攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ちょっとした居たたまれなさを感じはしながらも、俺たちは無事に参拝を終えた。
二礼二拍手一礼。向こうさんが明らかに俺を意識していることもあり、努めて失礼のないように形式に則った作法で参らせてもらう。
概念存在の領域に足を踏み入れるシステム側の存在……向こうにその認識はなくとも、こちらとしては微妙な気持ちになるもんだな、案外。
リーベもやはり同じ思いでいたらしく、そそくさと鳥居を出て──その際にも一礼は欠かさない──、俺におずおずと話しかけてきた。
「気づかれてましたねー、リーベちゃんたち。バレるもんなんですねー」
「今の俺やお前と違って、彼らは魂を見通してくるからな……俺の魂に紐づけしている、邪悪なる思念が引っかかったんだ」
「あー……」
アルマが原因だよと言えば、彼女は即時に納得して頷く。言うまでもなくリーベは、俺が《攻略! 大ダンジョン時代》を発動した際に立ち会っていて、邪悪なる思念の魂を匿ったことまで知っている。
なんならヴァールにそこらへんを説明してくれもしたからな。だからこの子は、アルマ絡みの突っ込んだ話までできるありがたい存在の一人だったりする。
「魂だけになってもろくなことしねーですねー、あのヤロー。どうりでおかしいなって思ったんですよー、今の公平さんやリーベの魂の規格は、普通の人間と大差ないはずなのにーって」
けっ、と悪態をつく。リーベからすればやはりアルマは不倶戴天の敵、たとえ事実上無害化されても憤怒は薄れることがないのだろう。
このへんはワールドプロセッサ以下、大概のシステム側の存在に当て嵌まる感情だな。ヴァールがわかりやすいけど、それ以外の、今回表舞台には出てこなかった精霊知能たちもそこは変わらない。
世界を喰われかけたこともそうだけど、大ダンジョン時代に至るまでの侵食では精霊知能たちもその大半が喰われている。そして、システムが復旧したところで魂まで復活することはないから、失われた彼らは永遠に戻ってこないのだ。
精霊知能内でも関係性は様々構築されていたことを踏まえると、アルマを憎む気持ちはあって当然だな。
『システムプログラム同士で馴れ合いか。ふん、夢見るワールドプロセッサの子はやはり、親に似て夢見がちらしいね』
憎まれ口を叩くアルマの、この物言いがリーベに聞こえてなくてよかった。絶対お互いにギャーギャー言い始めるだろうしな。
というかこいつ、自分が一番夢見て動いてた自覚はないんだな。なんならどんなモノより何よりも、完全なんて夢を見てそれに溺れたんだろうに。
「──さて、それでは大学に向かいましょうか。今からですと9時過ぎにはつきますね」
「あっ、はい」
と、そんなアルマへのツッコミもさておき、宥さんに促されて俺たちは歩き出す。
今後、あんまり寺社に行くのは控えることにしようかなあ。あるいは俺の権能で一時的に、アルマの魂を隠蔽するとか。そのくらいの対策はしとかないと、そのうち要らぬ揉めごとになっちゃうものね。
歩くこと数分、小さな橋を渡り、その下を流れる川沿いを伝って行けば、今度は地域鉄道の駅が見えてくる。
大学からの距離で言えばこの駅こそが最寄り駅らしいのだが、俺たちの地元からでは乗り換えが多くなり、時間がかかりすぎるそうで。
コストと効率の面を考えると、さっきまで使っていた鉄道のほうが宥さんの場合、普段遣いには適しているとのことだった。
橋上駅舎に至る通路を抜けて、向かいの出口にたどり着く。ここまできたらもう大学までは目と鼻の先で、見るからにアカデミックな感じの建造物が俺の目にも見えてきていた。
「うおっ……あれがもしかして?」
「ええ。竜虎大学第二学舎です」
宥さんが肯く。なるほど、あれが……近づくにつれ、よりよく見えてくる。
近代的な西洋建築だ。校門入ってすぐ右手には喫茶店があり、オープンテラスと白色が爽やかな棟がまず目に入る。だけどその反対、左手には赤色煉瓦のいかにもモダンな建物がある。そちらのほうが年季が入った様子なので、改築とか繰り返してるのをなんとなく感じ取れるな。
実際、何年か前に増築工事が行われたそうなのだとか。
「私が入学する頃にはもう、今のこの風景でしたけど……以前に文芸部を訪ねられた先輩のお話では、10年前とは大分、様変わりしているそうなんですよ」
「へぇ〜……ってことはやっぱり、赤煉瓦のほうが前から」
「はい。この先にある広場に出ればわかりますが、周囲の施設はほぼ全部同じ様式ですよ。こちらです」
案内されるがままに学内を進む。今の時期がちょうど大学ではテスト期間中らしく、いつもより閑散としがちらしいがそれでもそこそこ人はいる。
ていうかもうじき8月なのにテストやってるんだ……やだなあ。と思っていたら宥さんから衝撃の一言が。
「大学の授業は前期後期に分かれる関係で、夏休みが9月末まであるんですよ。ですからトータルで考えれば、高校の夏休みより半月ほど長いですね」
「そんなに!?」
約2ヶ月も休めるの!? マジで!?
かつてないほど進学への熱意が迸るのを自覚する。夏休みそんなに長いとか、こんなんじゃ俺、大学行きたくなっちまうよ……
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7/1にはいよいよ書籍1巻発売!
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