攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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やっぱり出てくる伝道師

 ホームにアナウンスが流れ、やってくる電車。8時の車内はまだまだ結構人がいて、外から見る限りでは満員とは言えないけれど、かといって椅子に座れるかというと無理っぽい感じだ。

 まあ10分くらいだし、立って揺られることもやぶさかじゃないと乗り込む。なるべく女の子たちを壁際に立たせて、俺が周囲との壁になる感じに立ってみる。

 出発進行。ガタンゴトンと揺れ始めた電車は、ゆっくりと走り始める。徐々にスピードを上げていく車内で一息ついて、優子ちゃんが逢坂さんに質問した。

 

「イベントって具体的に何するの? 詳しい話はそういえば聞いてないよね」

「……え。あれ、そうでした? す、すみません。話したつもりになっていたかもしれません。う、うっかりしてました」

 

 不意を突かれたように目を丸くして、そこから汗を吹き出す逢坂さん。たぶん冷や汗だな……気持ちはわかるよ。

 伝えたと思ってたことが実は、伝えたつもりでいただけで伝えてませんでしたってのは肝が冷えるよね。俺も何度かあるけど、焦るのはよくわかる。もしかしたらうっかりさんには、これはあるあるネタなのかもしれない。

 見かねた優子ちゃんが、逢坂さんの背中を擦る。

 

「落ち着いて落ち着いて。いいよ気にしなくて。聞かなかった私もよくなかったし、ね?」

「そうそう。私らぶっちゃけ、大学に行けたら何でもよかったし」

「キャンパスライフ、憧れるしねー」

 

 新島さん、宮野さんも続けてフォローする。彼女ら的には探査者イベントとか割とどっちでもよくて、とにかく大学という未知の、大人っぽくてお洒落っぽいエリアに足を踏み入れたかったってのが第一みたいだ。

 たぶん優子ちゃんもそんな感じだろう。高校生の俺からしても大学生の人って、宥さんを見てるからかものすごい人生経験豊かな大人に見えるしね。中学生からしたら余計にそうなんだろう。

 

「す、すみません……それじゃあ、今からでも説明しますね」

「うんうん、よろしくねー」

 

 慰められて落ち着いて、逢坂さんは気を取り直して電車の中、揺られながらも話し始める。

 正直、宥さんが誘ってきたイベントなわけだし、彼女に任せたほうがより、詳しい内容を把握できるとは思うんだけど……そこは友情ゆえというか、逢坂さんの挽回のチャンスというか。

 当の宥さんがニコニコ笑顔で逢坂さんを見守っているから、俺もそれに倣うとしよう。別に、そんな効率的に考える場面じゃないしな。

 

「ええと。今日のイベントはざっくり言えば、探査者同士、あるいは探査者と非探査者との間で行う、交流イベントですね」

「交流イベント……探査者と、非探査者で?」

「はい。全探組やWSOが時折行っているようなイベントを、カレッジサーチャーズ流で行う感じのイベントだそうです」

 

 逢坂さんの話では、今回行うイベントはいわゆる交流目的の、ふれあいイベントとのことだ。

 探査者同士もそうだし、探査者と探査者でない一般の方同士もそうだ。とにかく人脈を広げる、あるいは垣根を超えて距離を縮める。そういった目的で催されるイベントらしい。

 

 その手のイベントって、基本は逢坂さんの言っているように全探組とか、たまにWSOが開いたりするのがメジャーだったりする。

 何年か前に俺も一回だけ、ショッピングモールの催事場周辺で交流イベントが開かれてるのを遠巻きながら、見たことがあるな。

 

 たしかそのイベントではなんか、探査者同士の模擬戦とかやってた記憶がある。もちろん許可を得た上で、安全安心な形での模擬戦闘だろうけど、今考えればすげえことやるなあって感じだよ。

 今回のイベントもそういうこと、やるんだろうか? 聞いてみたら逢坂さんは、はいと頷いて答えた。

 

「午後からやるみたいですよ。ゲストに呼んでいる探査者さんの何人かも参加してくださるそうです」

「へえ……ちなみにゲストって誰?」

「結構いますから、誰かと挙げるのはちょっと……ああでも、公平さんのお知り合いもいますよ」

 

 誰ぇ……そんなにいないよ俺、探査者の知り合いとか。

 もうこの時点で相当絞られてくるんだけど、なんか予想ついちゃったよ。

 

 絶対いるだろあの人。

 最近S級探査者になったってんで話題性抜群だし、美人で客寄せになるし、何より探査者としてこれ以上ないってくらい見識が深いプロ中のプロだし。

 完全に気づいちゃった様子の俺ちゃんに、逢坂さんは苦笑いしつつも告げるのだった。

 

「御堂香苗さん。最も新しい、国内11人目のS級探査者。関西を拠点に活動していることや、ついこの間までA級トップランカーとして永く君臨していたA級探査者界隈の女帝だったこともあって、このイベントでのメインゲスト扱いですね完全に」

「やっぱり!」

 

 まさしく予想どおりの名前。よくよく縁があるよな、俺と香苗さん。

 向こうは今日、イベントに俺が来ることを知ってるんだろうか? 知ってるんだろうな……宥さん伝に聞いていると考えていいだろう。だって宥さんがクスクス笑ってるし。わかってて黙ってたよこの人、いたずらっ子だなあ。かわいい。

 

「他にも有名探査者の方が何人も招かれているみたいですね。私も正直、お会いできるのが楽しみです」

 

 若干興奮した様子で逢坂さんが笑う。

 まあ……他の探査者さんにはさすがに知り合いはいないだろう。そう思うと、新たな出会いは俺にとっても楽しみではある。

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