【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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君よ、なぜに武器よさらばなのか

 称号 武器はあなたに似合わない

 解説 心得よ。あなたの戦いは、傷つけ殺すためにあらず

 効果 武器使用時、熟練度上昇停止

 

 

 次のスライドに表示された称号は、これは俺もよく覚えている。

 何しろ俺の探査者生活の出鼻を、思いっきり挫こうとしてきた恐怖の称号だからな。

 

「事実上の、武器使用禁止効果。言うまでもなくこれは世界初の超レア称号です」

「悪い方に、ですけどね。デメリット効果を持つ称号なんて、これまで一度として出てこなかったんでしょう?」

「そうなりますね。この称号を得た時、さぞや辛かったと思います。ご心痛、お察しします」

「いやそんな、本気で沈痛なトーンで来られましても……」

 

 あの時はそりゃあ、かーなーり落ち込んだけど。香苗さんの励ましもあったし、何だかんだ素手でもやれることが分かったし、もう何とも思っていない。

 

 ただ……気にはなる。

 そもそもなんでこんな称号がもたらされたのか。武器を使用したから、こうして禁止されたのは分かる。だがその、武器を使用してはいけない理由って、なんなんだ?

 

「何で武器の使用を禁止してきたんでしょうか、システムさんは」

「ふむ……いくつか推測は立てられそうな気がしていますが。それを話すには、公平くんの得た称号を一旦、改めて確認する必要がありますね」

「ですね」

 

 この称号以降、得たスキルには関係性があると思われるものもある。となればやはり、一度すべてを振り返らないと始まらないんだろうな。

 スライドが動く。獲得してきた称号が、次々に表示された。

 

 

 称号 輝きに気付いていない人

 解説 やがて世界は気付くでしょう。真なる輝きはここにある

 効果 レベルアップ時、全能力に成長ボーナス付与

 

 

 《輝きに気付いていない人》、これは高校生活初日に、関口くんに思わず嫉妬してたら獲得した称号だ。

 音声アナウンスの一言が説教的というか、妬み嫉む俺を諌める感じだったんだよな。あれで俺は、ステータス画面の向こうにいる何者か──つまりはシステムさんの存在に感付いたんだ。

 

「こちら、称号《輝きに気付いていない人》ですね。効果はレベルアップ時に全能力へ成長ボーナス付与と、破格のものとなっています」

「レベルアップする度に、通常の上昇とは別口にボーナス上昇があるってことですよね」

「はい。つまりレベルが上がれば上がるほど、公平くんは同レベル帯の他の探査者に比べて強くなっていると取れます」

 

 

 称号 次なる時代をもたらす人

 解説 時代はあなたの思うがまま。あなたは時代が望んだ人

 効果 モンスターを倒した際、確定で素材がドロップする

 

 

「《次なる時代をもたらす人》! 公平くんが救世主であると、各探査者組織の重鎮たちに知らしめた称号です! 効果も、モンスターの素材ドロップ確率が100%と、とてつもないものになっております!」

「そういえば、こないだのスタンピードでやっつけたモンスターたちのドロップ素材ってどうなったんだろう。緊急だったから、結構まとめて雑に倒したもんなあ」

「大半はその場の探査者が拾い、拾い損ねも組合の事後処理スタッフたちが回収しましたね……不届きな話で恐縮ですが」

「良いですよ。人の命に代えられません」

「…………とうとい…………」

 

 

 称号 ワークライフバランサー

 解説 日々を営み、為すべきを成す。あらゆる生命の、これは輪廻

 効果 日常生活時、再生能力付与。戦闘時、耐久力にボーナス付与

 

 

「これだけ少し、毛色が違うんですよね」

「解説と効果はともかく、名称がごく普通なんですね」

「……ダンジョンとは若干、離れているから、とか? 日常生活メインの称号は、ポエミーではなくなる?」

「ダンジョン探査をさせたいシステムさんからすれば、多少ネーミングがおざなりになるのかもしれませんね」

 

 

 称号 魂を救う者

 解説 邪も、悪も、魔も。光はすべてを照らし出す

 効果 格闘技術の習熟速度10倍

 

 

「こちらがアレですね。武器使用禁止効果と連動している称号」

「この称号を与える予定だったから武器を禁止したのか、武器を禁止したから、救済措置としてこの称号を与えたのか……」

「順序によっては武器を禁止した意図が変わってきますね」

 

 

 称号 勇気と共に道を行き、慈愛と共に生きる者

 解説 手にした力を正しく使う、それを勇気と呼び

    手にした力で善を護る、それを慈愛と呼ぶ

 効果 特定スキル発動時、発光現象付与

    全身から光が放たれ、目に映した者の精神を癒やす

 

 

「出たよ、問題児」

「救世主神話を彩る輝かしい演出を担う、素晴らしいスキルではありませんか!」

「これに関してだけは、システムさんの思惑がその辺にありそうなんですよねえ……」

「ちなみに、組合の方で事後処理の一環として行ったメンタルケアの結果。救世主の輝きを見た人たちは全員、精神的なショックが驚くほどなかったとのことです」

「精神を癒やす効果、あるにはあるのかな? そういう意味だと、シャイニング山形にも使い出はありそうで良かったです」

 

 

 モンスターが日常生活を冒してきたことへのトラウマなんて、ないに越したことはない。

 人々のための光ならば、ケレン味の塊すぎて、システムさんの趣味なんじゃないのかって思っちゃう発光現象も……値打ちがあるよなあ。


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