攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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まともな時はまともなんです!

「こんにちは。ただいまご紹介に預かりました、御堂香苗と申します」

 

 紹介を受けて、香苗さんがマイクを持って話し始めた。いつも誰にでも丁寧な口調だけれど、やはり大勢の人に向けてだからかいつにもまして上品さがある。

 講堂にいる者はみな、それこそ小早川さんはじめスタッフらしい人たちでさえも、彼女が何を言ってくれるのかを期待して見ている。

 最も新しいS級探査者、御堂香苗の名はこの頃において、それほどまでに話題性があるのだ。

 

「さきほどご紹介いただいたとおり、この度私は、ありがたいことにS級探査者として昇級いたします。このような若輩者ではございますが、界隈における最高位を冠するに値すると、認めていただいたのです」

 

 そうして話し始めた彼女の口からは、まず自身がS級探査者になった旨が語られる。

 若輩者、というのは謙遜だと俺は思うんだけど、たしかに年齢としては相当お若いタイミングでS級にまで登りつめたなとは思う。

 それでも最年少じゃないあたり、天才っているところにはいくらでもいるんだなーって感心せざるを得ないんだけどね。愛知九葉さんだったかな? 16歳でS級探査者って、一体何者だよって感じだ。

 

「畏れ多くはありますが、同時に光栄とも思っております。そしてこの栄光とは多くの方々のご助力あってのものであり、決して私一人の力で到達した地点ではないとも」

 

 香苗さんが澄んだ瞳で、謙虚な感謝を示していく。

 多くの人たちとの縁に恵まれたところは、間違いなくあるんだろうな。俺だってそうだし、誰だってそうだ。素晴らしい成長は、素晴らしい出会いがきっかけであることも多いから。

 

 同時に何より思い浮かぶのは、彼女のひいおじいさんである御堂将太さんだ。あるいは香苗さんにとって、何より大切なものを示した師匠のような人だろうな。

 

「何より、S級探査者として今後。私は自らを高め極めていくだけでなく、後進の探査者たちの範となり導いていくこともまた、求められていくのだという強い自覚を抱いているのです」

「ミッチー、まともなこと言ってますねー……」

「ひどい」

 

 リーベのポツリとした呟きに思わず反応してしまう。いや腹の中ではちょっぴりとだけ、ほんのちょっぴりとだけ思っちゃった自分はいるけれども。

 S級探査者として、探査者かくあるべしという理想の姿を見せようという所信表明みたいなもんだな。正式な昇級は来月に首都で祝宴とともに行うそうなので、半ばスピーチの予行練習めいているのは、なんていうか貴重なものを見ている気がする。

 

 俺たちの小声のやり取りを耳聡く拾ったみたいで、香苗さんがこっちを見た。真剣そのものの凜とした眼差しがふ、と緩み、暖かみある笑顔に変わる。

 人気があるのも頷ける、息を呑むほど美しい人だな……狂信者だとか探査者だとかあれやこれや別にして、ただただ、御堂香苗という女性の綺麗な姿に見惚れる。

 彼女はそして、笑顔のままに一通り参加者を見回した。

 

「今回、こうした催しに参加させていただいたのは、私にとって非常に価値のあることだと認識しています。S級探査者としての先輩、そしてA級探査者としての後輩とともに。みなさまと交流し、議論を交わし、そして力になることができるかもしれない。あるいは私自身、勉強させていただくこともあるでしょう。そのことを、とても楽しみにしています」

 

 ベナウィさんと、リンちゃんをも見据え。

 この場にいるすべての参加者に香苗さんは、力強くも告げた。イベントへの期待と、そして参加者全員との交流を楽しもう、という気概。

 

「長くなりましたが、このイベントがみなさまにとって実り多く、豊かな経験につながるものとなりますことを祈ります。本日はよろしくおねがいします。以上、御堂香苗でした」

 

 そして最後に、深々と頭を下げて彼女は締め括った。

 瞬間、前二人以上にも巻き起こる拍手。最も新しいS級探査者である御堂香苗の、堂々たるスピーチに圧倒されながらも、それでも聴衆は惜しみなく両手を叩いている。

 かくいう俺も、全力で拍手喝采だ。なんならやんややんやと、滾るテンションのままに賛辞を投げかけるくらいだ。

 

「香苗さん、サイコー! 香苗さん、バンザーイ!」

「ちょっ、公平さん! 恥ずかしいですよー!?」

「兄ちゃん、父ちゃんみたいなことしない!」

「つらい」

 

 リーベと妹ちゃんに止められてしまった。よりにもよって父ちゃんみたいとまで言われる始末だ。かなしい。

 と、見れば香苗さんがこっちを向いて小さく手を振っている。照れたようにしながら、俺に向けて微笑んでるよ。普段は美人さんだけど、こうなると途端にかわいい系になるから不思議な人だよなあ。

 

「──ありがとうございました。我々も御三方とこのような機会を得られたこと、誇らしく思っております」

 

 小早川さんの言葉を以て、3人の紹介が終わりを告げる。

 掛け値なく、それぞれが個性的で素晴らしい紹介と挨拶だったと思う。そんな3人と個人的な付き合いを持つことのできた幸運を、改めて噛みしめるほどだ。

 ソフィアさんやマリーさんも、アンジェさんやランレイさんもだけど。本当にすごい人たちと知り合いだわ俺。




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7/1、本作「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」1巻が発売されています
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