攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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さよなら、A級ダンジョン

 いきなり発動して全部持っていってしまった、称号効果に思わずドン引きする。

 今、アンジェさんがいい感じの技を発動しようとしてたと思うんですけど。スキル《重力操作》なんてチートをゲットして、毒にも負けずに物語の主人公みたいな活躍を、見せてくれるところだったと思うんですけど……

 

「ていうか、なんで発動したんだ? 攻撃してなかったろ、まだ」

「恐らくだが、《重力操作》でワイバーンに干渉したのが攻撃判定されたのだろう。普通のモンスターであればあの重力場には耐えきれず、潰れて倒されていただろうからな」

「よりによってあれをトリガーに発動したのか、体感1%の即死効果が……」

 

 変なタイミングで発動したことに疑問を抱いていると、ヴァールが推測を立ててくれた。それはありがたいし納得もできる話なんだけど、その分アンジェさんの間の悪さが余計に浮き彫りになっておつらい。

 なんていうタイミングだよ、本当に。自然と彼女に向かう、みんなの同情の視線。

 

「え、えーっとー……ド、ドンマイですよー! えいっ、《医療光紛》!」

 

 リーベが光翼から鱗粉を再度放ち、アンジェさんの傷を癒やしていく。

 外傷自体はすでに癒えている……毒に侵された体内も、即時とまではいかないが今日中には抜けきるはずだ。

 とはいえ毒を食らった以上、帰ったら最寄りの探査者病院で検査入院くらいは覚悟しなければならないだろうけど。

 

「とりあえずは壁を超えたようで何よりだ、ということにしておけ、アンジェリーナ。うむ……お前はよくやった」

「結果的には勝てたのですから、万事オーライというところでしょう。素晴らしい戦いでしたよ、アンジェ」

「アンジェ〜お疲れ〜! カッコよかったよ、最高だったよ〜!!」

 

 ヴァール、香苗さん、ランレイさんと立て続けに労いの言葉を彼女に贈り続ける。みんな、どこか困惑しているな。

 壁を超えたのは間違いないんだけど、終わり方がアレすぎるものなあ。俺も続けて、彼女を労う。

 

「お、お疲れさまですアンジェさん……お見事でした。《重力操作》獲得、おめでとうございます」

「くぅっ……素直に喜べないなあ。やっぱり私、この称号嫌いだわ」

 

 完全に拗ねた様子で、《死神》への不満を呟く。力なく肩を落とすアンジェさんに、やはり、俺たちは苦笑する他なくて。

 なんとも締まらない雰囲気の中で、今回の探査における最後の戦いは終了した。 

 

 そしてそれは、このダンジョンの踏破に王手をかけたことをも意味していて。

 最後の通路をとおり、約5時間の探査を経て俺たちはついに、ダンジョンの最奥に辿り着いたのだ。

 

 部屋中は例に漏れず淡く緑に発光するラインが走り、中央に聳え立つ大黒柱へ、もっと言えばその柱に埋まっている多方面体の宝石に繋がっている。

 ダンジョンコアだ……今まで見てきたものとまるで変わらない。

 

 こんだけでかい規模ならちょっとくらい特別感を出してきてもいいと思うんだけどなあ、とぼやきながらもコアを取り出す。途端に発光が止まる最奥部。

 これであとはダンジョンを出るだけだな。行きしに時間をかけた反面、帰りは極めて一瞬だ。何しろここに、空間転移を使える探査者が3人もいるからな。

 ヴァールが、おもむろに手を翳した。

 

「《空間転移》……さて、ここを通れば探査者専用病院だ。後釜のおかげで問題はなさそうだが、それでも念の為アンジェリーナ。お前には検査を受けてもらおう」

 

 今いる場所と、遠く離れた空間とを繋げる穴が開く。穴の向こうに見えるのは、俺も知ってる市民病院だ。ここ、探査者専門病棟もあったんだな……

 先程からランレイさんの寄り添われる形で佇んでいる、彼女に目を向ける。

 

「アンジェさんとランレイさんからお先にお願いします。戻ったらすぐ、探査者病院に行きましょう」

「リーベのおかげで、平常どおりにはなったんだけどね……それでもまあ、念のために一日くらいは検査入院かな〜」

「し、死ぬかもだったんだし当然だよ、アンジェちゃん!」

 

 言葉どおり、体調はすでに回復していると思われるものの……本人が言うとおり、数日は入院を免れないだろう。自覚があるみたいでよかった。

 ランレイさんが心配そうにその手を取りながら、《空間転移》の穴へ向かう。入り際、改めて二人、俺たちのほうを向いて頭を下げてきた。

 

「みなさん……今日は本当にありがとうございました! おかげで私たちは、壁を超えて先に進むことができます」

「謝謝! み、みなさんから教わったこと、決して忘れません! ありがとうございましたぁっ!」

「こちらこそ、得難い機会だった。感謝する……探査者の未来は明るいと、老婆心ながらに確信できる一日だったよ」

 

 アンジェさん、ランレイさん、そしてヴァールの互いの感謝。それぞれ壁を超えられたこと、有望な若手探査者の力を確認できたことに、満足しているみたいだ。

 無論俺にとっても今回の探査は価値あるものだった。頭を下げる。

 

「俺のほうこそありがとうございました。たくさん勉強させてもらいました……お二人のA級探査者としてのお姿、けっして忘れません」

「リーベちゃんも楽しかったですよー! ゆっくり休んでくださいね、お二人ともー!」

「A級探査者界隈を、これから牽引していくのはきっとあなたたちでしょうね。無理せず、しかし努力と研鑽を重ねることを期待します。今日はありがとうございました」

 

 リーベも、香苗さんも。この場にいるみんな、今日のこの探査で大いに得るものがあったんだろう。そう思える光景だった。

 そうしてアンジェさんとランレイさんを先頭に、次々俺たちはダンジョンから脱出していく。

 

 ────こうして俺たちの、長くても楽しいダンジョン探査は終わりを迎えたのだった。

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