攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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組めえっ!!組めっ!!組めーっ!!組めーっ!!

 ヴァールに認められたことが切欠だろうか。その後のダンジョン探査では、アンジェさんとランレイさんの動きがさらに鋭く、研ぎ澄まされたものになっていった。

 成長、変化、進化、進歩。表現としてはいろいろあるのだろう。どのような形であれ、お二人がなんらかの精神的契機を迎えたことで、次なるステージに足を踏み入れつつあるのは、客観的に見ている俺たちからはよくわかることだった。

 

 地下5階層、3つ目の部屋。例によって出てきた敵を瞬殺して、アンジェさんとランレイさんは明朗に笑う。

 

「なんか、すごく調子がいいわ! 動きもスムーズで、思ったとおりに、いえそれ以上に理想の軌道で剣を振るえてる」

「わ、わわ私も……あともう少しで、もうちょっとで壁を壊せる感じです……っ」

 

 近づいてくる進化への予感。未知なる感覚、新たな境地への期待に胸踊らせている、そんな弾んだ調子の声色。

 香苗さんもまた、アンジェさんとランレイさんの先を行く者として笑う。

 

「まさしく予兆ですね。あなたがたは間もなく、もう1段階上の領域に到達するものと思われます」

「ミッチー、わかるんですー?」

「何度か、私も経験したものですからね。揺り戻しといいますか、不調を超えたあと、さらなる高みに到達した感覚といいますか。お二人にもあるのではないですか?」

 

 さすがは長らくA級トップランカーに君臨し、また近々にはS級探査者として昇級するだけはある。香苗さんは今現在、お二人に何が起き、何が待ち受けているのかを冷静に理解していたみたいだ。

 ある程度ふわっとしつつも言語化した感覚を問うと、アンジェさんにもランレイさんにも共感できるもののようで、彼女たちは何度も頷いて答える。

 

「あるある! あれよね、やっぱり!」

「何度かはあ、あります! そっか……ついに私、前に進めるんだぁ」

「大体の上級探査者にはつきものですからね。超えたあとに見える景色、到達した心地は素晴らしいものですが、それまでのスランプは筆舌に尽くしがたい苦痛を伴います。よくがんばったものです、お二人とも」

 

 そう言って微笑む香苗さん。スランプか……やっぱり長いこと一つのことに打ち込んでいると、どうしてもそんなことはあるんだろうな。

 羽化する前の蛹のような時期。大きく飛躍する前に一時、しゃがむ必要があるように。新たな地平を見るためには、その前の辛く苦しい不調さえ、味わうことが必要なんだな。

 

 その辛さ苦しさを乗り越えつつあるお二人が、嬉しそうに応えた。

 

「そう? へへ、ありがと香苗! いやほんと、長かったわ今回のスランプ」

「私もアンジェちゃんも、かれこれ一年近くモヤモヤしてたもんね……このままモヤッとしたのが続いたらどうしようって、思っちゃってたよぉ」

「不調のタイミングまで被るなんて、仲良しさんなんですねー」

 

 リーベが言うように、示し合わせたように不調の時期が重なるなんて、なんとも息の合う話だなあ。おまけに抜け出すタイミングもほぼ同じっぽいと来ている。

 前から知り合いなこともあるけど、コンビって感じなんだよねアンジェさんとランレイさん。普段はそれぞれ、別々に探査業を行っていて拠点とする国も違うんだけど……阿吽の呼吸というか、打てば響くやり取りは長年連れ添った相棒同士を思わせる。

 

「ワタシから見てもお前たちは、いいコンビになりそうだと思う。戦闘スタイルも似通っていて、コンビネーションも取りやすそうだからな」

「コンビですか……そうですね。私も今、組んでるパーティーがちょっと肌に合わないとは思ってますし。ランレイとなら楽しく戦えそうですね」

「わ、わ、私に、相棒!? ず、ずーっと、ずーっと一人で探査してた私に、相棒!?」

「あんた人見知りすぎて、誰とも組もうともしてなかったものね……」

 

 コンビを提案するヴァールに、アンジェさんは案外乗り気だがランレイさんがものすごい動揺している。

 ひたすら一人でダンジョン探査してきたんだろうな。俺とは事情が異なるけど、実質ソロ戦闘専門なことにひどいシンパシーを覚える。人見知りなのは俺だってそうだし、あれ? そう考えると俺とランレイさんは似ている?

 

 ちなみにだが俺は、リンちゃんやランレイさんのお兄さんであるハオランさんとは祝勝会の折、妙に気が合った。揃って陰の者ゆえ、波長が合うのをお互い察知したんだね。

 

 SNSも一応ながら交換したくらいなんだけど、俺もあの人も自分から何かを発信する質じゃないので、全然使っていなかったりする。

 ああいうのは見るもので書き込んだりするものじゃない、ってのが俺個人の感覚で、たぶんハオランさんもそんな感じなんだろう。

 

「無理強いなどしないがな。ワタシにとっても縁のあるお前たちが、自然と巡り逢って意気投合したというのは、正直なところ嬉しさがあるのだ」

「ええと、お婆ちゃんのことですか?」

「り、リンちゃん……?」

「ランレイの場合は、むしろカーンだろうかな。ともあれ、依頼のこともある。実際組んでみて、試してみるのもいいと思うぞ。互いをパートナーとした時、どうなるかというのをな」

 

 アンジェさんとランレイさんのコンビについて、ヴァールがかなりグイグイ推しているな……

 ともに知り合いの子孫ゆえ、思い入れるところはあるんだろうな。でもなんとなく、親戚の何かあるとすぐお見合いを仕掛けてくるおばちゃんって感じに見えるよ、そのムーヴ。

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