攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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決戦スキルオールスターズ-1

 談笑中、不意に妹ちゃんが俺の肩を叩いてきた。

 なんじゃらほいと振り向く俺に、彼女は窓の外、ここからでも見える第二学舎内の駐車場を指す。

 

「兄ちゃん、あれ御堂さんの車じゃない? 前に見たことあるよ、あの真っ赤なスポーツカー」

「うん? ……あ、ホントだ香苗さんの車だ」

 

 見れば駐車場に入っていくのは見覚えのある真紅のスポーツカー。ビックリするくらいど派手なそれは、たしかに過去、何度か見たことがある……なんなら俺自身は乗せてもらったことさえそれなりにある、香苗さんの自家用車だ。

 淀みない運転で停車し、ドアが開く。運転席だけじゃない、助手席と、後部座席? どうやらお一人じゃないみたいだ。称号効果による気配感知も、複数の探査者を読み取っている。

 見守る中、車から出てきたのは香苗さんと、もう二人。

 

「リンちゃんと、ベナウィさんだ」

 

 チャイナ服に白いズボンを履いた、お団子頭の小柄な女の子。星界拳正統継承者にして決戦スキル《アルファオメガ・アーマゲドン》保持者、シェン・フェイリンちゃん。

 黒いスーツ姿で2m近い巨躯を誇る、スキンヘッドの黒人男性。S級探査者、一度探査を行えばほぼ確実にうっかりでダンジョンを半壊させる、"うっかりベナウィ"ことベナウィ・コーデリアさん。彼もまた、決戦スキル《メサイア・アドベント》を保持している。

 

 そして何よりも我らが御堂香苗さん。いつものスーツ姿を、

 夏場でもクールに着こなす彼女の姿はいっそ、涼し気ですらある。

 彼女も最終決戦スキル《究極結界封印術》を持ち、邪悪なる思念が備えていた超バリア、天地開闢結界を無効化するという、アドミニストレータ計画における最重要とも言える役割を担ってくれた人だ。

 決してただの狂信者ではない。日本国内11人目のS級探査者にもなるし。決してただの伝道師ではないのだ。決して。

 

 ここには来ておられないもう一人、決戦スキル《ディヴァイン・ディサイシヴ》を保持するマリアベール・フランソワさんと精霊知能ヴァールをも合わせた5人こそ、先だっての邪悪なる思念との最終決戦において俺やリーベとともに戦ってくれた、尊敬すべき親友にして戦友のみなさんだ。

 そのうちの3人がなんの因果か、このような場所で連れ立ってきている。思わぬ光景に俺は、小早川さんに訪ねていた。

 

「S級探査者、香苗さんだけじゃなくてベナウィさんも呼んでいたんですね。それにリンちゃん……フェイリンさんも」

「ええ。御堂さんの御厚意により、コンタクトを取らせていただきましたが……そういえば救世の光チャンネルで御堂さんが語っておられましたな。救世主とコーデリア氏、シェン氏は無二の戦友であると」

「この間、引退されたマリアベール・フランソワさんやWSO統括理事、ソフィア・チェーホワ様ともそうだって、御堂さんがハープを弾きながら語っていました! 本当だなんて、さすがはシャイニング山形さん!」

「…………そ、そーですか」

 

 あの人、自分のチャンネルで盛大にぶちまけてるよなあ……小早川さんにしろ藤代さんにしろ、当たり前のように彼女のそうした動画をチェックしているのもアレだけど。

 ていうかまた弾いてるのか、ハープ。どんだけ気に入ってるんだよ吟遊詩人ムーヴ、今度見てみようかな。

 

「べ、ベナウィ・コーデリア……S級探査者一の破壊者だって人です。界隈ですごい有名な方ですよ。めったなことで表沙汰にならないS級探査者においても、破天荒な行動で無理矢理有名になってるほどの人です」

「そうなの、美晴ちゃん? じゃああっちのチャイナ服の子は」

「彼女は……シェン・フェイリンさんですね。先日A級探査者に昇級したみたいですけど、その前から業界誌なんかでは取り沙汰されていた、いわゆる期待の若手株です。同じくA級探査者であるシェン・ランレイさんを姉に持ち、"美人探査者姉妹"みたいな触れ込みで一般社会にも顔が出回りつつあります」

「あ、なんかテレビのインタビューで見たことある。お人形さんみたいに可愛いなーって思ってたけど、そんなすごい子だったんだぁ」

 

 逢坂さんが、新島さんや宮野さんに向け説明している。元々内勤志望だからかこの子、探査者界隈の情報にはアンテナ高くしてるみたいだ。

 ベナウィさんの破壊者呼ばわりは残念ながら当然のこととして、リンちゃんの評価はちょっと意外だ。あの子、業界誌とかテレビ番組とかにも出てたんだな。興味がないからあんまりそのへんはタッチしてなかった。俺のアンテナ潰れてるわ。

 

「兄ちゃん、改めてすごい人たちばっかり知り合いだね。昨日も朝から延々、ソフィアさんと電話してたりしたし」

「! 公平様と、WSO統括理事が? ……それは、何か救世主神話伝説の匂いがしますね」

「はあ……え、なんです? 救世主、匂い?」

「この世の救い主様と国際組織のトップによる、電話会談。それすなわち世界の裏側で何かが起ころうとしている兆候なのではないでしょうか……! ああ伝道師に伝えなくては、メモメモメモり、メモメモメモり」

「肩書って怖いですねー……ただの世間話も大袈裟に解釈されてますよー」 

 

 迂闊なことを漏らした優子ちゃんに、宥さんが妄想逞しく張り切りガールされてらっしゃる。まあ、知る人から見ればコマンドプロンプトと先代アドミニストレータの密談だと言えなくもないしね。

 いやでも、救世主神話伝説の匂いってなんだろう?




本日7/1
本作「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」書籍1巻が発売されました!
本としてはもちろん電子でも販売しておりますので、なにとぞよろしくおねがいします!

また、1巻発売を記念して本日からしばらく、0時、12時、18時の3回投稿を行います。
よろしくおねがいします。
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