攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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MD5(マジで伝道する5秒前)

 イベント開始の宣言の後、会は一旦、15分の休憩を挟むこととなった。

 初っ端はカレッジサーチャーズ竜虎大学による研究発表と活動内容の報告といった、まあお固い話になるもんだから、その前にお手洗いとかを済ませとこうねということだ。

 

 宥さんと逢坂さん、リーベがお花摘みに行ったり飲み物を買いに行ったりしている間、俺は優子ちゃんたちJC三人組とあれやこれやと話をしていた。

 

「イベントっていうから、なんかこう、ひたすら探査者さんの一発芸とか交流会みたいなを想像してたんですけど……研究発表とかするんですよね。地味というか、案外真面目というか」

 

 率直に思ってたのと違うと述べるのは新島さんだ。見れば宮野さんも苦笑いしてるし、まあそれもそうだよなって思う。

 一応、交流会だったり一発芸、じゃないけど演習なんてのは午後にやるらしいけど……まさか午前まるまる、カレチャの発表が行われるってのは意外と言えば意外で、意外じゃないと言えば意外じゃないことだ。

 俺は彼女たちに応えた。

 

「そこはほら、あくまで大学のサークルとしての活動だろうからね。真面目な側面も見せていかないと、こういう講堂だって使いにくいんだろうとは思うよ」

「研究発表って言っても、そんな難しい話じゃなさそうだしね。ほらパンフレット、なんか面白そうに書いてるよ……"世界の奇天烈ネーミングモンスター"とか"探査業界の組織とかまとめてみた件"とか」

 

 そう言ってパンフレットの一点を示す、優子ちゃんにつられて手元のパンフを見る。今日の研究発表の題材は、たしかにその2つだ。

 察するに前者はモンスターのネーミングにおいてたまにある、珍妙な名前──なまけクマとかクビ切られ騎士とかね──についてまとめた発表だろうし、後者についてはWSOとか全探組、ダンジョン聖教等についてまとめたものを発表するんだろう。

 

 いずれもこの大ダンジョン時代においては、社会全域に浸透している存在の一つであることには間違いないし、専門的ではあるものの、ある程度は業界外の人たちにも通じやすい、平易な題材を選んだんだろうというのは予想がつく。

 特に奇天烈ネーミングモンスターのほうは、それなりにウケもよさそうだ。新種モンスターの命名権は第一発見者に与えられるもんだから、この100年、なかなかにトンチキな名前をつける探査者も多かったみたいだからな。

 

「ま、研究発表って4文字でだいぶ厳しい印象があるってのはカレチャの人たちもわかってるだろうし。そこは踏まえて、面白い感じの発表をしてくれると思うよ」

「だといいけど。私なんか寝ちゃいそうだし」

「優子ちゃん、授業も結構机に突っ伏してるもんね」

「駄目じゃん」

 

 堂々と居眠りこいてる授業風景の妹ちゃんが明るみになり、おいおいとツッコむ。ガン寝じゃないか、マイシスター。

 多少うつらうつら船を漕ぐのはまあ、俺もあるしとやかくは言えないけど。机に突っ伏し始めたらもう誰から見てもアウトじゃん。母ちゃんが聞いたらまーたイラァ……ってなりそう。怖ぁ……

 

 聞かなかったことにしよう、とそっと三人娘さんたちから目を逸らす。香苗さんたちのほうを見ると、なんか3人とも立ち上がってこっち来てるし。

 おいおいおい、ゲストのみなさん? こっち来ちゃうの? 他の参加者さんがたの視線も多く、3人に注がれる中で俺んとこ来ちゃうの? 悪目立ちしない?

 

 合流するにしても昼休みとかだろう。って勝手に思い込んでいたら、まさかわずか15分の休憩時間にやって来るのか。

 リンちゃんが手を振りながら、俺に向かって言ってきた。

 

「公平さん! こんにちわ!」

「こ、こんにちわリンちゃん」

「やあ、どうもミスター・公平。ミス・御堂から聞いていましたがあなたも参加していたのですね、このイベントに」

「そうなんですよ、ベナウィさん……あははは」

 

 次いでベナウィさんも、相変わらずの礼儀正しさで挨拶してくる。立ち上がり受け答えして俺は、そして彼女を見た。

 香苗さんだ。なんか……ドヤ顔してらっしゃる。むふーって感じの、瞳煌めかせた得意気というか自慢気なお顔だ。かわいいけど一体、どうしたんだろう?

 

「か、香苗さん?」

「公平くん……! こんなところでお会いできるとは、なんて運命的な縁でしょう! そして見ていてくださいましたね、私のスピーチ!!」

「あっはい」

 

 興奮して俺に詰め寄ってくる香苗さん。近い、めっちゃ近い! きれいな顔が、瞳が目と鼻の先にある。吐息が口元にかかる、いい匂いがする、距離感バグってる!

 唐突にメインゲストの美女がこんな、男子相手に触れ合う寸前の距離感でいるのだ。視界いっぱいに香苗さんが広がってるから確認しようがないけど、きっと空気は凍りついていることだろう。

 怖ぁ……そんなビビる俺ちゃんに構わず、香苗さんは一息に語り始めた。

 

「時間の都合もありあの場で求められていた最低限度のことしか話せませんでしたつまりはS級探査者関連のこととイベント参加への意気込みだけだったのですが本来であればそれらに加えてといいますかむしろ本題として我らが偉大なる救世主山形公平様の偉大さ尊さをたっぷり午前いっぱいかけてこの機会に参加されたすべての方々へと伝道するのが筋だったというのに残念ですしかし未だ諦めてはいません勝負は午後です午後に行われる我々ゲストによる座談会においてこの世の救い主たる公平くんについてしっかりみっちりねっとりばっちり話をしたいと思いますなぜならばさきほど申しましたように多くの縁あってここに至った私ですが何より公平くんがいてこそはじめて私は伝道師としての素晴らしい覚醒を果たすことができたのですからつまりあなたこそ私のすべてです私を語るならばあなたについて語らなければ何も始まりません加えてフェイリンさんもベナウィさんも私同様公平くんと深く関わりがありしかもともにあの決戦に参加したというある意味救世の会においては伝道師あるいは使徒と同等として扱われるに足る存在であることは明白ですからね楽しみにしていてください」

「イベントの乗っ取り行為はやめましょう!」

「なぜです!?」

 

 8割、いや9割何言ってるかわかんないけどとりあえず、午後の座談会を狂気の伝道ショーに変えてやるって企みは読み取った。

 すかさず拒否した俺に、やはり至近距離のまま香苗さんは愕然としていた。当たり前だろ!




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7/1、本作「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」1巻が発売されています
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