攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

361 / 2046
シャイニング山形とサイキックシェン、一体どこで差がついたのか

 文字どおりの生命線を絶たれ、沈みゆく巨体。回避不能の一撃必殺技を受けたミリオンスネークが、光の粒子となって消えていく。

 すさまじいものを見た。俺は言葉を失ったし、他のみんなも、アンジェさん以外は目を見開いて驚愕している。

 技の威力もそうだが、それ以上にその前のセットアップ。すなわちスキル《念動力》の効果に、呆然としていたのだ。

 

「《念動力》……さ、さ? サイキック・ハンド?」

「サイキック・ハンドスマッシュ……ですね。必殺技みたいに叫んでましたが」

「サーイキック・ハンドスマーッシュ! ですかー。へー、へぇー!」

 

 訂正。効果じゃなくて発動時の、ランレイさんの叫びに呆然としてるわ。え、何? なんの叫び?

 サイキック・ハンドスマッシュという技名はわかる。スキルを用いての技は基本、音声認識だからな。まずスキルを宣言して、それから技名を宣言することで初めてそれが発動できるのだ。

 

 だから、それそのものはなんらおかしい話じゃないんだが……ものすごい叫んだよな、あれ。

 熱血バトルアニメ漫画のキャラクターばりに叫んでたよ。うん、ものすごく男前ないい声で、めっちゃ伸びる滑らかなシャウトだった。かっこいい。

 

 元より戦闘時、豹変したランレイさんが叫びまくってるのはわかってたけど、今回のはちょっと段違いだ。

 気合の入りまくった叫びゆえに、ミリオンスネークの巨体をも持ち上げられたのかもしれないので、なんとも言えないけども。正直、いいも悪いもなく純粋にびっくりしたのが本音のところだった。

 

「星界ィィィ拳ッ!! 天ッ覇ァッ!! シェンッ・ラァァァンレイッ!!」

「いよっ! お見事ー!」

 

 敵を見事、打ち倒して名乗りをあげるランレイさん。合わせて喝采をあげるアンジェさん。観客にあたる俺たちは、未だ彼女のサイキック・ハンドスマッシュショックの余韻に目を丸くしているばかりだ。

 それでもどうにか、ヴァールが拍手をした。なんとなく空気に呑まれての、呆然とした拍手だった。

 

「お、お見事……その、いろいろとすごいものを見せてもらった。シェン・ランレイ」

「あのように叫ぶというのは、自らを発奮させる意味合いもあるのでしょうか? いずれにせよ珍しいものを見せていただきました、ランレイさん」

「かーっこいいー! え、すごいヒーローじゃないですかー! リーベちゃんも真似していいですかあれ! えーと、えーと。サーイキックハンドスマーッシュ!!」

 

 ヴァールと香苗さんは困惑しきりなんだが、リーベはめちゃくちゃはしゃいでるな。瞳がキラキラしている。このへん、大人と子どもの差って感じがして微笑ましい。

 いや、こいつ俺やヴァールと同い年だけどね。さっきのランレイさんの真似をして、しきりにドゥクシ! ドゥクシ! と何やら技っぽく動いているあたりマジで子どもだ。

 

「本人の前でそういうことはやめときなさい、リーベくん」

「あっ……はーい」

 

 それ自体はいいんだけどね? あんまり本人の前でするのはどうかと思うの。

 かつてシャイニング山形をさんっざん、マジでさんっざん擦られて、目の前でモノマネされまくった哀しみを背負う俺としては止めざるを得ない。

 

 なんならその場面を脳内に住み着いていた頃のこいつも知っているので、察してくるとともに、同情の視線を寄越しつつ引き下がられた。

 それはそれでつらい。

 

「──あわわわわわわ! お、お聞き苦しい叫びをお聞かせしましたあわわわわわわ!!」

「お、日常モード」

「本当に、驚くくらい変わりますね……」

 

 と、ランレイさんが戻ってきた。さっそく涙目で震え、小動物さながらアンジェさんの背に隠れている。

 直前まであんなにすごいシャウトを披露し、強大な敵をも実質一撃で仕留めていたのに。本当に中身変わってんじゃないのか? と疑ってしまうほどの変わりようだ。

 

 香苗さんなんてさっきから、めっちゃ困惑しまくってるし。この人をここまで戸惑わせるって相当よ? ランレイさんすごいわ。

 労いの言葉を、俺からも投げかける。

 

「お疲れさまです。お見事でした、ランレイさん。《念動力》と星界拳のコラボレーション、とてつもないですね」

「あ、あ、ああありがとうございます! その、あの、嬉しいです!」

「あっはっはっは! 私も初めて見た時にはもうびっくりしたのなんのって!」

 

 アンジェさんの背中越しから、流暢ではないながらも嬉しそうな声が返ってくる。シャイだけど、自分の意見や感情はしっかり伝えてきてくれるんだよね、この人。

 そして明るく大声で笑うのが、彼女の盾になっているアンジェさんだ。誇らしげに楽しげに、謳うように言う。

 

「さっきまで大人しかったのに、言うこともやることもど派手なんだもん! アッという間にファンになっちゃったわよ、この子の!」

「アンジェちゃん……えへ、えへへえへえへ。わ、わ、私もそのぉ……あ、アンジェちゃんのファン、だよぉ〜……!」

「そう? 嬉しいわね、ありがと! 素敵よ、ランレイ!」

 

 笑い合う二人。本当に仲いいんだな、ランレイさんが心を開いている感じがする。アンジェさんほど人懐こいなら、それも頷ける話だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。