攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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あなたと紡ぐ、生まれたての奇跡

 広瀬さんとの話し合いも終わって、俺と御堂さんは受付まで行って昇級手続きを申請した。向こうさんも当然、話は聞いているようで滞りなく処理は完了しそうだ。

 今まで持っていたF級探査者証明書を返納し、新しいE級探査者証明書を受け取る。さようならF級の俺、こんにちはE級の俺。

 

 はあ、やっとこれで落ち着くな。

 せっかくの日曜だ、どっかうろつくかな〜。あ、しばらく映画とか見てないな〜。せっかくだし行こうかなー。

 とか思いながら組合を後にしようとした俺を、御堂さんが肩を掴んで止めてきた。

 

「公平くん、何か一つ、大切なことを忘れていませんか?」

「え? 大切なこと……何がありましたっけ? ちょっと忘れちゃってます」

「でしょうね。まあそういう、ちょっとボンヤリしたところのギャップも実に、救世主らしいのですが」

 

 ただの物忘れにまで宗教観絡ませてくんの怖ぁ……この人、マジで俺とは見ている光景が違うんじゃないだろうか。

 ちょっと本気で思い出せずにうんうん唸る俺に、御堂さんはにんまーり、嬉しそうに笑って顔を近付けてきた。近い近い! 美人すぎる、いい匂いしすぎる!

 

「あ、あの? 御堂さん?」

「香苗。昇級したら名前で呼んでくださる約束でしょう?」

「…………あっ」

 

 忘れてた。そう言えばそんなこと、工場ダンジョン辺りでやり取りしてたなあ!

 だからかこんなに嬉しそうなのか。全身からルンルン気分でございってオーラが撒き散らされている。おいおい、周囲の男性探査者がめっちゃ見惚れてますよ。

 

 しかし、そうか。約束かあ。

 しちゃってた以上はしなきゃいけないよな〜。でも、年上の女の人を名前で、かぁ。

 照れるとか以前に、失礼に思われないか緊張するなあ〜。

 

『なーに迷ってるんですかー? そんなもんサクッとイケボで香苗……マイ・ラブとか言って肩を抱き寄せて、一発熱いベーゼをブチューっとかませばいい感じの曲が流れ出して次回へ続くんですよ!? リーベちゃん、人間世界のドラマを見たので知ってます!』

 

 頭の中でリーベが騒がしい。お前の見たドラマ、完全にトレンディドラマじゃないか。あんなもん、イケメンだから許されるムーヴなんですことよ?

 

「公平くん、リピートアフターミー? 香苗。か・な・え。愛を込めて、どうか私の名前を呼んでください」

「ドサクサに紛れて変な注文付けてるぅ……怖ぁ……」

 

 これ以上まごまごしてると、マジで語尾にハートマークを付けたみたいな声音で名前を呼ばないといけなくなりそうだ。

 覚悟を決めて、御堂さんを見据える。楽しげに大人の余裕で彼女はそれに視線を合わせて応えた。

 

「……愛とかでは、ないですけど」

「はい」

「なんだかんだ、お世話になってますし」

「ふふ、そんなことないですよ」

「いつも、助けてもらってますから」

「こちらこそ、いつだって救われています」

「…………だから、せめて感謝を込めて」

 

 深呼吸。

 火照る顔を、たぶん真っ赤になってる俺を、それでもなけなしの勇気でそらすことなく。

 

 まっすぐ見つめて、俺は、あなたの名前を呼んだ。

 

「香苗さん」

「はいっ、公平くんっ!」

 

 名前を呼んだ俺に、御堂さん──香苗さんは、花丸な笑顔で受け入れてくれた。

 

『むはーっ! 青春ですねラブコメですね、興奮ですねーっ!』

 

 リーベも照れくさいのか、やたら騒ぐ。

 うるさいよ! 野次馬はこういう場面では、静かにしなさい!

 

『でもほらステータス見てくださいよ公平さん、システムさんも興奮したのか、称号変わってますよ!』

「……は!?」

 

 言われて、慌ててステータス画面を開く。急な行動にきょとんとする香苗さんを横目にして、俺は、俺の称号を見た。

 …………システムさ〜ん!?

 

 

 名前 山形公平 レベル30

 称号 生まれたての奇跡を温める人

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 

 

 称号 生まれたての奇跡を温める人

 解説 生まれたことも、出会えたことも、共にいられることも。すべてあなたが紡いでいく、素晴らしい奇跡

 効果 絆を紡いだ人数分、保持者の魅力に補正付与

 

 

 

 《称号『生まれたての奇跡を温める人』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……あなたに集う絆は、あなたの生きた証そのもの。これからのあなたにはきっと、素晴らしい奇跡が待ち受けることでしょう》

 

 

『かーっ! さすがはシステムさん、出歯亀しといてこの物言い。さしものリーベちゃんにも真似できませんよ、これは!』

 

 真似せんでいい! ていうかシステムさん、マジで出歯亀なのかよ怖ぁ!?

 恐ろしくピンポイントに、まさしくこの状況を見てなければ説明がつかない称号を与えられたことに、戦慄とか以前にこっ恥ずかしさが勝る。

 

「どうしたんです? 公平くん……まさか! またスキルや称号に変化が!?」

「ウッ……そ、それは」

 

 さっきまでの甘酸っぱさもどこへやら、通常通りの狂信者モードに切り替わる香苗さん。俺が、何らかのステータス変化を迎えたことを察して、ギラついた信仰の瞳でにじり寄ってくる。

 今このタイミングで見られたくねえ〜! システムさんに出歯亀されてたなんて、言いたくね〜!

 

「私は伝道師、救世主神話を伝えゆく者。その足跡を、一つ残らず記録する義務があります! さあ教えて下さい、今度は何があったんですか!?」

「いや! ちょっとその、ここではちょっと」

「だったらこのままどこかへ行きましょう! 話しがてら、デートとでも洒落込むのはどうです!?」

『ありゃーっ、積極的ですねこの人。リーベちゃん的に好みかも。公平さん、デートでもしたら、もしかしたらあと何回か称号が変わるかもですよ! パワーアップのチャンス、チャンス!』

 

 馬鹿野郎、何がチャンスだ! 他人事だからって面白がってるんじゃない!

 ああっ、香苗さんに手を握られる! すごい力だ、そのまま引っ張り出される!

 

 せめて称号変えるのは止めてくれ! いいもの見させてもらったぜってなノリの、おひねりみたいなパワーアップは嫌だー!

 

 結局このあと、二人で映画館行って映画見て、そこそこ高いオシャレレストランで食事をした。

 楽しかったです。まる。




ここで話としては一区切り。

次話からすこしばかり番外的な、これまでに山形が得た称号をストーリー形式で振り返りつつ、次のエピソードに向かいます。
よろしくおねがいします。
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