方まで時間が延びるのはよくありませんね。わかりました、状況に応じて私も出張りましょう」

「ワタシもたまには運動してみるか。鎖を錆びらせるのも、あまりよくはないしな」

 

 アンジェさんの言葉に頷いた。ヴァールも呼応したあたり、実はアンジェさんとランレイさんの腕を確認するだけじゃなく、彼女自身も久々に戦ってみたかったのだろうか。

 

 思えばヴァールの実力は意外と読み取れてないんだよね、俺。リンちゃんに真っ向から仕掛けて負けたってのは明確なラインになるだろうけど、その後、事実上一撃でアルマの端末を仕留めてるしなあ。

 端末で、しかも天地開闢結界を無効化していたとはいえ、かつてワールドプロセッサだったモノを倒すなど並大抵ではない。だからこの機会にヴァールの実力を正確に見定められるというのは、なんだか興味深いように思えていた。

 

 話をしながら歩いていると、やがて部屋に出た。これまで同様の規模、広さの部屋で、例によってモンスターが生息している。

 今度のは蛇だ。それも、無数の頭部が極端に太い、岩のような大きさの胴体で繋がっている。神話で言う八俣の大蛇の節操ないバージョンって感じ。

 ええと、こいつは知らないなあ。香苗さんを見ると彼女は落ち着いて、周囲にアナウンスしてくれた。

 

「ミリオンスネーク……ですね。蛇の頭部にも見える無数のあれらは実は触手で、顔というか頭部というか、いわゆる脳にあたる部分は尾の方にあると推測されているモンスターです」

「あれ、全部触手なんですかー!?」

「目とかもあるのに!?」

 

 思わずリーベともども、驚きを口にしてしまう。あのモンスターのあの頭部、頭部っぽいだけの触手なのか……

 見ればそのミリオンスネークとやら、無数の頭部を忙しなくウネウネとくねらせている。集合体恐怖症の人とか、蛇が苦手な人にとっては失神しかねないほどにアレな光景だ。

 

 胴体で繋がっているひとかたまりのモンスターだということを除けば、どれ一つとっても普通に蛇なんだが。それでも本体とも言える脳は尾にあるらしい。

 アンジェさんが肩をすくめて続いて言った。

 

「人間に例えるなら、手の部分に顔の機能も引っ付いているようなものよ。ただ、尻尾を切り離すとそれだけで倒せちゃうから、研究家は尻尾に脳みそがあるのでは? ってなったみたいね」

「ゆえに、弱点さえ知っていれば割合倒しやすい部類のモンスターなのです。毒液を吐いたり一噛みで鉄をも砕いたりとまともに殴り合うのは危険なので、そこが狙い目というわけですね」

「普通に戦うと危ないけど、弱点を突けば簡単に倒せるタイプのモンスターですか……」

 

 なんというか、本当に神話の怪物っぽい感じだな。いろいろ頓知を利かせて封殺する感じのやつ。初めてこのモンスターと対峙した探査者の方は、さぞかし攻略に苦労したんだろうな。

 と、一歩前に踏み出したのはランレイさん。さっきの部屋ではアンジェさん単独での戦いだったから、今度は彼女ということだろう。

 大丈夫だろうか? 失礼かもしれなかったが少しばかり不安になり、俺は香苗さんに尋ねた。

 

「ランレイさん、近接メインだと思うんですけど……どう攻めるんでしょう、あの相手に」

「そう、ですね。普通であればフェイントを織り交ぜ、相手の反応をかき乱した上で一気に背後に回り込み攻める、という感じなのでしょうが……星界拳の遣い手がそんな常識で測れるものでないことは、わかりきっていますし」

「ですよねぇ」

「はわわわわ……! 星界拳士が非常識な輩だと思われてるるるる……!!」

 

 ガタガタと震えて冷や汗をかき、俺と香苗さんの話に反応するランレイさん。この人これで、戦闘が始まったら豹変するんだよね? 怖ぁ……

 ていうか非常識とまではいうつもりないけど、星界拳士が独自の理念と理想と理論を積み重ねてきたのは間違いないし。その結果がリンちゃんだったりランレイさんだったりするんだと思う。

 

 知らぬは本人ばかりなり、なのだろうけれど。星界拳士は今後、間違いなく探査者界隈でも広く知れ渡るんだろうな。

 そんな未来の大物探査者は、息を整え敵を見据え、構え。

 

「じゃ、じゃあ、いきます────ゥウウウウウウウウッ!! ッハアアアアアアアアアア!!」

 

 烈帛と、そう評するに値する気合の叫びをあげ、気配から佇まいから何から何まで、一気に最上級の戦士のそれへと練り上げていった!

 彼女の周辺の空気が、放たれる気合に応じて震える。少なからず熱も発生しているのだろう──ミリオンスネークが、それを察知して振り向いた。

 

「!?」

「天覇ァァァッ!! 星界拳、シェン・ランレイッ!! 蛇とて竜とて構うことなく! 我が豪脚は敵を断ち切るッ!!」

 

 貫くような叫びと名乗り。星界拳シェン・ランレイの、闘いが始まった。

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