攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ベナウィ、しっかりしてください!

 リンちゃんの立派な、そして素晴らしい挨拶を終えて次に小早川さんが紹介したのは、意外にもベナウィさんが先だった。

 

「続きましてはS級探査者、ベナウィ・コーデリア氏のご紹介をさせていただきます」

 

 マイクを手に軽く会釈するベナウィさん。やはり紳士的な、穏やかな笑みを浮かべている。落ち着いた方だね、相変わらず。

 しかしなんていうか、香苗さんより先なんだな。S級探査者としてはベナウィさんが先輩なんだし、正直トリを飾るかと思っていたんだけど。

 

 あれか。そもそも香苗さんがとりなす形で今回のイベントへの参加が決まったから、それもあって香苗さんが最後に紹介されるのかな。

 そしてリンちゃんとベナウィさんなら、世間的には間違いなくベナウィさんのほうが格上というかベテランだから、リンちゃんが最初だったと。なんかそんな気がする。

 

「氏は普段、あまりメディア等に露出することの少ないS級界隈におかれまして、常に存在感を示されている御方でもあります。ダンジョンそのものを破壊するほどの威力を誇るスキル《極限極光魔法》の名と併せ、世界の探査者たちの頂点に君臨する、偉大な探査者です」

「いやはや、なんとも過分なお言葉で恐縮ですが──」

 

 小早川さんの言葉を受けて、苦笑い気味にベナウィさんの話が始まった。前置きから始める感じ、手慣れてるのがわかって安心感があるなあ。

 立ち上がり、紳士的に一礼。優雅な所作で、なんというかインテリジェンスを感じる。この人、ダンジョンと酒が絡まなければ本当、一挙手一投足が上品なんだよね……どっちかが絡むと途端にアレになるけど。

 そういうのは今は封印と言わんばかりに、彼は落ち着いて名乗りをあげた。

 

「──評していただいたからには、そのように振る舞うべきでしょうね。いかにもS級探査者、ベナウィ・コーデリアです。少しでも私についてご存知いただいている方であれば、あるいは"うっかりベナウィ"というあだ名を想起されるかとは思いますが。今日は"しっかりベナウィ"ですので、どうぞご安心ください」

 

 軽いジョーク。それも日本語を話せるがゆえの言葉遊びのソレを飛ばして、軽快に笑いを誘う。参加者さんたちもクスクスと笑ってらっしゃるよ、つかみはオッケーって感じだな。

 マジで手慣れてるわこの人。リンちゃんが羨ましそうに、けれどそれ以上に勉強になると言いたげにベナウィさんを見ているほどだ。

 

 実際、こうした話術は俺としても勉強になる。なんならリーベも目を丸くしつつも、あからさまに参考にしようとガン見しているし。

 こいつの場合、ゆくゆくは救世の会のアイドルとやらになり、動画配信とかにも出るだろうからな。話術は必須になってくるから、他人の上手な話を取り入れようとしているんだろう。

 どんな形であれ、頑張るのは素敵なことだ。アイドルというかマスコット扱いされそうなのはなんとなく思っちゃうんだけど、まあ頑張ってほしい。

 

「本日このような素敵なイベントに参加させていただき、感謝に絶えません。みなさんと交流できることを楽しみにしておりますよ。どうぞ、よろしくおねがいします」

 

 そう言ってベナウィさんが挨拶をし、再び着席した。

 巻き起こる拍手。リンちゃんに負けず劣らずの大音量が講堂内に響く。

 

 しばらく鳴り止まないそれが、しかし次第に落ち着いてきた頃。

 小早川さんは最後、今回のメイン中のメインゲストへと声を向けた。

 

「そして最後にもう一人。ゲストの方をご紹介させていただきます」

 

 その声に、誰もが彼女の姿を見た。

 スーツ姿で凛として佇む、幻想的ですらある美貌。涼し気な顔立ちは、どこか静謐を湛え遠くを見つめている。

 

「先日。日本国内11人目のS級探査者が誕生すると報道されたのは、みなさまの記憶にも新しいかと存じます。その方は永らくA級トップランカーに君臨し、メディア進出も精力的に行ってこられました。探査者といえばこの方であるというイメージは、国内のみならず海外諸国においても、少なからぬ方々の共通認識であるとさえ言われています」

 

 誇らしげに語られる内容は、彼女がいかにこれまで長い間、A級探査者という探査業界におけるメインストリームの中で頂点に君臨してきたのかを端的に示している。

 海外でも有名ってのは知らなかったけど、まあA級トップランカーの時点で有名に決まってるよな。探査者といえば彼女! なんて認識が広まっているとまでは、さすがに予想できなかったけど。

 

 前口上に、会場の期待が高まる。誰もが彼女の名を告げられるのを心待ちにする、そんな空気だ。

 ──そして、小早川さんは彼女の名を。最も新しいS級探査者、御堂香苗の名を呼んだ。

 

「予てより"最もS級に近い探査者"として名を馳せ、そして今般においてはついに探査者としての最高峰にその足を踏み入れられる若き天才。御堂香苗氏にこの度、お越しいただいております」

 

 立ち上がり、一礼する香苗さん。

 俺たちは自然と、リンちゃんやベナウィさんに向けて行った以上の拍手を、彼女へと送っていた。




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